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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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059・ダンジョン遺跡

 ダンジョン遺跡。


 それは、大まかに3種類に分けられるそうだ。


 1つ目は、古代の遺跡。


 700年前の魔法王朝アポロンを始めとした大昔の文明で造られた建造物だ。


 たまに、古代の宝物が見つかる。


 お金になるので、冒険者もよく潜るという。


 けれど、遺跡には、古代の魔法生物や侵入者除けのトラップなど危険もある。


 結果、命を落とす者も多いそうだ。


 …………。


 2つ目は、天然の洞窟。


 大気中には、魔力の源となる『魔素』と呼ばれる成分がある。


 洞窟は構造上、その魔素が溜まり易い。


 そのため、魔素の影響を受けた特殊な鉱石、植物、湧き水などの資源が産出されるのだ。


 つまり、天然資源の宝庫。


 ただ、魔物も魔素を好む。


 多くの魔物が生息しているので、資源採取にも注意が必要なのだそうだ。


 …………。


 3つ目は、1つ目と2つ目の融合タイプ。


 これは、かなり特殊な事例。


 地下遺跡などが該当するという。


 両方の特徴があり、結果として、最も難易度が高いダンジョン遺跡だそうだ。


 …………。


 …………。


 …………。


 以上が、冒険者ガイドブックによる情報だった。


(なるほどね)


 その夜、宿屋のベッドに寝ていた僕は、


 パタン


 と、納得しながらページを閉じた。


 昼間、カーマインさんが話していたのは、2つ目のダンジョン遺跡のことみたいだ。


 つまり、天然洞窟。


 そこで、鉱石を集めるのだ。


 ただ魔物もいるので、単純な採掘では済まなさそうだね。


 まぁ、クエストだもん。


 依頼される以上、危険があるのは当たり前だろう。


(うん)


 天井を見ながら、覚悟を決める。


 と、その時、部屋の扉が開いて、お風呂に行っていたアシーリャさんが戻ってきた。


 ホカホカ


 湯気が出て、身体が温かそうだ。


 金色の長い髪もしっとりと艶やかだった。


「……ん」


 彼女は僕の前にやってきて、ブラシを押しつけ、同じベッドに背中を向けて座った。


 目の前で、蜂蜜色の髪が揺れる。


 はいはい。


 僕はタオルでその髪を優しく拭きながら、丁寧にブラシを通した。


 彼女も気持ち良さそうだ。


 僕は言う。


「アシーリャさん、明日もがんばろうね」


「は、い」


 彼女は、上機嫌に頷いた。


 僕も笑う。


 それから、しばらく彼女の髪を梳いてあげて、その夜も更けていったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 翌日、冒険者ギルドで『鉱石採取』クエストを受注した。 


 報酬は、3000ポント。


 日数は、3日間。


 採取量は『火鉱石』と『水鉱石』を30キロずつ、だ。


 レンタル用のつるはし2本も貸りて、僕らはレイクランドの町を出発した。


 採取の場所は、


「レイクランドの南側の山に、洞窟があるんだ」


 と、赤毛の青年は、山脈の方を指差した。


 何でも町の近くには、こうしたダンジョン遺跡が7つあるらしい。


 その内の1つなんだって。 


 ちなみに、ダンジョン遺跡も難易度ごとにランクがある。


 そして、そのランク以上の冒険者ランクじゃないと入る許可が下りないのだ。


 僕らが行く『青闇あおやみの洞窟』は、Eランク。


 もちろん、僕らは問題なし。


 難易度としては、初級中の初級だそうだ。


(ま、初めてだもんね)


 その方が安心だよ。


 そうして僕らは、雄大な青い山脈へと歩いていく。


 …………。


 1時間ほどで、到着した。


 山脈の麓付近、植物に覆われた岩と土の斜面に、大きな黒い亀裂があった。


 うん、洞窟の入り口だ。


「よし、行くか」


 カーマインさんは、言った。


 僕らも頷く。


 3人は、ランタンを灯す。


 僕は少し考え、


「杖君、明かりの魔法ってある?」


 ピカン


 杖君は明るく輝いた。


 ヒィン


 杖の先に光の粒子が集まり、10センチほどの光球が3つ、空中にフワフワと浮かんだ。


 うん、明るい。


 これなら、手も塞がらないね。


 獣人の兄妹は目を丸くする。


「お前の魔法は、本当に便利だな」


「さ、さすがです」


 と、驚いていた。


(えへへ)


 杖君の手柄だけど、少し鼻が高い。


 アシーリャさんも、


「…………」


 ポムポム


 と、褒めるように頭を撫でてくれた。


 僕は手元を見て、


(ありがと、杖君)


 ピカピカ


 僕の感謝に、杖君も明滅した。


 …………。


 やがて、僕らはそれぞれの光源を手に、洞窟の闇へと足を踏み入れていったんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



(へぇ……これがダンジョン遺跡の中なんだ?)


 僕は、心の中で呟いた。


 杖の先の光を左右に動かして、洞窟内を見回していく。


 高さは、5メートル近い。


 幅も、大人が3人並んで歩けるほどの広さがある。


 思った以上の空間だ。


 入り口の亀裂は狭かったけれど、内部はこんなに広くなっていたんだね。


 ポタ ポタ


 天井の鍾乳石から、雫が落ちている。


 空気は、少し冷たい。


 手は塞がるけど、松明とかの方が暖かくてよかったかもしれない……なんて思うぐらいの肌寒さだ。


 やがて、カーマインさんが、


「さ、行こうぜ」


 と、促した。


 あ、うん。


 僕らは頷いて、歩きだした。


 カツン カツン


 4人分の足音が、暗闇の中に反響する。


 歩きながら、


「採掘場所は、1時間ぐらい歩いた奥にあるらしい」


「そうなんだ?」


「あぁ、分岐も結構ありそうだ」


「ふぅん? 迷うと怖いね」


「そうだな。だが、ま、ギルドが洞窟の全体地図もくれたから迷うことはないと思うぞ」


「そっか」


 それならよかった。


 僕は頷いて、


「でも、慎重に行こうね」


「おう、そうだな」


 彼も笑って、頷いてくれた。 


 …………。


 それから、15分ほど歩いた。


 足元は岩肌で、少し湿っていて滑り易く、凹凸や起伏もあるため意外と歩き辛い。


(転ばないように……) 


 そう心掛けて、足を動かす。


 と、その時、


 ピクッ


 アシーリャさんが何かに反応した。


(ん?)


 彼女は、前方の闇を見据える。


 と、続けて、カーマインさん、フランフランさんも赤毛の獣耳をピョコンと前に動かした。


 どうしたの?


 そう聞く前に、


「何か来ます」


 と、獣人の少女が短く教えてくれた。


 何か……?


 そんな物、1つしかない。


 ガシャッ


 ランタンを地面に置いて、アシーリャさんは両手で『アルテナの長剣』を構えた。


 カーマインさんも、魔法剣と小剣を鞘から抜く。


 フランフランさんも、


 キュッ


 背負っていた弓を構えて、矢をつがえた。


(…………)


 僕も、白い杖を構えた。


 全員、戦闘態勢だ。


 そうして待っている間に、


 キッ キッ


 何かの音が僕の耳にも聞こえてきた。


 段々と近づいてくる。


 やがて、そこに何かが羽ばたくような音も交じってきた。


 それらの音が徐々に大きくなっていく。


 ドキ ドキ


 心臓の音を強く感じる。


 そして、10秒後。


 僕らの所持する光源の中に、闇の中からソイツ(・・・)らは飛び込んできたんだ。

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