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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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032・獣人兄妹

「今の魔法は……何だ、ニホ?」


 ようやく自分を取り戻したカーマインさんに、そう聞かれた。


 僕は素直に答えた。


「ただの攻撃魔法だよ」


「…………」


「光と音で相手を気絶させるんだ。ただ、殺傷力はないんだけどね」


「…………」


「あと、自分たちにも防御魔法をしとかないと巻き込まれるから、そこは注意点かな?」


「……そうか」


 彼は微妙な顔だった。


 それから息を吐いて、


「ニホの魔法は、独自性が強いな」


 と苦笑した。


 そう……?


 自分では、よくわからない。


 すると、今度はフランフランさんが質問してきた。


「その、ニホ君は、こうした魔法を誰に習ったんですか?」


「え?」


「…………」


「えっと……おじいちゃんかな?」


 僕は、そう答えた。


 フランフランさんは「おじいちゃん?」と赤毛の三つ編みを揺らして、首を傾ける。


 カーマインさんも僕を見ている。


 僕は少し考えて、


「元々、僕は、魔法使いのおじいちゃんと森で暮らしててね」


「森で?」


「うん。でも、この間、おじいちゃんが亡くなって、僕は形見の杖君と一緒に、遺言に従って人里に出てきたんだよ」


「……まぁ」


 フランフランさんは驚いた顔だ。


 カーマインさんも同じ顔。


 そして、


「独自の魔法を創れるなんて、もしかしたら、ニホのじいさんは高名な魔法使いだったのかもしれないな」


 なんて呟いてた。 


(…………)


 本当は、そんな祖父はいないんだけどね。


 嘘つきな自分に、少しだけ罪悪感。 


 そんな僕らのやり取りを、


「…………」


 アシーリャさんは1人だけ少し離れた位置で、黙って見ていた。


 おっと、いけない。


 彼女の姿に、ハッとした。


 まだ、僕らはクエストの途中だった。


 ヒラヒラ


 光る蝶は、まだ森の奥に行きたそうに羽ばたいていた。


 僕は言う。


「さ、そろそろ次のホーンラビットを探しに行こう?」


「お? あぁ、そうだな」


「は、はい、そうですね」


 2人も頷いた。


 そして、獣人のお兄さんの方が、白い犬歯を見せて笑う。


 僕らを見つめて、


「お前たちのやり方は見せてもらったからな」


「…………」


「次、ホーンラビットを見つけたら、今度は、俺とフランフランのやり方を見せてやるよ」


 ドン


 と、彼は自分の胸を拳で叩いた。


 そして、妹さんを見る。


 フランフランさんも赤毛の三つ編みを揺らして、大きく頷いた。


(……ふぅん?)


 結構、自信ありそうだ。


 うん、楽しみだな。


 …………。


 そうして僕たちは、次の獲物を求めて森の奥へと向かったんだ。 



 ◇◇◇◇◇◇◇



 10分ほど歩いて、


(あ……いた)


 樹々の間を移動中のホーンラビット6体を発見した。


 うん、運がいい。


 あれだけの数が集まっているのは珍しくて、全部倒せれば、かなり時間短縮になるはずだった。


 チラッ


 赤毛の兄妹を見る。


 2人は頷いた。


『――ここは任せろ』


 そんな感じだ。


 それを信頼して、僕も頷く。


 いや、信頼を築くために、まずはお手並み拝見するといった感じかな?


 シュラン


 カーマインさんが腰ベルトの2本の小剣を引き抜いた。


 フランフランさんも、


 カシャッ


 背負っていた木製の弓を握り、矢筒の矢を4本抜いて、その内の1本を弓につがえた。


 緊張からか、2人の長い尻尾が立っている。


 2人は目配せした。


 キ……ッ


 フランフランさんが弦を引き絞った。


 パシュッ


 矢が1本、上方に撃ち出された。


(上……?)


 不思議に思う僕の前で、矢は放物線を描き、ホーンラビットの向こう側の草むらにガサッと落ちた。


 ビクッ


 6体のホーンラビットが反応した。


 驚いたのか、音の反対側……すなわち、僕らの方へ一斉に走ってくる。


 瞬間だった。


 タンッ


 獣人らしい瞬発力で、カーマインさんが飛び出した。


 バシュッ


 両手の小剣を振るう。


 ホーンラビット2体の首が刎ね飛ばされた。


(速っ!)


 驚いた。


 まるで本物の獣みたいな動きだった。


 もしかしたら、アシーリャさんと同じぐらいの速さかもしれない。 


 それとほぼ同時に、


 パッ パッ パッ


 妹のフランフランさんが立ち上がり、連続で3度、矢を放った。


 ドス ドス ドス


 3体のホーンラビットが心臓を貫かれ、転倒する。


 残り1体。


 仲間がやられて、ホーンラビットは逃げの態勢だ。


「おっと!」


 ザッ


 その進行方向へ、カーマインさんは素早い動きで先回りした。


 うさぎの足がたたらを踏む。


 瞬間、


 ドス


 足が止まった魔物の心臓へと、フランフランさんの矢が突き刺さった。


(上手い)


 見事な連携。


 そして、凄い速さと弓の腕だ。


「ふぅ」


 フランフランさんは、大きく息を吐く。


 お兄さんの方は、


 ピッ


 笑って、右手の親指を立ててきた。


(……うん)


 これは凄い人たちだ。


 これが、Eランク。


 僕らより1つ上のランクの冒険者なんだ。


 アシーリャさんも、


「…………」


 珍しいことに、そのアメジスト色の瞳を細めて2人の獣人を見つめていた。 


 この2人が仲間、か。


 僕は頷いて、


「うん、頼もしいね」


 ピカン


 僕の呟きに、杖君も同意するように光った。 


 …………。


 そのあと、僕らはまた森の中でホーンラビット2体を発見して、それを倒した。


 倒したのは、フランフランさんの矢。


 本当、いい腕だ。


 カーマインさん曰く、


「主力は、フランフランの弓だ。俺は基本、アイツを守る盾役だな」 


 とのこと。


(そうなんだ?)


 でも、彼の剣の腕も相当だった。


 多分、カーマインさん自身も主力となるだけの戦闘力があると思えた。


 そんな彼は笑って、


「ま、俺たちはこんな感じだ」


「うん」


「どうだった?」


「正直、凄いと思ったよ。2人がいたら、戦いが凄く楽になると思った」


「そうか」


 僕の言葉に、彼は嬉しそうだ。


 フランフランさんも、兄の後ろで控え目にはにかんでいた。


 カーマインさんも、


「お前たちも凄かったぜ」


「そう……?」


「あぁ、ニホの魔法には驚いたし、アシーリャの剣の冴えも想像以上だった」


「…………」


「仲間に誘って正解だった、そう思ったよ」


「そっか」


 それが本当なら、嬉しいな。


 アシーリャさんはぼんやりして見えるけど、少し得意げな様子だった。


(……うん)


 初日としては、悪くない手応え。


 お互いのことも、少しは理解できたように思う。


 次は、2人とも連携していこうかな?


 …………。


 そんな感じで本日のクエストは無事に完了して、僕らはレイクランドへの帰路についたんだ。

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