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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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029・面接

 今日は、僕らと組みたいという人たちと対面する日だ。


 ドキドキ


 少し緊張するね?


 場所は、冒険者ギルド2階のレストランだ。


 初めて利用するけど、普通の食事のお店といった雰囲気で、他の冒険者たちも何人か利用していた。


(あ……あの人たちかな?)


 奥の座席に、男女2人組が座っていた。


 マーレンさんに聞いていた容姿とそっくりだ。


 男の人は、20歳ぐらい。


 赤毛の髪をしていて、そこから獣耳が生えていた。


 ズボンのお尻からも細長い尻尾がスラリと伸びていて、どうやら猫科の獣人っぽい。


 目の色は、金色。


 腰ベルトの左右に、小剣を2本、提げていた。


 女の人は、15歳前後かな?


 赤毛の長い髪を緩い三つ編みにしていて、やはり獣耳と尻尾が生えていた。


 確か、兄妹だっけ?


 2人とも、獣人さんみたいだ。


 妹さんの方は、背中に木製の弓と矢筒を負っていた。


(あ……)


 向こうも気づいたみたいだ。


 僕らに向かって、男の人の方が軽く手をあげた。


 妹さんも、軽く会釈。


 僕と杖君、アシーリャさんは、そちらへと歩いていく。


 2人も立ち上がった。


「やぁ、初めましてだな」


 男の人の方が笑顔で声をかけてきた。


 白い歯がキラリ。


 獣人だからか、八重歯が結構、鋭かった。


 僕は「うん」と頷く。


 彼も頷いて、


「俺は、Eランク冒険者のカーマイン。双剣使いだ。よろしくな」


 と、右手を差し出してきた。


 僕は、その手を握る。


 ギュッ


 手は少し爪が長いけど、人間と同じだ。


 それから彼は、


「こっちは、妹のフランフランだ。同じEランクで弓を得意としている」


「こ、こんにちは」


 妹さんは、ペコッと頭を下げた。


 少し緊張した顔。


 うん、ちょっと親近感。


 僕は頷いて、


「僕はニホ。魔法使いだよ」


「おう」


「こっちは杖君」


 ピカン


 手にした白い杖が光る。


 カーマインさんは「杖君?」と怪訝な顔をする。


 でも、すぐに頷いた。


 僕は続けて、


「後ろにいるのは、アシーリャさん。見ての通り、長剣を使う剣士」


「そうか。よろしくな」


「…………」


 彼は右手を出したけど、無視された。


 彼は困った顔。


 僕は言う。


「ごめんね? アシーリャさん、人と話すのが苦手なんだ」


「そうなのか?」


「うん。森の中で横転した馬車に長く閉じ込められてて、精神的ショックと記憶喪失で、今はいつもぼんやりしてる感じなんだよ」


「…………」


「…………」


「……何か……大変だな」


 赤毛の獣人さんは、少し困惑したように呟いた。


 妹さんも驚いた様子。


 僕は頷いて、


「でも、優しい人だから」


 と言った。


 獣人の兄妹は、僕を見つめる。


 それからカーマインさんは「そうか」と頷いた。


 とりあえず挨拶したので、僕らは4人で席に着いた。


 ウェイトレスさんがやって来たので、果実ジュースとフライドポテトを注文する。


 すぐに品物が届いた。


 パクパク


 アシーリャさんは、即、手を伸ばす。


 僕も笑って、フライドポテトを1本、食べた。


「2人もよかったら」


「あ、おう」


「あ、ありがとうございます」


 獣人の兄妹も、手を伸ばす。


 モグモグ


 少しだけ食事タイム。


 そうして僕は、


「それで、僕らと一緒にクエストしたいって話だけど、本当?」


 と聞いた。


 彼は手を止める。


 ペロッ


 ポテトの塩のついた指を舐めて、


「あぁ、本当だ」


 と頷いた。


(ふ~ん?)


 僕の青い瞳は、彼を見つめた。


 それから、


「どうして?」


 と聞く。


 彼は、こう答えた。


「人数が減ってしまってな」


「人数……?」


「あぁ。元々、俺たち兄妹は、もう2人、同郷の奴らとパーティーを組んでたんだ。だが、ソイツらが怪我で故郷に帰っちまった」


「…………」


「2人だけだと、正直、クエストに不安がある」


「…………」


「だから、新しい人員を探そうとしてた。そんな時、ニホの噂を耳にしたんだ」


「噂?」


「薬草集めの天才児」


「…………」


 僕は目を丸くする。


 そんな噂、あったの……?


 彼は笑って、


「毎日、薬草を集めて来れて、しかも失敗がない。凄いと思うぜ?」 


「あ、ありがと」


「しかも、最近は、討伐クエストも始めたろ?」


「うん」


「ホーンラビットと火狼だけだが、こっちも毎日こなしてるそうじゃないか」


「…………」


「Fランクだが、才能ある新人」


「…………」


「だから、声をかけてみようかって思ってな」


 と、彼は僕を見つめた。


 その眼差しに、嘘は感じなかった。


 お世辞とか、おだてとか、そういう意図は一切なくて、ただ本音だけを話してくれた感じだ。


(……うん)


 誠実な人だね。


 少なくとも、好感を覚えたよ。


 妹さんの方も見る。


 彼女は一瞬、ドキッとした顔をした。


 でも、すぐに頷く。


 どうやら、フランフランさんも今回の話に賛成してくれているようだ。


(そっか)


 となると、決定権はこちら側。


 僕らが了承するか、否かの問題になる。


 …………。


 初対面の印象としては、悪くない。


 深い人柄は、長く付き合わないとわからないけど……今は、いい人たちだと思えた。


 あとは実力、かな?


 2人は、Eランク。


 Fランクの僕らより上だ。


 だから、そんなに弱いってことはないと思うけど……。


(う~ん?)


 チラッ


 僕は、杖君、アシーリャさんを見た。


 アシーリャさんは、モグモグ……と、まだフライドポテトに夢中だった。


 まぁ、うん。


 彼女は、どちらでもいいのだろう。


 杖君は、


 ピカン


 明るく光った。


 何となく、背中を押してくれてる感じ。


(……うん)


 僕は頷いた。


 獣人の兄妹を見て、


「マーレンさんから聞いてると思うけど、まず10日間、お試しで組むって形でも大丈夫?」


「あぁ、もちろんだ」


「は、はい」


 2人は頷いた。


 カーマインさんは、


「俺たちとしても、この目で見て、ニホたちの実力を確かめたいからな」


 と、屈託なく笑った。


 それもそうか。


 相手がわからないのは、お互い様。


 どっちも相手を試したいんだ。


(うん)


 僕は安心して、笑った。


「じゃあ、カーマインさん、フランフランさん、これからよろしくお願いします」


「あぁ、よろしくな」


「お、お願いします」


 兄の方は笑顔で、妹の方は少し緊張した顔で答えてくれた。


 ピカピカ


 杖君は祝福するように光る。


 アシーリャさんは、


 モグモグ


 そんな僕らを横目に、1人だけフライドポテトを食べて、そのお皿を空にしていた。


 …………。


 何はともあれ。


 その日から、僕らは4人と1本のパーティーになったのだった。

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