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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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023・雷爪熊

「そう……これを受けるのね?」


 僕の渡した依頼書を見て、マーレンさんは神妙な顔をした。


 僕は「うん」と頷く。


 雷爪熊の討伐クエストの依頼書だ。


 ハーフエルフの受付嬢さんは、しばらく黙ってしまう。


 その様子に、僕は聞く。


「何か問題が?」


「ううん。ただ、雷爪熊は危険な魔物なの」


「……うん」


「返り討ちにあって亡くなった冒険者も大勢いるわ。Eランク冒険者だって失敗することもあるの」


「…………」


 マーレンさんの声は悲しげだ。


 きっと、そうした冒険者を多く目にしてきたんだろう。

 

 彼女は、僕を見る。


「本来は4人パーティー以上が推奨よ」


「…………」


「でも、ニホ君とアシーリャさんは、2人で火狼の群れを難なく討伐している実績があるものね」


「じゃあ……?」


「えぇ、受注を許可するわ」


 彼女は頷いた。


 よかった……。


 僕は、少し安心した。


「でも、本当に気をつけて」


「…………」


「無理はしないこと。2体以上いたら、必ず逃げて。クエスト失敗を恐れちゃ駄目よ?」


「はい」


 受付嬢さんの表情は真剣だ。


 僕も、しっかり頷いた。


 ピカン


 杖君も光る。


 後ろのアシーリャさんだけは、ぼんやりした表情のままだったけど……。


 …………。


 ともあれ、クエスト受注は完了だ。


 冒険者ギルドを出た僕らは、その足でレイクランドの町を出発した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 湖の北側の森に到着した。


 雷爪熊の討伐は、期日が5日間。


 たまに街道の旅人を襲うことがあるので、浅い森にいる雷爪熊を駆除するのが目的だ。


(…………)


 何回か来た森だ。


 でも、今回の魔物は今までで1番の強敵。


 そのせいかな?


 何だか、いつもよりも森の景色が暗く見えて、緊張感があった。


 僕は深呼吸。


「じゃあ、杖君、お願い」


 ピカン


 僕の頼みに、杖君は光った。


 お馴染みの『光の蝶』が生まれて、森の奥へと向かう。


 僕らは、それを追いかけた。


 …………。


 …………。


 …………。


 30分ほど、森を歩いた。


 樹々の生えている地面は傾斜して、少しだけ歩き辛い。


 そして、


(あ……)


 その傾斜した坂の上に、1体の魔物がいた。


 灰色の熊だ。


 体長は3メートル以上。


 頭部に2本の角が生えていて、前足の爪が長い。


 パチッ パチチッ


 その爪の先で、小さな青い放電が起きていた。


 ――あれが、雷爪熊だ。


 そう気づいた。


 距離は30メートルぐらい離れていて、向こうはまだ僕らに気づいていない。


(よし)


 まずは、いつものやり方だ。


 防御魔法を展開して、攻撃魔法を爆発させる。


 気絶すれば、よし。


 駄目なら、そこから戦闘突入だ。


 そこまで考えて、


「じゃあ、杖君、アシーリャさん、行くよ」


「は、い」


 ピカン


 僕の言葉に、1人と1本も応じてくれた。


 ジリ ジリ


 気配を殺して、距離を詰める。


 やがて、雷爪熊まで20メートルを切った。


 向こうは、まだ気づいていない。


 僕は白い杖を構えて、


「杖君、防御魔法」


 ピカン


 僕らの周囲を『光の球体』が包み込んだ。


 続けて、杖の先に光の粒子がヒィン……と集まり、『虹色の光球』が生まれる。


 僕は杖を振り被って、


「えいっ」


 虹色の光球を放り投げた。


 ピクッ


 気配を感じたのか、雷爪熊が振り返った。


 その鼻先で、


 ドパァアン


 閃光が弾け、衝撃波が広がった。


 樹々が激しく揺れる。


 無数の枝が折れ、たくさんの葉が吹き飛んで、土煙が舞った。


 防御魔法で、僕らは無傷。


(どうだ……?)


 透明な光の向こう側を、僕は見つめた。


 土煙が風に流される。


 そして、そこには軽く頭を振って、けれど、まるでダメージを受けていない雷爪熊の姿があった。


 あの至近距離で……?


 ちょっと驚きだ。


 すぐに、向こうも僕らに気づいた。


『ガアアアッ!』


 怒りの咆哮。


 肌がビリビリと痺れる威圧感だ。


 ゴクッ


 僕は唾を呑む。


 その横で、アシーリャさんは長剣を鞘から抜いた。


「いき、ます」


 そう告げて、


 タン


 低い姿勢で、雷爪熊へと走り出した。


(アシーリャさん!)


 その姿に、僕も覚悟が決まる。


 すぐに白い杖を構えて、


「杖君、弾丸の魔法を用意!」


 ピカン


 杖君は輝き、先端に魔法陣と光の球体を作りだした。


 射撃準備、よし。


 これで、万全のサポート体制だ。


 その間にも、アシーリャさんと雷爪熊の距離は縮まっていく。


 ヒュッ


 彼女は、長剣を振り被る。


 同時に、雷爪熊も立ち上がって、長い爪のある両腕を振り上げた。


 パチチッ


 爪には青い放電。


 そして、ついに1人と1体は接敵する。


 次の瞬間、両者はお互いの武器を同時に振り下ろしていた。

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