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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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021・訓練

 冒険者ギルドで、今回の報酬を受け取った。


 クエスト報酬は、500ポント。


 それに加えて、魔物素材の買取で500ポントもらえたんだ。


 だから、合計1000ポント。


 うん、嬉しいな。


 これもアシーリャさんが傷少なく、火狼を倒してくれたおかげだ。


(…………)


 今回のクエストは、色々と得るものがあった。


 報酬もそうだけど。


 でも、それ以外にも色々と。


 例えば、アシーリャさんが火狼5体を倒せるほど、戦闘力を秘めていたこと。


 それを知れた。


 知っているのと、知らないのとでは大違いだ。


 今後、どのクエストを選ぶか、その参考にできそうだった。


 そして、もう1つ。


 …………。


 それは……僕が無力だった、ということ。


 特に、戦闘面において。


 今回は、ほぼ、アシーリャさんに任せる形になってしまった。


 僕がしたのは、最初の攻撃魔法だけ。


 そこまでは、いい。


 問題は、そのあとだ。


 戦闘が始まったあと、僕は、何もできなかった……。 


 戦ったのは、アシーリャさん1人。


 もちろん僕も参加したかったけど、僕自身は無力な子供でしかなく、杖君の攻撃魔法ではアシーリャさんも巻き込んでしまう恐れがあった。


 だから、動けなかった。


 それが、


(……悔しい)


 僕は、唇を噛み締める。


 もっと、何かできるようにならないといけない――そう思った。


 僕は、アシーリャさんを見る。


「……???」


 僕の視線に、彼女は不思議そうだ。


 彼女自身は、特に気にしてはいないみたい。


 だけど、それはそれ。


 これはこれ。


 今回よくても、今後はどうなるか、わからない。


 なら、それに備えなければ。


(うん)


 もっと強くなろう。


 杖君を握り締めて、僕はそう決意したんだ。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 翌日、クエストは休みにした。


 代わりに、冒険者ギルドの訓練場を訪れた。


 訓練場は、ギルドの建物の裏手にあって、2時間15ポントで誰でも使用できるんだって。


 使う人は、まぁ、少ないらしいけど。


 でも、今回、僕は使うことにしたんだ。


 チャリン


 お金を支払って、訓練場へ。


 訓練場は、学校の運動場みたいな空間だった。


 そこに、木製の人形や的などが設置されたり、障害物や起伏のある状況が人工的に造られたりしていた。


 受付では、木剣や盾、弓なども貸し出されている。


(へぇ……)


 僕は、杖君、アシーリャさんと共に訓練場内を眺めた。


 使っている人は、ちらほら。


 木剣などを手に対人で訓練している人たちや、弓や魔法を的に撃っている人たちがいた。


 みんな、新人っぽい……かな?


 まぁ、訓練するのは、そういう人が多いのだろう。


 僕みたいに、ね。


(うん、やろう)


 僕は頷いた。


 そして、木製の人形が置いてある場所に向かった。


 …………。


 僕は、魔法使い、だ。


 戦う方法も、魔法が1番だろう。


 いや、本当は杖君の力なんだけどね……。


 でも、それを使うのは僕だから。


 実際、杖君は、僕が望んだ通りの魔法を具現してくれる。


 だから僕には、具体的にどんな魔法を望むのか、それを考える必要があるんだ。


 今日は、その訓練。


 さぁ、考えるぞ。


(…………)


 まず求めるのは、戦闘力だ。


 なら、攻撃魔法かな?


 でも、僕が主役になるような魔法じゃない。


 アシーリャさんは強い。


 その強さを邪魔してはいけない。


 むしろ、その強さをサポートできるような、そんな攻撃魔法がいいんだ。


(でも、どんな魔法で……?)


 僕は、想像する。


 アシーリャさんは、火狼の群れと1人で戦った。


 でも、相手は複数だった。


 うん、そうだ。


 彼女は、1対1でなら負けない。


 なら、その状況が作れるように、彼女が戦っている間、他の魔物の足止めができればいいんだ。


 あの爆発の攻撃魔法は、駄目だ。


 アシーリャさんを巻き込んでしまう。 


 もっと威力が弱くて、遠距離の相手を狙えるような……そんな魔法だ。


(……うん)


 思いついたのは、前世の銃だ。


 弾丸を撃ち出して、相手を倒せれば……あるいは、牽制できれば……。


 でも、僕にできる……かな?


 想像して、震えた。


 実は僕は、まだ魔物を直接殺したことがない。


 無意識かな。


 前世の平和な世界での感覚があってか、生き物を殺すことには、どうしても抵抗があった。


 だからだと思う。


 杖君の攻撃魔法は、相手を気絶させるだけで殺さないんだ。


 ただ無力化するだけ。


 偽善だよね……。


 アシーリャさんには殺させて、自分は手を汚さないなんて。 


「……?」


 そんな僕を、彼女は不思議そうに見ていた。


 でも、それが僕だ。


 杖君は、僕の望んだ通りの魔法しか使わない。


 心の底から望まない限り、多分、僕には相手を殺すための魔法は使えないだろう。


 …………。


 ……うん。


 考え方を変えよう。


 殺さなくてもいい。


 でも、無力化するための魔法だ。


 銃のようなイメージで、けれど、非殺傷の攻撃魔法。


(あ)


 そうだ、ゴム弾だ。


 痛いけど、でも、殺さない弾丸。


 そのイメージだ。


「――よし」


 僕は頷いて、杖君を構えた。


 視線の先には、10メートルほど離れて、木製の人形が立っている。 


 そちらに、杖の先端を向けた。


 杖君……お願い。


 僕に、新しい魔法を……。


 …………。


 ジジッ


 白い杖が輝き、先端に魔法陣が生まれた。


 そこに光が集まり、小さな光球を作る。


 そして次の瞬間、


 パシュッ


 そこから直径3センチほどの『光弾』が発射された。


 バカァン


 木製の人形に命中。


 光が弾けて、木製の人形はギシギシと音を立てて、大きく揺れていた。


(おお……っ!)


 できた。


 弾丸を発射する魔法だ。


 人形は大きく揺れているけれど、ひび割れや亀裂などの損傷はない。


 うん、適度な威力。


 相手を殺さない。


 でも、無視もできない、それなりのダメージを与えられる魔法の弾丸だ。


 アシーリャさんは、


「……!」


 と、無言で目を丸くしていた。 


(あはっ)


 いいよ、杖君。


 さすがだよ。


 僕は嬉しくなった。


 そして、もう1度、『魔法の弾丸』を撃ってみた。


 パシュッ バカァン


 また、命中。


 うん、射撃精度もなかなかいい。


 今度は、


 パシュシュシュッ


 と、連射だ。


 木製の人形は、無数の弾丸を受けて、光の破片を散らしながら激しく揺れていた。


 まるで、マシンガン。


 なかなか使い勝手もいい。


 少しずつ距離も伸ばしていく。


 15、20、25……。


 30メートルまでは、命中する。


 でも、それ以上になると、光弾の軌道がぶれたり、威力が弱くなりすぎたりするみたいだ。


 つまり、射程は30メートル、かな?


 でも、うん。


 今の所は、充分だ。


 ふと気づいたら、同じ訓練場にいた他の冒険者たちが驚いたように僕を見ていた。


 え……何?


 なんか、目立ってる?


 もしかしたら、こういう魔法は珍しいのかな。


(ま、いいか)


 今は、周りの目を気にしてる場合じゃないもんね。


 よし、もっと練習だ。


 …………。


 それから2時間、僕はしっかり魔法を繰り返した。


 うん、大分、自信もついたよ。


 僕は笑って、


「ありがとう、杖君」


 ピカン


 杖君も明るく輝いた。


 それから僕は、アシーリャさんを見る。


 そして言った。


「この魔法で、アシーリャさんをもっと助けられるようにがんばるね」


「…………」


 彼女は、僕を見つめた。


 そのアメジスト色の瞳が細められて、


 ポフッ


 その白い手が、僕の頭に乗せられた。


(え……?)


 そのまま、撫でられる。


 ふと見たら、珍しく、彼女は微笑んでいた。


 えっと……?


 よくわからないけれど、アシーリャさんは嬉しそうだ。


「…………」


「…………」


 しばらく、撫でられ続けた。


 そんな感じで、訓練は終わり。


 最後は少しくすぐったい思いをしたけれど、僕は、無事に新しい魔法を習得した。

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