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異世界に転生した僕は、チートな魔法の杖で楽しい冒険者ライフを始めました!  作者: 月ノ宮マクラ


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020・火狼の群れ

 いつもの湖の東の森にやって来た。


 まずは、薬草集め。


 杖君にハイライトしてもらった薬草を、アシーリャさんと集めていく。


 サクッ サクッ


 薬草の生えている数が減ってるので、いつもより1時間ほどかかってしまった。


(でも、これで30本だ)


 サクッ


 無事に目標数を達成だ。


 そして、ここからが今日の本番である。


 そう、火狼の討伐だ。


 クエストの詳細を思い出す。


 報酬は、500ポント。


 期日は、7日。


 北部の街道近くに群れが目撃されたので、その駆除が目的だ。


 とはいえ、群れの数は不明。


 なので『最低3体は倒して欲しい』というクエストだった。


 つまり、目標討伐数は、3体。


 素材目的ではないので、どんな手段でも倒し方は構わなかった。


 そこは、気が楽だね。


(うん、行こう)


 そうして僕らは街道に戻ると、そのまま北上していった。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 1時間ほどかけて、湖の北側の街道までやって来た。


 道中、火狼は見かけていない。


 まぁ、警戒心もあるだろうし、そう簡単に人前に姿は現さないかな……?


 普通なら、探すのも大変だろう。


 でも、


(こっちには杖君がいるのだ)


 僕は、白い杖を見る。


 それを掲げて、


「杖君、道案内の魔法を!」


 ピカン


 白い杖の先端が光って魔法陣が生まれ、そこから『光の蝶』が羽ばたいた。


 ヒラヒラ


 光る蝶は、森へと入る。


(うん)


 僕は頷いて、


「アシーリャさん、杖君、行こう」


「は、い」


 ピカッ


 僕ら2人と1本は、蝶の輝きを追いかけた。


 …………。


 …………。


 …………。


 15分ほど、樹々の中を歩いていく。


 そして、


「あ……いた」


 僕らは、真っ赤な体毛の狼たちを見つけた。


 森の茂みの向こうを、5体の群れが悠々と歩いている。


 真っ赤な牙。


 ボボッ


 それは、時折、炎を漏らしていた。


(…………)


 やっぱり、威圧感がある。


 ホーンラビットとは格が違う危険な魔物だと、改めて肌で感じるんだ。


 まだ向こうは、僕らに気づいていない。


 ……さて、


(どうするかな?)


 ちょっと困ったことに、相手は5体もいた。


 目標数は、3体。


 だけど、まぁ、向こうもこちらの都合に合わせた群れの数で動いてくれる訳もないので仕方がない。


 ……うん。


 5体、相手にするしかないか。


 予定より、2体も多い。


 危険度もアップだ。


 これは、より慎重にやらないとね?


 僕は言う。


「アシーリャさん」


「…………」


「まずは僕が攻撃魔法で、相手を気絶させます。そうしたら、あとをお願いできますか?」


「は、い」


 彼女は頷いた。


 シュラン


 音も少なく、長剣を鞘から引き抜く。


 そして、いつでも飛びだせる低い体勢になって構えた。


(うん)


 僕も頷いた。


 そして、


「杖君、まず防御魔法を」


 ピカン


 杖君は輝く。


 そして、僕とアシーリャさんを包む『光の球体』が発生した。


 それを確かめてから、


「じゃあ、始めるよ」


 と、僕は戦闘開始を宣言した。



 ◇◇◇◇◇◇◇



 ヒィン


 杖の先に、光の粒子が集まる。


 それは10センチほどの『虹色の光球』となって、杖の先に浮かんだ。


(――行くぞ)


 僕は杖を振り被り、


 ブン


 前方へと振るった。


 虹色に輝く光球は、狙い通り、5体の火狼の真上の空間へと飛んでいった。


 ピクッ


 何体かが反応する。


 上空を見た、その瞬間、


 ドパァン


 虹色の光球は弾けて、光と衝撃波を周囲に広げた。


 樹々の枝が揺れる。


 土煙が舞い、たくさんの葉が空中に舞い散った。


 そして、火狼の内、2体は気絶して、けれど、3体はまだ意識を保っていた。


(くっ……)


 全部は無理だったか。


 僕は、もう1発、と杖君をまた構えた。


 けれど、


「だい、じょ、ぶ……です」


 そんな声を残して、アシーリャさんが魔物の方へと走り出した。


 え……?


 僕は呆けた。


 その間にも、アシーリャさんは、まるで疾風みたいな速さで火狼の群れに飛び込み、長剣を素早く振るった。


 ヒュコン


 意識があった3体の内、1体の火狼の首が切断された。 


 残された2体は、ギョッとする。


 けれど、すぐに闘争本能が上回った。


 強い敵意が目に灯る。


『ガウアッ!』


 炎を散らす赤い牙を剥いて、金髪の人間のメスに襲いかかった。


 噛みつき攻撃。


 ガチン


 火花が散り、アシーリャさんは素早く身をかわす。


 かわしざま、


 ヒュパッ


 振り下ろされた長剣が、火狼の前足を1本、切断した。


 火狼は転倒する。


 ドスッ


 その心臓に、銀色の剣先が突き立てられた。


 ビクン


 赤い狼の魔物は、1度、大きく痙攣してから、その動きを止めた。


 すると、残された火狼は、


 タンッ


 と、後方に跳躍した。


 距離を取ったと同時に、その口を大きく開けた。


 喉の奥が輝く。


 あ……。


「危ない、アシーリャさん!」


 僕は叫んだ。


 同時に、火狼の口から真っ赤な『火の玉』が飛び出した。


 僕は、杖君を構える。


 でも、間に合わない。


 あれは、彼女に直撃する――1秒にも満たない時間で、そうわかってしまった。


 そして、アシーリャさんは、


「んっ」


 金属の手甲に包まれた左腕を、大きく横に振るった


 火の玉にぶつかり、


 ゴパァン


 その炎の塊は粉々に砕けて、周囲を明るく照らした。 


(――え?)


 彼女は、無傷だった。


 そして、前に走る。


 大口を開けていた火狼は、焦ったようにもう1発、火の玉を吐こうとして、


 ヒュコン


 でも、その前に、その首が斬られた。


 ボスッ


 草の地面に、頭部が落ちる。


 3秒遅れて、残された首なしの胴体もドサッと倒れた。


 僕は、杖を構えたまま、ポカンだ。


 その間に、アシーリャさんは、気絶していた2体の魔物の心臓にも、順番に長剣の先を突き立てていった。


 全て終わるまで、たったの30秒。


 それで、5体の火狼は全滅した。


 …………。


 アシーリャさんは、ぼんやりした表情だ。


 血濡れの長剣を下げたまま、こちらに戻ってくる。


 ポタ ポタ


 剣先から垂れた紫色の血が、地面に点々と染みを作っていた。


(……あ)


 気づいたら、彼女が目の前にいた。


 僕は慌てて、


「け、怪我はない?」


 と聞いた。


 彼女は、コクン、と頷く。


 それから彼女は左腕の『金属の手甲』を持ち上げて、僕に見せてきた。


 表面に、少し焦げがある。


 でも、損傷はなさそうだ。


「役に立ち……ま、した」


「…………」


「…………」


「うん、そうだね」


 僕は頷いた。


 彼女は「は、い」と少し嬉しそうに答えた。


(そっか……)


 僕は理解する。


 アシーリャさんの実力は、火狼3体を無傷で倒せるほどなんだ。


 もしかしたら、5体でも大丈夫だったのかもしれない。


 本当に何者なんだろう……?


 でも、


「無事でよかった……」


「…………」


「さぁ、討伐の証を集めて、帰ろうか」


「……は、い」


 ピカン


 アシーリャさんは頷き、杖君は光る。


 それから僕らは、火狼の真っ赤な牙を集めて、レイクランドの町に帰ったんだ。

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