第28話 お誕生日会の機能とお友達の婚約事情
なんだか知らないが、一番悪いのは義母と義姉たちだと思う。
三人の男性はむしろ被害者だと思う。
しかし、私の守護神たちの意見は違った。
「脇から手を出して、ひっさらおうとしているのですわ! 男なら正々堂々、父上のところへ申し込めば良いのですわ!」
ちなみに、このように持論を展開するアーネスティン様は、十二歳のお誕生日会に、バラの木陰で三歳年上の従兄弟の公爵家令息からプロポーズされ、後日、両親の理解を取り付けたのだそう。
違うじゃないか! 正々堂々、父への申し込みはどこ行った。
「それは……子どもですから」
アーネスティン様はほのかに頰を染めておっしゃるが、子どもなのはアーネスティン様だけで、十五歳の公爵家令息の方は少しは遠慮したらどうだ。
「かわいい子だから、どうしても先に名乗りを上げたいのだと説明されました」
子ども。余計ダメだろ! 何の趣味?
マチルダ様は姉のお誕生日会で今の婚約者と知り合ってしまったらしい。
「姉の婚約者候補でしたの。でも、別な方とうまくいってしまって……」
よくよく聞いたら、姉よりもマチルダ様を気に入ってしまい、紆余曲折の末の婚約らしいが、その時、婚約者様は十七歳。マチルダ様、わずか十一歳。
大事なお友達なので、余計なことは言わないように堪えたが、ますますダメだろ。婚約者の男の方が!
「実は私も……」
ローズマリー様は、毎年お誕生日会で、幼馴染として婚約者の方と会っていたが、お互いの意志を確認したのが、二年ほど前。
それなら、まだ、犯罪性が薄れた気がするわ。
って、よく考えたら、十四歳だ。危ないわ、この人たちの婚約者。
「お誕生日会が、そんな機能を兼ね備えていたとは」
コメントとしてはこの辺が妥当だと思う。
しかし、恐るべし。お誕生日会。
「エレクトラ様は?」
聞かないで。
私の婚約者との出会いの時、モートン様は十四歳でした。これでは、今度は私が犯罪者みたい。
「母が生きていた頃は、お誕生日会も、お茶会も何度となくやっておりました。ですけど、亡くなってしまってからは、そんな気も起きませんでした。やはり母がいないと」
全員にしめやかな雰囲気が漂った。
しかし、アーネスティン様は決然としておっしゃった。
「大丈夫ですわ。私たちがあなたを守ります」
王弟殿下の令嬢の一言は結構怖かった。が、何するつもりかしら?
とりあえず、馬車が数限りなくあるらしい王弟殿下のおうちから、私たちはそれぞれ自邸へ送り返してもらった。
いつもなら、遅いとかなんとか文句を言う義母も、「アーネスティン様からのお誘いで」の一言でピタリと見事なまでに黙った。
こう言う時は、いつもならモートン様に手紙を書くところなんだけど、三人の男性の登場はモートン様あてのお手紙の内容としては、妥当ではない。
この後、どうなるのかしら。
私は貴族の関係とかそういったものはあまり考えたことがなかった。と言うより、母が亡くなってしまったので、あまり教えてもらうチャンスがなかったのだ。
だが、そんなことを言っていられない。
モートン様は、モートン伯爵家のご令息。嫡男ではない。モートン伯爵家自体は、ウチと似たような、可もなく不可もない伯爵家だが、ご本人が非常に優秀と言うことでその点ではプラス判定だ。父が認めているくらいだから、あまり心配はいらない。
お人柄も問題ない。
唯一気になるのが二歳年下と言うこと。最初会った時の幼い顔が目に焼き付いている。
ルテイン伯爵家のルイス様、ロス男爵家のロビン様、レシチン家のレオナルド様は、どんな方々なのかしら。ただ、身上書は義母が持っている。詳細がわからない。あなたのおうちはどこですか。
どうなることやらと心配していたが、なぜか静かな日々が続いた。
水面下で何か起きているのかもしれないが、知らない方が幸せと自分に言い聞かせることにした。
だって、義母と義姉たちと同じ家に住んでいるだけでも結構なストレスなのですもの。




