表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレクトラの婚約者  作者: buchi


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/66

第10話 使用人たち、一致団結

「奥様の命令により、あなたは家事手伝いの修行をすることになりました」


「え?」


侍女は実に威厳のある、体格の良い女性だった。


「貧乏平民の嫁になるのです。掃除、洗濯を一通りこなせるようにならなくてはいけません。料理は無理だろうと、料理番が言っていました」


私は洗濯場に連れていかれ、冷たい水で洗濯するように命じられた。


「いやです! そんなこと!」


冗談じゃないわ。どうしてこんなことになるの?


「さあ、こちらへいらっしゃい」


体格のよい義母付きの侍女は、私の腕をつかんで、引きずるようにして洗濯場へ向かった。


「いやよ!」


ただし、救われたのは、この家が私の家だったことだ。


侯爵家から連れてきた義母の侍女以外の人間は、全員、長年伯爵家に仕えてきた者たちばかりだった。親子二代で働いている者もいる。


義母お気に入りの侍女が、洗濯を私にやらせろと命じても、誰も動かなかった。


みんな、冷たい目つきで侍女を見つめていた。


「お嬢様にそんなことをさせろとおっしゃるのですか?」


「奥様の命令です」


「そんなことをしたら、お嬢様の手がアカギレだらけになりますよ」


「これから貧乏人に嫁ぐのですから、一生アカギレだらけの手で暮らすことになります。それより家事を覚えた方が本人の為です」


それからどことなく得意そうに付け加えた。我が意を得たりといった感じだった。


「お嬢様だなんて。そんな呼び名はふさわしくないわ。これからはエレクトラと呼び捨てでいいわ。この家のお嬢様はアン様とステラ様だけです。お前たち、わかったね?」


「なんで、あんたがそんなことを言うんだ。伯爵家が大事に育てた令嬢を!」


洗濯女や掃除婦たちが侍女を取り囲んだ。そのうしろには料理番もいた。


侍女は体格がよかったが、大勢相手にはしり込みした。だが、料理番を見つけると声を掛けた。


「料理番がいてよかったわ。料理番は、エレクトラは無能だから、料理は無理だって言ってたわね。そりゃ料理なんかは無理だって言うのはわかるわ。なかなか高度だからね。だから洗濯や掃除から始めた方がいいって言うのはよくわかる。あんた、ちょっとこの連中に言ってやって。平民に嫁いで何もできなかったら苦労するのは本人よ。家事を覚えろと言うのは奥様のお慈悲なんだよ」


料理番が怖い顔をして反論した。


「無能だなんて、そんな失礼なことは言ってません。料理がダメと言ったのは、厨房でお嬢様に火傷でもされたら困るからです。皿洗いもさせられません。伯爵家の令嬢がすることではありません。そんなことはお断りです」


ずいっと、女中の一人が前へ出た。


「この家のお嬢様を呼び捨てでいいって、誰が言ったんだね? 旦那様に言われるまで信じられない。まさか、あんたの暴走じゃないだろうね?」


別な女中が後ろに控えていた使用人仲間に向かって言った。


「誰かセバス様を呼んできな」


侍女は青くなった。彼女は逃げていってしまった。











評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ