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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第四章 確かに僕は
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この電話番号……誰から?

 ――やばいっ遅刻しちゃったっ!!


 待ちに待った12月25日、クリスマス当日。普段よりオシャレに力を入れすぎたせいで時間がいつもの2倍掛かっちゃった。今私は集君がいる駅に向かう為に電車に乗ってる。


 今日はいつもあんまり使わないファンデーションを塗って、口紅も塗った。それだけなら時間はあまり掛からない。でも今度は服装の事で凄い悩んじゃう。集君ってどういう服装が好みなのか……私は全く知らない。そんな事をずっと悩んでいた結果がこの遅刻。


「もう間に合わないんだし、行くの止めましょうよ」


 私の後を付いてくる凛がそう口にする。


「バカ言わないでよっ」


 私は凛を振り返らずにそう言い放つ。……そうよっ。どれだけ私がこの日を楽しみにしてたと思うの?

 皆が一緒とはいえ、私の事を集君は誘ってくれた。初めて……、初めて私を誘ってくれたの。それもクリスマスに。


 私にとってそれはそれは大事な日なのに……、オシャレに時間を掛けすぎたせいで遅刻しちゃった。ホント自分が嫌になる。いくら集君の照れた顔が見たいからって、それで遅れちゃったら集君に呆れられちゃうかもしれない。……時間も守れないのかって。


 呆れられるだけならまだ良いかもしれない。私が嫌なのは集君に拒絶される事……。6ヶ月前にやっと、か細い糸だけど繋がりを得たんだ。それに……私は修学旅行で黒崎先生から聞いた話を集君に振ったときの言葉を思い出す。


『山岸さん……。君もか?』


 あの時の集君の声……凄く冷めてた。あんな声初めて会った時以来だよ。それだけ集君の中で私の事を警戒していたって事なんだよね。最近集君の事が少しだけ分かってきた気がする。集君は家族の事を一切喋らないのは、同情されたくないからなんだと思う。だから集君はあの時冷たい声を出した。……これ以上自分の心の中に踏み込ませない為に。


 だからこそ集君は常に真っ直ぐであろうとするんだよね。一度悩んだらとことん悩んで、悩み抜いて答えを出す。そんな姿を私はこの6ヶ月で何度も見てきた。集君は誰かの為なら自分を平気で投げ出せる人間だってっ。……でも、だから余計に分からなくなる。


 ねぇ集君……。なにが君を孤独にさせようとしてるの? 人に優しく接する事も出来る。誰かの痛みに共感してあげることも出来る。ならなんで……。ずっと一人ぼっちなの。


 私は電車の窓から見える微かな光で照らされた町の夜景を眺めながらそんな事を考えていると


「……っ」バッグのポケットに入っていたスマホの振動が私の持ち手に触れている腕に伝わる。私は凛に一言断ってから急いでトイレへと向かう……。あそこの車両の廊下なら電話しても誰かに迷惑を掛けるのは最小限に済むかもと思った。


「この電話番号……誰から?」


 全然心当たりのない電話番号に戸惑う。出るか出ないか暫く逡巡した後私は、通話ボタンを押しスマホを耳に当てる。


「……もしもし」


 私は恐る恐るといった調子で声を上げた。


「あ、もしもし。その……黒崎、です」


 だけどスマホから聞こえた声に私は固まる。えっ何で?

 

「集、君なの? あれ、でも」


 私、集君に番号教えてない筈だけど……。


「えっと、これは天道に教えられて……」


 ナイス天道君。私は電車内の廊下でガッツポーズを取る。


「そうなんだ……。あ、遅れてごめんね。皆怒ってない?」


「それは大丈夫。急かすつもりはないんだけど、後何分くらいで着きそう?」


 私はその声に笑う。だって本当に怒気を一切感じられなかったから。


「うん、後10分もしない内に着くと思う」


「そっか……。じゃあ、待ってるね」


「……分かった、またね」


 そう言って私は電話を切った後すぐに着信履歴を開く。着信履歴には今さっき掛かってきた集君の電話番号が……。


 私はすぐさまその電話番号を電話帳に登録する。カーソルをカ行に当てるとクの欄に『黒崎集』という文字が現れる。


「〜〜〜っっっ」


 私は額にスマホを押し付け目をギュッと強く瞑って声に声を上げる。……やばいっ、凄く嬉しいっ!! ずっと知りたいと思っていた集君の連絡先が遂に手に入ったんだからっ!! この前看病から帰ってきた時、集君に聞いておけば良かったと後悔していたから……尚の事嬉しい。


 私は窓を眺める。外は全く照らされていない場所と照らされてる場所が交互に映り込んではその景色が流れていった。私はそんな景色を見ながら思う。


 早く集君に会いたいな……って――。

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