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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第四章 確かに僕は
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今更だけど僕

 ついにこの日が来た……。今日は待ちに待ったクリスマス。山岸さんに言われなかったら、二人きりで行く事になってたかもしれない……クリスマス。


 そんな事を考えていたら心なしか顔が熱く感じる。

 ダメだっ……。変に意識するな。これから皆に会うっていうのに。一人だけ山岸さんの事を意識してたらおかしいだろ。


 でも山岸さん……。なんか残念がってたような、ってそれじゃまるで僕と二人きりになりたかったみたいじゃないかっ!?


 僕はそう思いながら待ち合わせ場所の駅近くの本屋入り口前で外へと目を向ける。


 時刻は17時30分。もう辺りはすっかり暗く遠くでライトアップされてるイルミネーションだけが光り輝いて見える。



「はぁ〜っ」


 僕は両手を口の前に出して息を吹きかける。口から白い息が吐き出されると同時に両手に生暖かい風が当たる。


 皆はまだ来ないのかな……。そんなことを思っていると



「おっ、集……早ぇじゃねぇかっ」


 一番最初に到着したのは万丈だった。僕は挨拶をしてきた彼女の姿に目を奪われる。


 上は黒のジャケットにスウェット、下は腿までのデニムパンツ姿。

 冬なのに万丈……というか、女の子ってなんで寒いのに平気で短い物履くの? 正直僕には理解できない。



「ん……どうかしたのか?」


  いけない。どうやら僕は万丈に見惚れてしまったようだ。



「いやっ、というか……、ヤケにオシャレに力入れてるんだな」


「なんだよ……。やっぱオレには似合わねぇか」


 いえいえとんでもないっ……。ものすんごいどストライクですよっ!!

 なんていったって、普段男っぽい格好をしてる万丈が可愛らしい服を着てそんな恥ずかしそうな表情してたら可愛くないなんて思えない。普通に可愛いよっ!!


「そ、そんなことないよっ」


 僕の言葉を聞いた万丈は安堵の溜息を吐く。


「良かった〜っ!! 引かれたらどうしようって内心すげー焦ってたんだっ」


「誰が引くっていうの? 万丈はキレイな髪、顔してるんだから。仮に万丈に好きな人がいて、その人に見せたら喜ぶと思うよ」


 万丈がその言葉に暫し固まる。そして何度か瞬きをしたあと


「な、ならよっ。お前は……集は喜んでくれるか?」


 な、なんでそこで僕なんだよ……。僕は顔を俯かせている万丈を見る。まぁ、僕なんかの意見を聞いた所でそれは僕個人の見方であって、万丈の好きな人が必ずしもそう思うわけじゃないけど。


「か、可愛いんじゃ……ない」


 僕は素っ気ないふりをしながら言う。万丈はその言葉に顔を上げると幸せそうに微笑む。


「そう、か。そっか……そうなのか。……エヘヘッ」


 ……万丈、その笑い方少し気持ち悪いんだが? そんな事を思っていると


「お、いたいたっ。集っ!!」と背後から声が聞こえる。後ろを振り返ると天道と本城さんがいた。


 二人と合流して僕達は話しながら残りの二人……山岸さんと冴島さんを待つ。でも約束の時刻を過ぎても二人は姿を現さない。


「遅いな……。集、山岸に電話を」


 僕は天道の言葉に目を丸くする。


「あの、今更だけど僕……。山岸さんの連絡先、知らない」


「は?」


 天道がいかにも嘘だろっ? みたいな反応をする。


「いや、だって……。関わるようになって6ヶ月は経つんだぞ?」


 そうだな、山岸さんだけに関わらずこの場にいる全員の連絡先も知らないんだけど。


「全く、ほらスマホ出せ」


 言われるままにスマホを取り出すと


「この番号打って電話しろ」


 そう言ってディスプレイに映り込んだのは山岸奏という文字とその下に070から始まる11桁の電話番号だった。


「こ、これっ山岸さんの電話番号じゃないか? だったら天道、お前が電話したほうがっ」


「却下。お前が電話した方が山岸は喜ぶ」


 何言ってるんだよ? 山岸さんが喜ぶ? 戸惑っている僕に


「ほら、早くっ!!」


 天道に急かされて仕方なく番号を打ち込む。


「なっ天道……お前?」


 万丈が天道に鋭い眼差しを向ける。


「悪いけど万丈。俺は幼馴染みの幸せを望んでるんでな」


 不敵に笑う天道。僕は二人のやり取りを意味も分からないままに一瞥した後、再度ディスプレイに目を向ける。コールボタンを押すか押さないか、たっぷり10秒位悩んだ後僕はコールボタンを押す――。

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