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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第四章 確かに僕は
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可愛いな

「今日黒崎は風邪で休みよ」と、黒崎先生が皆に連絡する。集君が風邪とか珍しいな。……あれ、でも集君って?


 私はショートホームルームが終わると黒崎先生の元へ行く。


「先生」


 私が黒崎先生を呼ぶと笑顔で


「なにかしら、山岸さん?」と答える黒崎先生。


「確か集君って一人暮らしですよね?」


「そうなのよっ、だから集君大丈夫かなって私心配でっ」


 さっきまでのクールな感じが消えて心配性丸出しの態度に私は多少戸惑う。黒崎先生、集君の事になるとキャラ大分変わるよね……。まぁこの前の話を聞いたらそれも無理もないよね……。


「集君の家ってここから近いんですか?」


「えぇ。近いけど、まさか今から行きたいとか言わないわよね?」


 私は笑顔で頷いてから


「そのつもりです。だって集君一人で困ってると思うしそれに……。心細いと思うから」


 集君と私が共有できる部分があるとしたらそれは、実の親ではない人を親に持っている……。その点だけは共有できるんじゃないかな。


 私も熱を出した時今の親戚のおじさんやおばさんは私の看病をしてくれなかった。きっと集君も同じだったと思う。じゃなかったら、集君の性格もっと明るくなってると思うもの……って酷いこと言ってるな私。


「そうね。私も心配だし、教師としては失格だけど。黒崎集の姉として弟を頼めるかしら? 集ちゃんが復帰するまで青春部の活動は保留ね。集ちゃんの事宜しくねっ!!」


「はいっ!! 集君の事は任せてくださいっ!!」


 そうして私は、黒崎先生から集君の住んでる場所を聞いてそこへ向かう。集君の住んでる家は新築のようで外観は真っ白でどこも汚れた所がない。


 ……ここが集君の家か。最後に男の子の家に来たのは小学生だから久々過ぎてかなり緊張しちゃう。騒音を立てる私の心臓の音を無視して私はチャイムを鳴らす。


「…………」


 けど、誰も玄関から出てこない。……寝ちゃったのかな? そう思ったけど、もし集君が今倒れ伏しているんじゃないかって凄く心配になる。私はもう一回チャイムを鳴らす……。でも応答がない。


 今度は連続で鳴らし続ける。それも凄い速さで。すると奥から……。


「はいはい、今開けますよ」と声が聞こえて扉が開けられる。


「良かった……。集君やっと出てくれたっ!!」


 私は集君が無事だった事に嬉しくなる。でも集君の顔はいつもより赤みを増していて目もトロンとしていた。その姿を見て私は心の中で可愛いなと思いながら


「さぁ、集君の寝室に行こうっ。熱があるんだから寝ないとダメでしょ?」


「あ、うん……じゃなくてっ、山岸さん学校は?」


 集君がそうやって聞いてくるけど、私はそれを無視して


「さぁ行く行くっ」と言って集君を私と同じ方向に向かせて背中を押す。


「ちょっ……山岸さんっ!?」 


 意外と背中大きいなと思いながら私は集君に寝室の場所を聞き出しその寝室に一緒に入ると彼をベッドに寝かせる。さて……。


「集君、ご飯食べたの?」


「いや、まだ食べてないけど?」


「そっか。ならお粥作ってくるから待っててっ?」


 私がそう言うと集君がベッドから身体を起こして


「そんな……悪いよっ」


「良いのっ。それと熱があるんだから横にならないとダメでしょっ?」


 私はそう言って集君をベッドに押し倒す形で横にならせる。風邪で弱ってる集君があまりに可愛いから、このまま押し倒してそのまま……って流石に集君に引かれちゃうだろうから、そんな事絶対にできないけど。


「じゃあ私キッチン行くから……。何かあったら呼んでね」


 私はそう言ってキッチンに行くと私の鞄からビニール袋を取り出す。中にはリンゴが入っている。流石に手ぶらで見舞いというのも失礼だなと思い、さっき近くのスーパーで買っておいた。


 私は冷蔵庫から適当に食材を取り出し調理しながら先程までいた集君の部屋を思い返す。殺風景だと感じる程に集君の部屋は物が少なかった。ある物とすればベッドと傍に置かれてる机だけでその他には何もない。生活感というものを一切感じられなかった。


 多分私と同じで部屋だけあればそれで十分って思われてるんだろうな。私は彼が可愛そうだなと思った。私もそれなりにキツい過去を持ってるけど、集君はそれ以上に辛いはず。だって母子家庭でお母さんを亡くしてお父さんの元に引き取られたら再婚してて子供までいる。


 私だったらそんなの辛い……。だから集君はいつも悲しそうに見えるのかな? 心が凍りついているのかな? その心を少しでも……。


 ――私が軽くしてあげられないかな?


 お粥を作り終えて私は集君が眠ってる寝室に向かう。寝室に入った私に集君が気付くと


「……ごめん。迷惑かけちゃって」と、顔を俯かせてしおらしい態度を取る集君。


 ……もう、なにこの子っ!! すごい可愛いんだけどっ!!


 いつもは冷めた態度で小生意気な事を言ってるのが可愛らしいけど、熱でうかされてると途端にこんなにも素直で潮らしい態度になるなんて……反則すぎるよ、集君っ♡


「さぁ、集君……。お粥を作ってきたから食べよう?」


 私はそう言ってお粥の入った椀とスプーンを集君の元へ持っていく。集君は身体を起こそうとするけど熱があるせいか上手く身体を動かすことが出来ないでいた。


 私は集君の元へ行き背中を支えながら起こしてあげる。その時に見えた弱ってる顔がまた可愛らしくて私はついこんな事を言ってしまう。


「集君それじゃご飯食べ辛いでしょ? 私が食べさせてあげるよ」と。


 すると集君の顔がただでさえ熱で赤い顔がさらに赤くなる。……可愛いな、もうっ♡


「そ、そんな事……ダメだよっ」


「でも食べられるの?」


「そ、それは……無理、そうだけど」


 集君は顔を俯かせながら言う。


「早く良くなる為にも食べなくちゃだよ?」


 私の言葉に集君は視線を床から私、私から床と交互に見て葛藤している姿が伺えた。そんな所も可愛いな。やがて意を決したかのようにギュッと目を瞑りながら


「そ、その宜しく……お願い……します」


 最後の方は掠れすぎて聞こえづらかったけど、私は集君の今までにないくらい照れた顔を見れた事に満足する。


「うんっ、任せてっ!!」


 私はスプーンでお椀の中にあるアツアツのお粥を掬って、ふぅふぅと息を吹きかけて冷まさせる。……これを集君に食べさせると思うと凄い恥ずかしいんだけどっ♡


 私は息を吹きかけて冷ましたお粥の入ったスプーンを集君の口元に持っていき


「はい……。ア〜ンッ」と言う。その言葉に集君は絶句する。そして暫く放心して呆然と私を見た後……。


「……あむ」


 集君が勢い良くスプーンに貪りつく。意を決したんだろうけど、耳が赤いの見てて分かるよっ、集君っ!! 


 お粥を食べ終えた後、集君は横になって眠りに就く。私はそんな集君の顔をずっと眺めていた。寝顔があどけなく見えて可愛いっ!! 私は集君の特徴的な薄い亜麻色の髪にそっと手を伸ばし触れる。サラサラで触り心地が良くいつまでも触っていたいな……。なんて思っていたら


「……ぅ……山、岸、さん……」


 どうやら集君寝言を言ってるみたい。尚の事可愛いなっ、その寝言の内容私の事みたいだから尚の事嬉しいっ♡ でも何を言おうとしてるんだろう? 私は小声で寝言を呟いてる集君の口元に顔を寄せる。


「……好き……なの、かな……」


 私はその言葉を聞いて固まる。えっ? 今なんて……。えっ……えっ……ええええぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜っっっっっ!!?!!?!!?

 

 その日の夜私は家に帰って翌日の朝までその事で悶絶し続けた――。


 


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