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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第四章 確かに僕は
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青春部は青春する部活よ

 僕達は生徒達が授業中よく使う第一校舎……ではなく、部活に入ってる人達が良く使う第2校舎……部室棟に来ていた。第一校舎の場合は玄関を通れば目と鼻の先に第一校舎……クラス棟なのだが、部室棟の場合玄関を通って少し歩かなければいけない。


 僕達は部室棟に着くと美紗ねえが何も言わずにとある一室に入って少し進んだ場所で振り返り


「さ、早く入りなさい」と、僕達を促してくる。


僕達6人はそれぞれ顔を見合わせると皆一様に戸惑った表情を浮かべている。


「大丈夫……別に取って食おうって訳じゃないわ」


 美紗ねえは優しげな笑みでそう答えると教室の奥へ進んでいく。その後を天道、本城さん、万丈、山岸さん、冴島さんと続けて入っていく。僕は部屋に入る前に出入り口の上の部分へ目を向ける。部室ならここが何部なのか書いてあるはずだからだ。そしてその名前は――。


「……青春部?」


 なんだ? このメルヘンチックな名前の部は? 僕は訝しみながら部屋の中へと入る。すると中央に長テーブルがコの字を描くように窓側が開く形で置かれていた。その開いた場所に事務用の丸椅子が置かれており、そこに美紗ねえが座っている。


「さぁ、皆空いてる所どこでも良いわ。座ってちょうだい」


 美紗ねえに促されて僕達は各々好きな所に座っていく……の筈なんだけど。


「あの……、二人共他の場所空いてるのに。なんで僕の両隣に座ってるの?」


 何故か山岸さんと万丈が僕の両隣に座ってる。周りに目を向けると一つのテーブルには天道と本城さんが……。まぁあの二人は付き合ってるみたいだしペアで当然か。そしてもう一つのテーブルには冴島さんが一人ポツンと座っていた。……いや、二人のどっちか行ってやってよっ!?


 僕は仕方ないのでその場から立ち上がり冴島さんの隣の、椅子に腰掛ける。


「あ、集っ!?」


「そ、そんなっ!?」


 二人がそんな僕を見てショックを受けた様な顔をして項垂れている。……? 二人共なんでショック受けてるの? するとそんな山岸さん達を見て冴島さんが僕の顔をキッと睨みつけてくる。


「……どうかしたの?」


 僕がそう問いかけると珍しく無機質な声じゃない返答が来る。


「奏を傷つける人なんて大嫌い……。絶対殺す」といきなり殺害予告を突き立てられる。


 ……え? 冴島さんってそんなキャラだったの? というか、殺害予告宣言されちゃったけど……。誰かおまわりさん、助けて〜〜っっ!! と、冗談を心の中で呟きながらここに僕達6人を集めた張本人へと目を向ける。当の本人は椅子に座って両方の肘を膝につけ手を組んでその上に顎を置いている。……が、顔は子供が拗ねたような表情を浮かべている。


「集ちゃんがモテて……お姉ちゃん、ちょっとジェラシー」


 おい美紗ねえ、アンタ何言ってんの? いい大人がそんな拗ねたような顔して可愛く言うんじゃないっ!? 見せるんなら男……優にいに見せてやりなさいっ!!


「そ、そんな……。黒崎先生、集君と私そんな風に見えますっ……?」


「オ、オレとっ……しゅっ、集がっ」

 

 うん、一回そこの二人落ち着こうか? 何が言いたいかよく分からないから。


「…………」


 さっきから冴島さんが僕の事を親の仇でも見るような憎悪の目を僕に向けて来てるんだけど。止めてよっ!? すごい殺気が籠もっててビビってチビッちゃうからっ!!


「さて、冗談はここまでにしてそろそろ本題に入ろうかしら」


 真面目な顔をして美紗ねえがそう言う。……出来れば最初からそうして欲しかった。依然として冴島さんが僕の事を睨みつけてくる。やばい……。感覚が冷え過ぎて全く生きた心地がしない。


「皆に集まって貰ったのはね……。他でもない、このメンバーで部活をやってもらう為よ」


 そんな中で美紗ねえが楽しそうに言い放つ。……僕はその言葉にさっき出入り口前で見えた文字を思い出す。


「……もしかして青春部って名前の?」


「さすが、集ちゃん!? そういう所は頭回るのに。もう少し勉強ができるようになって欲しいわ」


「なっ……今関係ないだろっ!?」


 なに人の成績を軽く暴露してんのこの人っ!? それに平均点は全教科超えてるから良いじゃんっ……。毎回ギリギリだけど。


「黒崎先生……。その青春部ですけど具体的に活動内容はどういった物なのでしょうか?」


 天道が懇切丁寧な態度言葉遣いで美紗ねえに聞く。


「青春部は青春する部活よ」


 だからその方針を聞いてるんだろうが……。僕は美紗ねえの発言に頭を抱える。こんなに頭悪い人だったっけ? ……そっか、僕も頭良い方じゃないから黒崎家の人間は頭悪いんだな。そう思っとこっ♪


「先生っ、具体的な内容教えてよ〜っ?」と、天道の隣にいた本城さんがやる気のない間延びする声で問いかける。


「主な活動内容はボランティア活動だ」


 僕達はその言葉に固まる。ボランティア活動?


「募金活動から最近地震の被害に遭った地域の復興作業などといった事よ」


 僕はその言葉に手を上げる。


「活動内容は分かったけど、なんでこのメンバーこの時期なの?」


 僕の問いかけに笑顔になる美紗ねえ。


「いい質問よ集ちゃん……。この部活は前々からやってみたいと思っていたの。でも中々良い人材がいなくてね。そしたら貴方達が現れた」


 ……やばい、言ってる意味が前半分かったけど後半訳分かんない。


「貴方達全員性格も違えば個々の能力も違う……。そんな中で、ボランティア活動という共通の目的を持って行動したらどうなるかしら?」


 美紗ねえの言ったことを僕は考える。性格個々の能力が違う人間が集まり共通の目的を持って行動したら……。そこに生まれるのは適材適所、助け合いの精神が生まれる……と。


「私は君達にチームになって欲しいと思ってるんだ?」


 美紗ねえがそう言うと


「面白そうじゃんかっ」


「うんっ」


「奏が良いなら私も付き合うわ……」


「確かに良いかもしれないな。少しボランティア活動に興味があるし」


「敦がやるなら私もやる〜」


 各々やる気を全面に出した事を言う。僕は席を立つ。


「集ちゃん、どうしたの?」

 

「悪いけど、僕入る気ないよ」


 部活なんて面倒くさい……。僕は放課後を拘束されたくなくて帰宅部を選んだのに。


「集ちゃんダメよ。これは言わば貴方の為の部活なんだから」


 僕の為の部活? 僕が訳が分からずにいると


「ボランティアはね。青春だって私は思うの。色んな人と触れ合い、特に復興作業なんかじゃ活動自体をすれば困ってる人達が自然と笑顔になってくれる……。なんて言ったらいいかしら。心が普段より揺り動かされ、普段より人に優しくなれる。そういった成長を迎えられる……。それが私にとってのボランティアなの」


「それなら青春ってなんだよ?」


 美紗ねえは僕の言葉にまた笑う。


「青春はね……。ボランティア活動に参加しているメンバーで1つの事に取り組む行為自体にあるの。ボランティアと言っても色々やる事があってね。一人じゃ絶対に出来ない。その時に必要になってくるのがチーム……仲間よ。それを貴方達にはすぐには無理かもしれないけど、仲間意識という物を養ってもらうわ。

 特に集ちゃんっ!! 貴方は人に優しくする気持ちを養ってもらう……いいかしら?」


 僕はその言葉に嘆息する。つまり、僕に拒否権はない訳ね。まぁ、美紗ねえが僕を思って作った部活……。それを僕が無碍にするのも良くない、か。


「はぁ、分かった。……やるよ」


 僕の言葉に冴島さん以外の全員が笑顔になる。こうして、青春部と言う部活が今この時、この場所で発足した。


 さて、これからどうなる事やら……。僕は笑って話し合ってる山岸さん達を見てそう思うのだった――。

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