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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第三章 結局僕は
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これしかやり方を知らないだけだよ

 それから僕達は玉泉洞という鍾乳洞に向かった。沖縄の観光名所の1つで中は本来は暗いが怪我防止の為に明かりがついている。


 僕は基本暗くてジメジメした場所が好きだ。明るい場所だとなんだか自分が場違いな場所にいるような気がしてならない。

 ……でも鍾乳洞でのライトアップは別だ。ライトに照らし出された鍾乳洞の輝きはエメラルドにも劣らない。そんな幻想的な風景を僕は見てみたい。……んだけど。


 僕は目の前の光景を呆然と眺める。僕の目の前で本城さん達が水着になって海で戯れている。今日は生憎と雲1つない快晴だ。さぞ楽しいことだろう? 


 僕は本城の姿を眺める。彼女は白と黒の縞模様のビキニを身に着けて友達である榊さんと水辺でビーチバレーをしている。ビキニって胸元凄い開いてるなあ……。と、どうでもいい事を思いながら眺めていると


「……少し話していいか?」と、天道がそう言って僕の隣に座る。


 いや、話していいかって言って腰つけるんだから話す気満々だよね? 僕は目線を海にいる本城さん達から逸して隣にいる天道を見る。天道は思い詰めた顔をして海を眺めていた。


「で、なんだよ話って?」僕が問いかけると


「さっき、万丈とのやり取りを見ていて思ったけど……。お前は人付き合いにおいて嘘を口にしたりはしないんだよな」


 天道が徐に語りだす。僕は呆然と天道を眺める。


「俺は今まで人の不興を買わないようにずっと……。他人の顔ばかりを伺ってきた。それが正しい事であるかのように」


 天道は悲しそうな顔で言う。僕はそれを聞いて当然だろうと思う。他者からの不興を買えば、その話は集団にあっという間に広まり気付けば孤立する。それがたとえ天道のように常に正しい行動をしていたとしてもだ。


 結局集団に、正解不正解という概念は存在しない。あるのはそう……自分が楽しめるか楽しめないかだ。間違っている事をしたとしてもそれを楽しんで行っている人達がいる。

 例に上げるなら万引だ。僕はした事がないが商品をポケットやカバンの中に忍ばせて出入り口をバレずに、脱出できるかのスリルを味わって楽しんでいるどうしようもないクズがいる。

 だから集団でも同じだ。その輪の中のリーダーが楽しめれば、どんなに間違った行為でも正しく……。逆にリーダーが楽しめなければどんなに正しい行為でも間違いという事になる。


「だけど黒崎……。お前は常に人に対して言いたい事を伝えてきた……。周りの目にどう映ろうともな」


 僕は今までの事を振り返る。山岸さんの一件から天道と関わる機会が増えたけど僕は以前と変わらない……。言いたい事を言いたいままに言ってきた。だってそうだろう……。伝えなきゃ自分の考えを理解してもらえないんだから。


「僕はただ……これしかやり方を知らないだけだよ」


 天道が僕の目を見る……。天道……、お前は正しいよ。そのやり方をしてる人間はおそらく大半だろう。

 だけど僕は……。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「別に僕は言いたい事を全て言ってる訳じゃない……。それを言って騒動に巻き込まれるのは僕としても嫌だからな」


 僕は天道から目線を逸して海で遊ぶ本城達を眺める。皆ビーチバレーに飽きたのか、本城さんと榊さんが水辺で水を掛け合って遊び、その光景を浜辺で森本と空条が眺めている。

 男どもよ……。気持ちは分かる。僕は本城さんと榊さんの胸に自然と目が行く。本城さんの胸は大きく、榊さんの胸は逆に小さい。因みに僕は小さい胸が好きだ。なぜかと言うと色々理由はあるけど、一番の理由として挙げるなら小さい方が型崩れしなさそうという理由。

 それに僕みたいな卑屈な人間には山岸さんのようなまな板の方がお似合いだ……。って我ながら酷いこと言ってるな。ごめんね、山岸さんっ♪


『分かったよ……。ったく、エロい事してもいいってのはホントなんだけどな』


 万丈の言葉が脳裏をよぎる。……本当なら男としては嬉しいことこの上ない。1度でいいから万丈のような豊満な胸に触りたいと思うのは健全な高校生男子としては、おかしくない……。おかしくないよねっ!? と割と切実にそんな事を考えていると


「黒崎……。やっぱりお前はすごい奴だよ」


 天道が優しい笑みを浮かべながら突然そんな事を言い出す。


「すごいって……。どこをどう見てそう思うんだよ」


 僕は憎まれ口たっぷりに薄ら笑いを浮かべながら言う。

 

「お前がそんな性格だから……。彼女達はお前に惹かれたのかもな」


「……?」僕はその言葉に首を傾げる。


 いきなり何言ってんだ……? 彼女たちって、山岸さんと万丈のことだよな? あの二人が僕に惹かれるとかある訳ないないっ。……ヤバッ、自分で言ってて悲しくなってきた。


「お前が行動を起こせば誰かがそれに感化されて……。そしてお前の友達になる。二人と友達になれて嬉しくなかったのか?」


 僕は目を閉じて考える……。嬉しくない訳ねぇだろうよ。ずっと一人でいた僕に、特に山岸さんは話しかけてくれたんだからな。嬉しくない訳がない。


「黒崎君の事も、そして私の事も上辺でしか見れないなら人付き合い……ちゃんと、考えたほうがいいよ」


 あぁ……。そんな事を確かに言われていたっけ。


「あの頃の俺は人を見掛けだけで判断してた……。お前みたいに陰気で……しかも悪口ばっかり言ってる奴を俺は見下してたんだ」


 色々と酷い事言ってると思うけどその通りだ。人の第一印象は会ってから3秒で決まるという。僕は出会って速攻で嫌われる事間違いなしだって自負してる。こんな陰気で無口な男を好きになる人間なんていないだろうと。


「実は俺後悔してるんだ……。山岸をとある件で俺は守ってやる事が出来なかった……。だからっ、アイツに変な虫がつかないようにしようって」


 そうだろうな。あの時の天道の顔は失意に満ち、後悔の念をありありと感じられた。それなら僕に突っかかってきたのも頷ける。


「でもお前は固く閉ざされていた山岸の心を開き、それだけじゃなく彼女を変えさせた……だからお前はすごい奴だよ」


 満面の笑みでそんな事を言わないでくれ……。


「前にも言ったが、僕は山岸さんを変えさせたつもりはない。変わったのは」


「山岸さんの意思……だろ?」


 僕が言おうとした言葉を天道が遮っていう。


「あの時山岸に言われた言葉とお前に言われた言葉で、俺は考えたよ……。俺も自分の意思で変わらなきゃなっ!!」


 そう言って天道が立ち上がった瞬間に海辺にいた本城さん達が僕達……正確には天道の名を読んでいた。僕は腕時計を見る……。そろそろ玉泉洞に入る事を予定していた時間帯だ。


 僕は澄み渡る広大な青空を見上げる。もし僕が輪の中から外されていなかったらもっと違う未来が待っていたのだろうか……。丁度空の上を走る飛行機を眺めながら僕はそんなどうしようもない事を考えていた――。

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