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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第三章 結局僕は
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最悪だな

「それで俺達のこの修学旅行におけるテーマだけど」

 僕を含めたこの集団、6人でこの修学旅行のテーマを決める事になり天道が話し合いの進行役を勤めている……予想通りというかなんというか。

 僕は話し合いに参加せずこの集団の話し合いを聞くことだけに専念することにした。


「はいはいっ、あたし海で思い切り遊びたいっ!!」


 勢いよく手を上げておよそ今回の修学旅行の趣旨と違う見当違いの事を勢いよく言い放つ本城。


 僕達が行く修学旅行の場所は沖縄だ。

 なんでも第2次世界大戦の戦争の舞台となった沖縄に触れて戦争が

どれだけ悲惨なものだったか理解してもらおうというのが趣旨らしい。


 僕は本城の意見を聞いて顔は無表情そのままに内心でガッカリする。最悪だ……。話し合いの序盤から脱線事故が起きてしまった。

 

「それいいね」


「俺も水着買わないとな」


 それに同調する他の奴等……そのせいで話し合いは軌道修正の効かない域へと進んでいく。


「ねぇ、由美子ゆみこ。今日水着買いに行こうよ」


 本城に由美子と呼ばれた長い髪をブラウンに染めツインテールにした女の子が笑って答える。


「イイねー、テンション上げみザワー」


 うわあ、どんどんテーマ決め所じゃない雰囲気になっていく……上げみザワーってなんだよ、流行ってるのか? 頭の悪い奴が生み出した造語にしか思えないんだが。


「だめだよ皆……ちゃんとテーマについて話し合わないと」


 手をパンパンと打ちながら周りに目を向け注意する天道。

 

「でも実際海しか楽しむことなくね?」


「それなっ」


 屈強な肉体を持つことで有名な男子……森本もりもとだったか? が答えるとそれに同調する……えーと、チャラい印象を受ける男子……空条くうじょうが片手を前に片手を体にひきつけ両手ともビストルのような形を作り、体を少し後ろに傾けながら同調する。



 ……そのポーズはあれか、有名なジャマイカの元オリンピック陸上選手の決めポーズと受け取っていいのか? 割とファンだから、そのウザいのを即刻止めてほしい。


 天道と視線が合う。彼は僕と視線が合うとニッコリと笑い


「黒崎……君はどうしたい?」と尋ねてきた。


 天道、お前すごいな……。僕だったら自分の事を殴った相手にそんなスマイルで話し掛けるなんて絶対に無理なんだが。


 僕はいきなり振られた事に多少動揺し、それを悟られないよう努めて真顔で答える。 


「そうだな、僕としては鍾乳洞へ行ってみたい」

 

「それはなぜだい?」


 天道が少し意外そうな顔を浮かべながら理由を聞いてくる。


「鍾乳洞は第2次世界大戦が あった当時避難場所として利用された……。だからその場所へ行ってその鍾乳洞の狭さ、暗さを体験すれば当時の人達がどういう思いでそこにいたのか……。少しは理解できるかと思って」


 ま、テーマとしてはこんな所で十分だろう……実際鍾乳洞に行ってみたいという気持ちはある。今は観光名所としてライトアップされてることもあり、鍾乳石が綺麗に光り輝く……。その様を是非とも間近で眺めてみたいものだ。


「うん、良いじゃないか。今回の修学旅行の主旨と合っているからな」


 僕はそれを聞いて思う。 天道……お前は何様だと。さっきから自分の意見もろくに口にしてないじゃないか。そう思った時、本城が手を上げる。


「断固反対〜っ」


 なんともやる気のなさ全開で僕の案を否定してくる。いつもなら、コノヤロウと思うとこだが少し天道の困った顔が見てみたいから許す。


「なら亜希子は何処か行きたいところはあるかい?」


「だから言ってんじゃん……。あたし海行きた〜い」


 なんだろう……。この言い方凄くウザいんだが。

 ……まぁ良い。さぁ天道を言い負かしてやれっ!!


「でも、鍾乳洞は海の近くだよ」


 ニッコリと微笑みながら本城に対し決定的な一言を言う天道。


「えっそうなの? なら良いや鍾乳洞で」


 僕はその興味のなさそうな一言を聞いてガッカリする。それと同時にこう思った。

 僕の馬鹿野郎っ!! なんで、鍾乳洞を選んだんだ……首里城……首里城を選んでいればっ。


「他に異論のある人はいないな」


 天道は周りを見る……が、誰も手をあげない。


「なんか、この日陰者の意見を聞くの癪で嫌だけど当日はあつし……アンタがちゃんと引っ張りなさいよ」

 本城が凄い生意気と感じられる高飛車な態度で天道に言い放つ。

 ……アイツ、敦って名前なのか。初めて知った……。


 天道はその言葉に苦笑を浮かべながらも頷く。


「はいはい、じゃあ今日はここまで」


 天道が頷くと同時にチャイムがなり美紗ねえが、その場にいる全員にホームルームの終わりを告げ足早に教室から去っていく。


 僕も次が体育の為その場を去ろうとすると


「黒崎」と呼び止められる。


 声のした方へ顔を向けると天道が僕の顔をじっと見ていた。


「なんだよ?」


 僕はそっけない態度で言う。

 

「放課後少し話に付き合ってくれないか?」


 僕は一瞬耳を疑った……。お前と話すことなんてねえよっ!? と言いたいところだが、こんな所でまた乱闘を起こす訳にもいかない。

 僕は渋々ながらもその言葉に頷く。


「良かった……じゃあ放課後、この教室で」


 そう笑って天道が言うと、森本、空条と共に教室の出入り口に向かって歩いていく。

 

 面倒なことになったな……彼等の後ろ姿を見ながら昼休み美紗ねえを問い詰めてやろうと心の中で闘志を燃やす僕であった。

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