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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第八章 それは長いかもしれない
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どうかしたのか?

 僕達は各自割り振られた役割に取り組んだ。と言ってもやる事は教師の引率のお手伝いみたいな事で、僕のやる事は生徒達の最後尾で皆がはぐれたりしないようにする事と、具合が悪くなった生徒が出た時即座に対応する役を任されてる。尚、そうなった時の手順は1週間の準備期間の間に予習済みだ。


「……ん?」


 なんだ? 最後尾にいる女の子が皆と距離を取ってゆっくり歩いているみたいだ。しかもその女の子は特徴的な金髪をしていたから、尚の事目立って見えた。


「どうかしたのか?」


 僕はその女の子の元へ歩み寄って話しかける。するとその女の子が振り返ってきて、僕は息を呑む。金髪の女の子の目に感情の一切を感じなかったからだ。いやたった1つだけある。多分この女の子は絶望している……。僕にはそんな風に見えた。

 何に? と言われたらそれは分からない。でも、陰鬱とした女の子の雰囲気から僕はそれを感じ取った。


「……放っといて」


 女の子はそう言うと、前に視線を向け無言で歩き続ける。それでも目の前の大群から少し……いや大分距離を取りながら。

 さてどうしたものかと悩んで大群を見ていたら、こっちに近付いてくる存在に気が付く。


「……奏さん」


「集君、こっちは大丈夫そう?」


 僕はそう聞かれ曖昧な表情を浮かべていると、彼女の視線が金髪の女の子に動いた。


「……わぁ」


 感嘆の声を漏らしながら金髪の女の子を凝視する奏さん。そしてその女の子の隣を並んで歩く。


「ねぇ。私、山岸奏。貴女の名前は?」


 とニッコリと笑いながら尋ねる山岸さん。


「…………」


 でも金髪の女の子は奏さんの問いかけに対して何も答えず無言を貫いている。なんだろう……。去年の僕ってこんな風に映ってたのかな?

暫くして、諦めたのか奏さんは歩調を緩めて僕の元へ帰ってくる。


「どうしよう。集君第2号の登場みたい」


 奏さん、それ色々と失礼だと思うよ? 特に同類扱いされた方が。まぁ、否定はしきれないんだけどさ。


「なんか、心を閉ざしてるみたい……。どうやったら開けてくれるのかな?」


 真剣な顔をして考え込む奏さん。……全くこの人は。


「あんまり、深入りしないべきじゃないと思うよ」


 人の心を開かせようとするのは、決して簡単な事じゃない。寧ろそのまま放っといてほしいっていう人が多い。実際あの子は僕にそう言った訳だし。


「集君の言いたい事も分かるけどね」


 奏さんは僕の言葉に苦笑する。どうやら僕の意見は奏さんには届かないみたいだ。僕は視線をすぐ傍を歩いている金髪の女の子の背中へと向ける。なんか、どことなく後ろ姿が寂しそうに見える。


「少し行ってくるよ。ここお願い」


 僕は奏さんにそう言うと、女の子の元へと行く。


「君、あんまり集団から離れすぎないように」


 僕は役割を遂行するために注意を促してる体で話しかける。


「…………」


 が、それでも女の子は僕の言葉を無視して歩き続ける。集団と距離を取りながら。さてどうしたものか。

 僕は暫く無言で女の子の隣を歩いていると


「放っといて」


 と小声ながらそんな拒絶の言葉が女の子の口から発される。


「そういう訳にもいかないさ」


「なんで? 今日だけの付き合いなんだし、他人にそこまで入り込もうとしないでよ」


 追う……。まぁ確かにその通りなんだけどね。


「でも放っとけない人がいるみたいだからさ」


 僕はそう言って、後ろに目を向ける。すると顔を強張らせてる奏さん。


「……余計なお世話」


 女の子はそう言うとまただんまりの状態になった。

 僕は内心、やれやれと思いながら女の子の隣を歩き続けるのだった――。

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