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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第八章 それは長いかもしれない
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自分の気持ちに

「私……集君に嫌われてるのかな?」


 帰り道、私は徐にそう呟く。


「そんな感じには見えなかったから、大丈夫だとは思うわ」


 凛はそう言うけど、何がどう大丈夫なの? って聞きたくなる。


「あれは嫌ってるというより、戸惑ってるという感じに見えたわ」


「戸惑ってるって何に?」


 私は凛の言葉に首を傾げる。


「そこまでは分からない。でも奏に対してあの態度なんだから、なんとなく察しがつくんじゃないの?」


 私は考える。集君が私に対して戸惑う事ってなんだろう? ここまであんな態度を取ることはあるにはあったけど、あそこまであからさまな距離の取り方はされたことがない。まさか……


「集君、私の気持ちに気付いてるっ!?」


「……なんでそうなるのよ」


 即座に私の考えを一蹴する凛。


「え〜、なら何よ?」


 私は不満な思いを目に込めながら凛を睨む。


「全く……どうして自分の事ばかりに目が行くのかしらね?」


 呆れたようにそう言うと、凛はまっすぐ私を見つめる。


「多分黒崎は……自分の気持ちに気付いたんじゃないかしら?」


 私は凛の言葉に固まる。

 えっ? 自分の気持ちって……どういうこと?


「つまり、自分の恋心に気付いたのよ」


 その言葉が直接頭に響くように聞こえた。

 なんか、鈍器のようなもので殴られた感覚になる。……殴られたことないけど。


「まっ、待って……。つまり集君には今……す、すきな人が居るってこと?」


 私が恐る恐る凛に尋ねるとゆっくりと、それでいて力強く頷く凛。

 えええぇぇぇ〜〜〜っっっ!!! 集君に好きな人っ!? すごい気になるんだけど〜〜〜っっっ!!!


「その相手は誰っ!?」


 私は勢い任せに凛に尋ねる。


「貴女本当に馬鹿ね……」


 凛はそんな事も分からないの? という感じに言う。


「凛は分かってるんでしょ……勿体振らずに教えてよ」


「少しは自分で考えなさい」


 凛はそう言って歩く速度を上げる。

 私はその後ろを付いていきながら考える。

 まさか、皐月……なのかな? 皐月は集君に告白するって言ってた。だから告白されて自分が好きだって気付いた。そうかも。だって、皐月は凛々しいけど、人を惹き付ける魅力に溢れてるもん。だとしたら……。


「私の居場所は……」


 もう無いのかもしれない。

 集君には幸せになって欲しい。もし集君が皐月の事を好きだっていうのなら両想いだって事じゃない。いつまでも、集君に甘えるのも良くないしねっ。

 そうと決まれば、私の出来ることは1つ。私は小走りで凛の元へ行く。


「凛、私決めたっ!!」


「……何をよ」


 私は一拍置いてから口を開く。


「集君が幸せになるよう……全力でサポートする」


 私の言葉に凛は目を丸くし呆然となる。

 私はそんな凛を置いて走り出す。胸に生まれた痛みを誤魔化す為に――。

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