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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第七章 オレの王子様なんだって
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浮かない顔してるね

「……う、ん……?」


 ここは何処だ?

 僕は周りを見回す。すると僕の荷物が置かれている事からここは僕が使う事になっている部屋だと理解する。エアコンが付いていてそこから流れる冷たい風が、ひんやりとしていて気持ちいい。


「集君……良かったぁ!!」


ドアが開けられたかと思ったらそこから奏さんが出てきた。僕は彼女の姿を見て反射的に身構える。


「ちょっ、なによ? 傷付くわね」


 いや何言ってるの奏さん? 僕確か貴方のヘッドロックで気絶したはずだよね? 傷付けられてるの僕だよっ!!

 外に目を向けると青かった空がオレンジ色の空に変わっている事に気が付く。


「もしかして僕……結構寝てた?」


「えーと……、6時間くらい?」


 そんなに寝てたのっ!? その事実にショックを受けていると


「大丈夫だよ。まだ初日なんだからその分遊べば良いじゃない?」


 笑顔で言う奏さん。確かにそのとおりだなと納得する。彼女は僕の寝ているベッドの近くに置かれている椅子に腰掛ける。


「……? なんか奏さん、浮かない顔してるね。何かあったの?」


 さっきから奏さんの顔が笑っているけど、いつもの彼女らしくないように感じる。


「う、ううん。なんでもないよっ」


 無理矢理明るく振る舞う奏さん。


「そっか……。でも何かあったら言ってね。力になりたいから」


 奏さんには色々と世話になったから。彼女に会ってから色々と変わった。心から信頼出来る友達が沢山出来た。前より人に優しくなれたように感じた。それもこれも全部奏さんのお陰だ。

 だから彼女が困っている事があれば力になりたいって常日頃そう思っている。奏さんにはいつでも笑顔でいてほしいってそう思っている。


「ありがとう。でも大丈夫だよ」


 少し寂しさを感じさせる笑顔で彼女が言う。


「そんな事より集君。私のせいでごめんなさいっ」


 頭を下げる奏さんに僕は戸惑う。


「やめてよっ……。頭なんて下げる必要なんてないから」


 僕がそう言うと頭を少し上げて上目遣いに見てくる。


「……怒ってない?」


「……っ」


 僕は奏さんのその仕草に不覚にもドキッとしてしまう。

 潤んだ瞳で上目遣いとか……反則だよ。


「お、怒ってないよ。それにあれは……まぁ、僕が悪かったようなもんだし」


 人の胸をジロジロ見ていたのは悪かったなって思う。それで奏さんが怒る理由はよく分からないけど。


「男の子って……やっぱり胸の大きい子が好きなの?」


「……ぶっ!!」


 いきなりの質問に僕は吹き出す。

 何を聞いてるんだ何をっ?


「いやまあ……男全般はそうなんじゃない?」


「集君も?」


 なんでそこで僕なの?


「どうだろう……。でもあんまり胸の大きさとか気にしないかな」


 大きいのは確かに凄いとは思うけど、あんなの歳を取ったらただの脂肪の塊だ。大きければ良いっていう話じゃない。


「そっか、そうなんだ……エヘヘ」


 僕の言葉を聞いて嬉しそうに笑う奏さん。

 そして僕の顔を見てから


「それじゃ私、そろそろ行くけど……集君もう少し休んでなよ」


 そう言って立ち上がり部屋から出て行こうとするが、扉の前で立ち止まり僕の方に振り返る。


「集君……もしもの話なんだけど」


 重たい雰囲気を漂わせながら彼女がゆっくりと口にする。


「何?」


 僕が問いかけると彼女は少ししてから笑顔で首を横に振る。


「やっぱりなんでもない。今の忘れて」


 そう言って部屋から奏さんが出ていく。

 最初から最後まで奏さんらしくなかったな、どうしたんだろう?

 僕は夕方なのに全然明るい夕焼け空を眺めながらそう思った――。

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