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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第七章 オレの王子様なんだって
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楽しめりゃいいな

「うわ〜スゲーな」


 歩の間の抜けた声が耳に響く。そう言いたくなる気持ちも分かる。目の前に豪邸が広がっているのだから。僕達は神奈川県の葉山という海に面した土地に来ている。事の始まりは4時間前……。


◆◆◆◆


 今日から夏休みか。そう言えば万丈に海に行こうと誘われていたけど、有耶無耶になったみたいだな。さてどう夏を過ごそうか……。僕はそう思いながらベッドでのんびりとしていると僕のスマホからメロディが流れる。ディスプレイを見ると奏さんからだ。

 

「もしもし」

 

 僕が電話に出ると


「集君、唐突だけどこれから神奈川県の葉山って所に行くから。1週間分の着替えを用意して」


「は、はい?」


 ちょっと唐突に奏さん。何言っちゃってるの? 頭どっか打っちゃったのかな?


「どうして急にそんな話に?」


「あれ聞いてなかったの? 皐月から話があったはずだけど」


 僕の脳裏に万丈の言った言葉が過ぎる。


『その、さ……。今年の夏は一緒に海に行かないかっ』

 

 あれか……。分かる訳ないじゃん。デートの誘い方だったぞあの言い方っ!!


「あ〜言ってたね。2人っきりのつもりで誘われたのかと思ってたけど」


「えっなにそれっ!?」


 受話器越しに慌てている様子の奏さん。


「慌ててる所悪いけど僕行く気ないよ」


 海なんてただ日焼けするだけで大してそんな場所じゃない。

 行ったとしても僕は日陰の場所でのんびりしてるのが関の山だな。

 

「断るっ」


 あれ〜? それ僕のセリフだと思うんですけど……。


「僕の拒否権はっ!? というか断られても知らないよ。強制出来ないでしょ?」


 そう言った瞬間にチャイムが鳴る。このタイミングで鳴った事に少し嫌な予感を感じる。


「確認なんだけどさ……家の前に居たりしない?」


「何を言ってるの集君?」


 奏さんの声からは嘘を言ってるように聞こえない。僕は安堵の息を吐く。


「ごめん。お客さんが来たみたいだから少し席を外すね」


 僕はそう言って受話器から耳を外して玄関に向かう。


「はい、どなたで……っ」


 僕は外にいる人物を見て驚く。


「やっと出てきたわね、集君っ」


 そこには笑顔でスマホを片手に持っている奏さん。

 マジかっ……今の全部演技だったのっ!?


「さ、集君……早く準備して行くわよ?」


 そう言って彼女が中に上がってくる。


「ちょっ、何勝手に……あぁっそこの棚開けないでぇ〜っ!!」


◆◆◆◆

 

 結局僕は奏さんに半ば強制的に車に乗せられその後皆と合流しこの場所へと連れてこられた。なんでもここは彼女の育ての親である叔父が所有している別荘だとか。改めて呉島財閥のトップである呉島宗吾に驚愕する。どんだけお金持ちなんだよ……。


「堅苦しそうな場所だが……まぁ、楽しめりゃいいなっうんっ!!」


 豪邸を見ながら深々と頷く歩。

 ほんとお前……肝据わってるよな……と、僕は感心する。


「じゃあ、これから1週間についての打ち合わせするから。中に入ったら各自私が指定する部屋の場所に荷物を置いたら集合ね?」


 手をパンパンと2回打ち付けながら仕切る奏さんの活き活きとした姿を見て微笑む。

 まぁ、僕も皆と楽しめればいいなと別荘から見える海を眺めながらそう思った――。

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