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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第六章 これから変われるよ
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助けてよっ

木下雫の視点でお送りします。

 目を開けると薄暗い部屋……私、木下雫の部屋の中だ。もうずっと学校に通っていない。パパとママは私がここの所学校に行っていない私の事を攻めたりしない。私が中学の時に虐められているのを知ってるから。今何時だろうと思い私は時計を見る。時計は8時50分を示していた。

 もうとっくに明るい時間なんだから、窓を開ければこの薄暗い部屋も光が差し込んで大分印象が変わると思う。でも私はそれが出来なかった。

 私は幼馴染である川崎蓮の部屋と向い合わせになっている窓に目を向ける。私が自分の意志でカーテンを閉めてから4年目になる。あれから4年が経ってるのにあの頃から何1つとして変わっていない。寧ろ悪くなってしまった。

 心の中では普通に喋れるのに実際に喋ろうとすると吃ってしまう。それは多分私が人と話すのを恐れているから。

 櫻井さんを筆頭にクラス全体に虐められて、幼馴染の川崎蓮が私から離れていって私の心は壊れてしまった。櫻井さんに虐められたって私は耐えられた。だって私には()()()()がいたから。だから私は櫻井さんに虐められても平気だっただけど……。

 どうして蓮ちゃん……。離れちゃったの?

 蓮ちゃんが傍にいてくれれば私は……それだけで良かったのに。

 

「……?」


 ピンポーンとチャイムがなる。

 こんな時間に誰だろう? パパもママも皆仕事で出払っているというのに。再度チャイムが鳴る。私はベッドから起き上がり玄関に向かう。またチャイムが鳴る。宗教の勧誘かな? もしそうだったらとっととお引取り願おう。


「ど、どちら様……っ」


 ドアを少し開けた所でガバッと開けられる。

 そしてドアを抉じ開けるように引っ張った人物を見て驚く。


「さ、ささっ……櫻井、さんっ」


 私の目の前には狂気に満ちた顔で私を見ている櫻井さんの姿。

 虚ろに見える瞳が私を捉える。


「ねえ木下……、アンタ生きてる価値あると思ってる?」


 唐突に言う櫻井さんに私は戸惑う。彼女は何を言おうとしてるの?


「生きてる価値があると思ってるのか聞いてるのよっ!! さっさと答えろ愚図っ!!」


 突然喚き立てる櫻井さん。私は怖くなって肩がブルブルと震える。

 

「な……ななつ、ないです」


 ここは素直に相手の求めてる答えを言おう。そう決めて私は吃りながらもそう答えると櫻井さんは厭らしい笑みを浮かべる。


「そう……。そうよね。だからアーシが終わらせてあげるっ」


 そう言って櫻井さんは肩に担いでいる鞄からある物を取り出す。


「ヒッ……」


 私はそれを見て短い悲鳴をあげる。だって……櫻井さんが手にしていたのは()()だったから。


「おとなしくしてね、木下っ……痛くないようにしてあげるからさっ!!」


 私はその言葉が言い終わる前に踵を返して駆け出す。

 こわいコワイ怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いっ!!

 私はリビングに入るとドアを閉めて開かないようにドアノブを握りしめる。


「アハハハッ、木下〜っ? 早く楽になろうよ〜っ?」


 櫻井さんの甲高い声が耳に響く。私はその声を聞いて肝が冷える。

 同時に頭の中で最近のことが思い浮かんだ。

 2年生になって私は友達になれるかもしれない人達に出会った。それだけで私は嬉しいと感じた。だけど……。


『ま、まぁ……。雫と一緒なら頑張ってやるよ』


 素直じゃない私の()()()()()()の姿が脳裏に浮かぶ。

 こんな所に私を見放した彼が来る訳がないのに、それでも心の奥底で求めている。


「助けてよっ蓮ちゃんっ!?」


 私はこの悪夢のような中で目をキツく瞑りながらそう叫んでいた――。

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