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僕のモノクロだった世界が君に出会ってから色付き始める  作者: 高橋裕司
第五章 僕の過去
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久々に来いよ

 万丈が怪我を追ってから3週間が経った。

 あれから藤堂さんから接触してくるような事はなかった。


「アイツ……、あれからクラスに顔出してねえんだよな」


 万丈が忌々しそうに言う。

 そう、あれから藤堂さんは一度も学校に姿を現していない。


「まぁ良いんじゃない。寧ろ厄介事が起きなくて済むんだから」


 肩を竦めながら天道が言う。

 確かに天道の言うとおりだと思う。

 また3週間前のように喧嘩はしたくない。


「それじゃ、オレの気が収まらねぇよっ!!」


 両手で髪を掻き毟りながら叫ぶ万丈。


「万丈、戦闘狂〜っ」


「うるせぇなっ、ほっとけ!!」


 からかってくる本城さんを一蹴する万丈。


「でも学校に3週間も来ないのなら、何故入学してきたのかしら?」


 冴島さんが無機質な声で疑問を口にする。

 確かにその通りだ。

 一体何が目的でこの山龍高校に入学してきたんだ?


「じょ、情報が少ないからっ……か、考えても……い、み無いかとっ」


 木下さんが途切れ途切れに言う。

 僕もそれもそうだなと思い思考を止める。


「ま、なにはともあれ良いじゃないか? こうして毎日ボランティア部に専念出来る訳だし」


 天道の言葉を聞いて僕は嫌な気持ちになる。

 去年の11月頃から始めた部活……ボランティア部。


 と言っても活動は不定期でいきなり招集が掛かる事が多い。

 ボランティアの内容は実に様々で例えば、最初にやった募金活動。

 その他に老人ホームなどでの職員のお手伝い。

 小学、中学生の通学路の見回りなどといった事をさせられた。


「次は何をやるのか……楽しみだなっ」


 コイツ……正気か?

 どうも天道は人の役に立つ行為をするのが好きらしい。


「天道君は昔から人の役に立つ事をするのが好きだったわね」


 奏さんが感慨深そうに言う。


「あぁ。こう……自分の力で誰かを笑顔に出来る事に俺は凄い充実感を覚えるんだ」


「へえ、そうなのか」


 それってつまりお前の自己満足じゃね?

 そう思ったけど黙っておく。

 世の中にはこういう考えを持つ人間を必要としている人間もいるはずだからだ。

 

 天道は誰か困っている人間がいたら間違いなく手を指し出せる人間だ。そんな人間を求めている人間は沢山いるはずだ。僕なんかと違って……。


 放課後になりやる事もないので、僕達は帰り道につく。

 

「なぁ、集……。施設に久々に来いよ。司や施設長もずっとお前に会いたがってるからよ」


 そういえばそんな事を前に言われていたっけ?

 ボランティア部の活動ばかりに目を取られて忘れていた。


「うん、じゃあこれから向かおうか?」


「むー」


 僕の言葉に奏さんが拗ねたような声を上げる。


「どうしたの、奏さん?」


「別に……。私は用事があるから今日はここで帰るね」


「お、なら今日は集を独り占め出来るって訳だな」


 万丈はそう言うと僕の腕に抱きついて、必要以上に密着してくる。


「っ……いい皐月? くれぐれも集君に変な事しないでね?」


「……変な事ってぇ?」


 ニヤニヤしながら、僕の身体にさっきより密着してくる万丈。


「し、知らないっ!!」


 そう言って奏さんは去っていく。

 後姿から怒っていることが十分窺えた。


「さぁて、ほんじゃまっ行くとしますかっ!!」


 僕は笑顔で言う万丈に腕を引かれながら、万丈児童養護施設に向かうのだった――。

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