チートスキル「千里眼」は、最強過ぎて誰も使いこなせない
皆様こんにちは!久しぶりの投稿です。
先日、2月に亡くなった父親の四十九日が無事に終了し、昨年末から続いていた実家の緊急事態にひとまずピリオドが打たれました。
天国にいる(と信じたい)父親に恥ずかしくない人生を送る事は当然の目標ではありますが、いい歳こいて「小説家になろう」に投稿する事が恥ずかしい……などとはミジンコたりとも思っておりませんので(笑)、どうか今後とも宜しくお願い致します。
さて、今回のサブタイトルはこれまでと趣向を変えていますので、「テンプレ的な作品のスキルの使い方に物申すつもりなのかな?」と思われている方が多いかも知れません。
実は今回の主題は小説の視点、すなわち「一人称」と「三人称」についてなのです。
現代の小説は、その殆どが一人称と三人称、どちらかの視点で描かれているという事は、皆様もご存知でしょう。
一人称というのは、いわゆる主人公自身が語り手となって主人公の視点で物語が進行して行く形であり、三人称というのはいわゆる作者様視点から物語を進行させて行く形と言えますね。
一人称の作品には、会話や独白以外の地の文章にも「俺」や「私」等の主語が使われていますが、三人称の作品には対象のキャラクターの名前等、「固有名詞」が主語に使われていますので、その作品がどちらの視点で描かれているのかはすぐに理解出来ます。
「小説家になろう」に投稿されている作品は、どちらかと言えば一人称のものが多いみたいですね。
これはつまり、一人称の利点でもある「語り手への感情移入のし易さ」を活かし、主人公と読者様が一緒に冒険をして、一緒に最強無双して、一緒にハーレムを築いて異世界人生の春を謳歌する……というファンタジー作品や、恋愛シミュレーション的な甘酸っぱさを売りにした恋愛作品が人気、投稿数ともに群を抜いているからなのでしょう。
私個人は、10代から読んでいた小説の視点が殆ど三人称で、一人称の作品は「ダーティーペア」シリーズしかありませんでしたので(笑)、自然と三人称に馴染み、初めてノートの隅に書いた小説もどきも三人称でした。
今回のエッセイを書くに当たって、私が「小説家になろう」に投稿している、エッセイ以外の小説6作品を視点で分類してみた所、一人称が3作品、三人称が3作品と、きっちり2等分されています。
しかしその評価ポイントの平均を算出した結果、三人称視点の作品は一人称視点の作品の、何と2倍以上のポイントを稼いでいる事が判明しました!
10代の頃から三人称に馴染んでいた事もあり、私個人は完全に「三人称向き」である事を認識しましたね。
とは言うものの、一度でも書き手にまわった事のある方なら痛感されていると思います。
一人称にも三人称にも、それぞれ長所と短所があるという事を……。
一人称視点の長所は何と言っても、語り手となる主人公の魅力をダイレクトに表現出来る点。
地の文章にも主人公の思考パターンが記されている訳ですから、好みのタイプの主人公が見つかれば、一緒に作品の世界を旅する仲間として、すぐに感情移入する事が出来ます。
表現や視点にブレが発生しにくいので、新人の作者様も挑戦がし易く、例え作者様の都合で一時休載してしまっても、前後関係を確認するだけで作品の世界観に戻れる為、再開も容易ですよね。
反面、一人称視点の短所は、主人公以外のキャラクターの内面や動きの表現に制限がある点。
主人公が最強で、主人公がハーレムを作れればそれで良いという作品であれば特に問題はありませんが、ヒロインやライバルの魅力にもこだわろうとすると、主人公というフィルターを通さなければいけない不自由が常に付きまとう事になってしまいます。
時折番外編を設けて、ヒロインやライバルの視点から描かれたエピソードを掲載する作者様もいますが、実はそんなエピソードが無くとも読者様各々が他のキャラクターの視点を無意識に考察していますので、作者様の別視点エピソードが読者様の考察レベルを万が一下回った場合、読者様が少しずつ離脱していく可能性もある訳ですね。怖いですね。
そして一人称視点最大の問題は、常に主人公の半径数メートル範囲から物事を動かさなければならない為、話数を重ねて物語のスケールを拡大すればする程、主人公とその仲間達の日常がダラダラと続く流れになる恐れがあるという点でしょう。
物語のスケールを主人公だけに背負わせる事が出来なくなる前に、一人でも多くの読者様が納得出来るエンディングを用意しておく必要がありそうですね。
三人称視点の長所は、主人公以外のキャラクターにもスポットライトを自在に当てられる点と、主人公がいない所でも悪党の狙いや世界観の謎等を仄めかす事が出来る点です。
三人称視点を上手く使えば、物語のスケールを広げても要所要所で展開のスピードを上げ、読者様の興味を引き付ける事が出来るんですよね。
三人称視点の短所で最も陥りやすい問題は、私もやらかす事があるんですが、主人公以外のキャラクターや世界観の設定にスポットライトを当て過ぎて、主人公の影が薄くなる点です。
世の中には主人公が普段目立たず、ここぞという所だけで大活躍する作品もありますが(←妖怪人間ベム)、小説には渋い声優さんの力は借りられません(笑)。
周囲のキャラクターの影響を受けて、主人公がゆっくり成長していくコンセプトがある作品であれば良いのですが、作者様がPVやポイントに一喜一憂せず、必ず完結させるという意地を持てないのであれば、再考が必要となるでしょう。
万が一作品に行き詰まって休載してしまった場合、三人称視点はスポットライトの当て方に作者様のセンスが顕著に現れる為、休載前のテンションとセンスを取り戻す事は容易ではありません。
「再開したら別の作品になっちゃった……」と読者様が嘆く作品は、三人称視点の作品が多い様に感じるのですよね。
さて、こうして一人称と三人称の長所と短所の一例を挙げさせていただきましたが、現実的な問題として、一人称視点に慣れすぎてしまった読者様が、「三人称視点の作品は読むのが疲れる」という理由で三人称視点作品を避けるケースがあるそうです。
近年すっかり市民権を得た、「洋画は吹き替えじゃないと観ない」という理由に似ている様な気がしますね。
私個人としては、作者のエゴさえ抑えれば三人称視点の方が一人称視点よりもずっと簡単だと思います。
しかしながら、「小説家になろう」の中でより多くの読者様に作品を読んで貰うには一人称視点の作品にも積極的に挑戦しないといけないのかな……?と考えた瞬間、私に奇妙なアイディアが浮かびました!
はい、やっと出ましたよ。
チートスキル「千里眼」!
「千里眼」とは、普通の人間には見えない距離の人や物が見えたり、遠く離れた人間の会話や行動を感知する事が出来る特殊能力の一種で、「小説家になろう」に投稿されている作品の中にも、チートスキルのひとつとして取り上げられている事がありますよね。
私はこの「千里眼」をチートスキルとして主人公に装備させる事により、一人称視点の作品でありながら他のキャラクターの内面や行動を主人公が覗き見したり、隣国の敵側の狙いを事前に察知したりする、言わば三人称視点のメソッドを盛り込めるのではないか?と考えたのです!
「小説家になろう」における「千里眼」の扱いが、意外にも遠隔魔法や遠隔攻撃等の「武器扱い」、或いはヒロインの着替えやお風呂を覗くショボいレベルにとどまっていると嘆いた私は、早速チートスキル「千里眼」を語り手としての主人公に活かすコンセプトを探りました。
コンセプトを探った結果、私はひとつの結論を導き出します。
「これは作者様にとっては逆転発想の宝庫だ!……だが、読者様にとっては何の魅力も無い……」
それでは、この結論を説明させていただきます。
語り手としての主人公が「千里眼」を駆使して他のキャラクターにスポットライトを当てると、一人称視点でも主人公以外のキャラクターを深く掘り下げる事が出来ますが、その一部始終を主人公が見てしまう事になりますよね(笑)。
ヒロインが他の女性キャラクターを嫌っていたり、ライバルが主人公への敵意を隠しながら鍛練に励んでいる事を主人公が知る場面を描いてしまったら、冒険の旅はストレスフルでしょう。
主人公が敵側の動きや計画を事前に察知すれば、敵側の野望やプライドを掘り下げる事が出来ますが、敵側の全てが主人公にバレバレ(笑)。
100%勝てると分かっている戦いを事務的にこなす事は、「無双」や「俺Tueee」ではありません。
弱い敵をいじめてスッキリするのではなく、実力を知らずに倒した敵を「え?お前ら弱くない?」とすっとぼけるのが「俺Tueee」の醍醐味なのだと思います。
この、微妙な違いの様に見えて実は「きのこの山」と「たけのこの里」くらい違う作品のあり方に、きっと読者様は呆れてブラウザバックしてしまう事でしょう。
少なくとも、多くの読者様に読んで貰う為に選択する行動ではありません。
しかしながら、この語り手の「千里眼」を逆転の発想と捉えれば、硬派な作者様にとって無限のインスピレーションを与えてくれる可能性は無視出来ませんね。
例えば、仲間の本音も敵の狙いも分かってしまって冒険の意味を探せなくなってしまった主人公は、仲間を遠ざけて孤独に逃げ込み、襲い来る敵に命を粗末にするなと忠告しながらも、忠告を受け入れない敵をやむ無く倒し続けます。
やがて倒した敵の妻や子どもが復讐の炎を燃やして主人公に迫り、主人公は涙と葛藤に慟哭しながらも死ぬ事が出来ず、女性や子どもに手を上げてしまい、孤独な修羅の道へと堕ちて行く……。
どうですか?硬派な作者様!
めっちゃ描きたくないですか?
今回は小説の視点を主題に取り上げました。
色々と述べさせていただきましたが、視点に関しては作者様が得意な方を採用すれば良いと思います。
チートスキル「千里眼」を使って、新たな語り手の可能性を広げるのもありだと思います。
ただ、先人の作者様が示してくれていた「千里眼」の使い方が、「小説家になろう」における正しい使い方だという事が良く分かりました。
ヒロインの着替えやお風呂を覗くレベルの使い方も正し……くっ……正しい使い方だと……わ、分かりました……(←佐藤浩市に苦味走った表情で言って欲しい)。
チートスキル「千里眼」は、最強過ぎて結局誰も使いこなせないのです。
それではまた次回!




