「心の底から好き」と言え！
唐突ですが、皆様はこの「小説家になろう」サイトは好きですか？
私は大好きです。
作家のはしくれとしてのプライドもあり、どうにかして上手い事を言ってやろうとも考えるんですが、結局「大好き」としか言えませんね。
このサイトには半年前に来たばかりなんですが、少なくともネットの世界でこんなに面白い場所は他にないと思っています。
「小説家になろう」サイトが、何故これ程までに面白いのか？
それはひとえに、文章表現の中にその作者様・読者様の全てが表現されてしまっているからであると考えます。
「表現されてしまっている」と記した様に、作者様・読者様自身のセルフプロデュースを超えた感情や意地が伝わってしまっている訳なのですよね。
まずは作者様の作品です。
これは当然「小説家になろう」サイトの看板でもある為、その数は尋常ではありません。
高ポイント作品、公募選考作品に書籍化のチャンスが与えられるとは言え、その一握りの栄光の存在を考慮しても異常な程の作品数ですね。
これらの作品群は、娯楽小説のお約束事満載のテンプレ的作品を始め、作者様の願望や欲望、又は「ウケる為に読者様の願望や欲望を先回りして表現しておきたい」という作者様の願望や欲望に満ち溢れております。
Web小説という形式上、気軽に読めてストレスを解消したり、自分の未来を前向きに捉えられそうな気持ちになれる、そんな作品が受けるのは当然と言えますね。
一方私の作品には、幸せや不幸が特にドラマティックには描かれておりませんが、それも私自身の願望や欲望の形。
つまり、紆余曲折を終えてある程度自立しているキャラクター同士が、自分の願望や欲望の為以外にも戦う事が出来るかどうかを表現した作品であり、テンプレ的な作品に飽きた方、テンプレ的な作品を卒業された方に読んで欲しい作品なのです。
私はランキング上位で人気の作品と争うつもりは全く無いので、テンプレ的な作品に夢中の読者様に対して、貴重な時間を割いてまで私の作品を読んで欲しいとは言えませんね。
多分時間の無駄になるでしょう。
私に出来る事は、いつかテンプレ的な作品以外を読みたくなった読者様の鑑賞に耐えられる様な作品を、1年後も2年後も書き続けている事なのだと思います。
次に挙げるべきは、読者様の感想と作者様の返信で構成されている感想欄ですね。
これも、もう作品と言っても過言ではありません。
愛情溢れる読者様の応援から、どう見ても悪意しか無い誹謗中傷、はらわたの煮え繰り返りを抑えた紳士的な感想、更には作者様の謙虚な返信から自信が過信に変わったマウント返信まで、ある意味「小説家になろう」ユーザーの才気が最も発揮されている場所と言えるでしょう。
そして、作者様の活動報告にも注目して欲しいですね！
フレンドリーな活動報告をまっとうされておられる作者様、内なる怒りや不満を爆発させておられる作者様、エッセイの予習や感想を自分なりに練り上げられておられる作者様等、活動報告はインスピレーションの泉です。
更に更に、ユーザー様のマイページに並べられたブックマークやお気に入りユーザー様のリストも注目ですね。
私自身は、面白い作品があるという理由だけではユーザー様そのものをお気に入り登録は致しません。やはり人柄と言うか、フィーリングが合う方といった理由が大きいと思います。
また、ブックマークしている作品も面白い作品だと評価しているとは限りません。
タイトル・サブタイトルのセンスに惹かれて、時折参考にさせていただく為にブックマークしている作品もありますし、この作者様の文体「だけ」が好きなんて作品もあります。
また、お気に入りユーザーに登録すると、新作更新等は常に表示されるので、親しい作者様の作品で高評価をしているにも関わらず、ブックマークはしていない作品も盛り沢山。
私がブックマークしている作品を当たっても、私の作風とは何の共通点も無い作品が沢山ある事を御了承下さい。
この様に、「小説家になろう」サイトはあらゆる読み物が満載されており、レベルが高いかどうかは別として、作者様・読者様の感情や「人間の意地」も満載。かつ、ユーザー様のセルフプロデュースをはみ出してまでもポジティブ・ネガティブの一方向に感情が偏らないという点で、ネットの世界では他に類を見ない程の面白さを誇る、一大エンターテイメント・サイトであると断言出来るのです！
とは言うものの、世間一般での「小説家になろう」サイトの印象は恐らく、
「アマチュア作家の創作と発表の場だけど、願望や欲望が前面に出過ぎた内容の薄いライトノベルが主流だから、ここで作品を書いたり読んだりしている人に余り良いイメージは無いな」
というものであると思います。
これは事実だと思いますし、残念ながら正しい認識であると言えますね！
私は読者として、「小説家になろう」サイトに於けるテンプレ的な作品は殆ど読みませんし、作家としてもそういった作品は書いていませんが、それでも自分の作者や読者としての姿勢が、世間一般からは良いイメージは持たれないであろう事を自覚しています。
私は年齢的にはおじさんであり、その点を考慮すれば、「小説家になろう」サイトが「大好き」と言えてしまう事が世間一般から認められる事など、そうそうあり得ないからですね。
私の様な「いい歳の大人」は、この「クソッタレな現実(笑)」に怒りをぶちまけるより先に、世間一般の方から「偏見を持って悪かった。お前の考えは間違っていない」と言わせる為の努力の方が重要なのです。
こんな事を書いてしまうと、「大人がなろうで活躍するにはプロになって黙らせるしか無いのか？」とか、「大人なんだからシリアスな文芸大作を書かなければダメなのか？」みたいにツッコミを入れて来る方も多いかと思うのですが、そんな必要はありません。
「小説家になろう」サイトの作品を読む事、自分の作品を創作する事、他の作者様を励ます事、読者様の感想に感謝する事、誹謗中傷とは戦う事、創作仲間・読者仲間を作る事……これらの全てを全力で楽しみ、そんな自分を「心の底から好き」だと言う事を証明し続ければいいのです。
『偏見ばかりで話の通じない奴等が嫌い、自分達の世代を差別する奴等が嫌い、クレーマー読者が嫌い、有名作品パクリで高ポイント獲得と書籍化する作者が嫌い……』
これらの感情は私にもありますし、皆様も無理してこの感情を隠す必要はありません。
しかしながら、怒りで我を忘れてTwitterでヘイトコメントして書籍化が打ち切りになってしまったり、昼休みに読んだネガティブな感想にムカムカしている間にカップ焼きそばのお湯を捨て忘れてしまう事は不幸だと思いませんか？
ここは穏やかな笑みを浮かべた「心の底から好き」な自分の隙間から、我慢出来なくなった時だけ時折ブスリと刺しにどこかに降臨した方が断然効果的です。
そして何より、「心の底から好きな事」をやれている作者様には不必要な怒りや嫉妬が入り込んでいる形跡や描写が無く、誹謗中傷目的の読者様も傷をえぐるポイントがなかなか探せなくて無意味に作品を熟読してしまい、ファンになっちゃいそうで悔しいから離れて行くものなのですよ！
最後に、私が先程嫌いな例に挙げていた「有名作品パクリで高ポイント獲得と書籍化する」作者様ですが、御本人様がそれを「心の底から好き」と言えるのならは、勿論全然大丈夫なんですよ。
パクリを駆使して短期サイクルでの成功を狙う事が「心の底から好き」なのであれば、そのヤバく穏やかな笑みは読者様に伝わり、「こいつの作品パクリばっかりだよな〜しょうがねえな〜」と、パクリ元の作者様もいずれ呆れて地位を確立出来るはずです。
当然の事ながら、「パクリを駆使して短期サイクルでの成功を狙う事」が心の底から好きなのであれば、ゴジラ付き石油コンビナートとも言われるSNS等は絶対にやらず、常に低姿勢で周囲からイジられる覚悟を持ちましょう。
常に低姿勢であれば、世間はやがて「こいつと契約する出版社の方がおかしいよな？」とディスり先を変え、自分をプロにしてくれた恩人がディスられているのに何故かメシウマなけしからん作家特有のテンションにより作家様の潜在能力が引き出され、パクリから卒業出来る可能性がありますからね！
如何でしたか？
「小説家になろう」の魅力を、運営の方々が全く意図しない角度から分析させていただきましたが、皆様やっぱりこのサイト大好きですよね？
エッセイでの「なろう論争」はいつでも賑わっておりますし、皆様の嫌いな作者様の作品が更新されたら、何故か必ず読みに行きますよね(笑)？
最後はギスギスした話題もほのぼのギャグに変えるマジックワード、「心の底から好き」と言え！でこのエッセイを締めさせていただきます。
ありがとうございました！
