読者には、大量のポイントで作品と作者を持ち上げ、書籍を買わずに作者を路頭に迷わせる権利がある
皆様今晩は!
お久し振りの『唯我独尊』です。
今回のサブタイトルは、やや攻撃的に見えるかも知れませんが、これは決して炎上狙いの煽りではありません。
元来私は作者側の視点から、読者の姿勢よりは圧倒的に作者の姿勢にものを申して来ましたからね。
今回のサブタイトルが意味する所は、この「小説家になろう」サイト(以下「なろう」)の作者側ユーザー様の多くが目指す「ランキングを駆け上がって書籍化する」という行為に、密接に関係している読者や出版社の立場から見た現状です。
「なろう」におけるランキングの評価は、★1つあたり2ポイント、最高★5つによる10ポイントの「評価ポイント」と、読者1人あたり2ポイントのブックマークで構成されていますね。
一般的な定説では、書籍化を視野に入れるには最低でも10000ポイントを超えなければいけないらしく、その為には大量のPVを稼いで読者を招き入れる、「人気ジャンルの日間ランキング上位」に入らなければいけない……という仕組みです。
とは言うものの、作品を出版する出版社の視点に立てば、その作品の定期読者の目安になるブックマーク5000での10000ポイントという評価であれば、例え魅力的な作品であっても書籍化に踏み切る訳には行きませんよね。
ブックマークが5000であったとして、「なろう」以外からの新規読者が呼びにくい初巻発行時に、5000冊の書籍が売れる事はまずあり得ません。
加えて、ブックマークはしていても評価ポイントが入らなければ、その時点で「面白い作品」なのではなく、「面白くなるのを待っている作品」という事になりますから。
また一方で、評価ポイントが10000あってもブックマークが2000の14000ポイント作品であった場合、出版社は書籍を購入してまで読みたい作品なのか判断に悩むでしょう。
「面白いけど、Webサイトで1回読めばいいよ」という作品であるかも知れませんからね。
読者、出版社ともに理想的なのは、ブックマーク数が十分にあり、尚且つ評価ポイントが更に多い作品です。
例えば、総合100000ポイントで、ブックマークが10000→20000ポイント、評価ポイントが80000ポイントの作品ですね。
これは即ち、10000人の定期読者が全員★4つの評価をした作品という計算になり、仮に書籍化して10000部までは売れなくても、続刊で更なる伸びが期待出来る作品と言えるでしょう。
しかし、このレベルの作品は、近年の「なろう」では少なくなってきました。
ブックマークで得たポイントに、評価ポイントが負けている作品を書籍化しても、第1巻の売り上げが悪いとプラスの判断材料が無く、目先の利益に奔走せざるを得ない出版社に打ち切りの理由を与えてしまいます。
ここで冷静な分析をしてみましょう。
現時点での「なろう」月間総合ランキング1位の作品の総合ポイントは、130000ポイント近くあり、ブックマークは30000近く、評価ポイントは80000近くあります。
これはつまり、60000近いブックマークによるポイントを超える評価ポイントが付いている事となり、内容に関してはユーザー各々の好みがあるものの、かなり理想的な評価と言えますよね。
このレベルの作品であれば、仮に1巻で打ち切りの憂き目にあったとしても、出版社の第1版による利益は約束されていると思われ、作者が望むか望まないかはともかく、出版社から声は掛かるのではないでしょうか?
しかしながら、冷静に評価とブックマークを照らし合わせてみると、約30000人の定期読者が入れたと仮定するポイントの平均値は★2.7前後です。
当然、熱心な読者や作者のファンはもっと高ポイントを入れているはずで、これはつまり、ブックマークはしていても評価をしていない読者や、作品が気に入らず★1つや★2つを敢えて投入した読者も多数存在している事を意味しています。
この作品は、現在感想欄を閉じています。
この作品なのか、それとも以前の作品なのかは分かりませんが、この作者様の作品に対して、ブックマーク代わりに投入した★1レベルの低評価を入り口に、何度も批判的な感想を書き込みに来る少数のアンチ的読者の存在が、作者様のメンタルを傷付けてしまったのかも知れません。
誤解の無いように付け加えさせていただきますが、この作品の作者様は、非常に好感の持てる方です。
作品に関しても、私の好みとは違いますが、悪質なアンチが湧く様な作品ではないと思います。
そもそもこの作者様は、書籍化に執念は無く、自分が楽しみながらランキングを極める事に成功した可能性もあります。
それでもランキングからの書籍化には、自身に悪意を向けた読者の力も借りなければいけない現実があり、出版社も作者の姿勢など全く考慮してはくれません。
最近、一部作者の側から「つまらなかったら★1つ」と要求する動きが物議を醸しましたが、私としてはやっぱりこの行為には反対ですね。
この行為は、読者が持つ最強の権利である、「大量のポイントで作品と作者を持ち上げ、書籍を買わずに作者を路頭に迷わせる権利」を与え、それを推奨してしまうからです。
私は未だにブックマーク100を超えた作品の無い底辺作家ではありますが、自分への自信は過剰に持っています。
自分がNo.1だと言う持論を疑った事はありませんし(笑)、評価が散々でも自作の出来が悪かったと思った事はありません。
ですから、どんな手を使ってでも書籍化すれば、自分はどうにかプロ小説家としてやって行ける……という作者がいてもおかしくありませんし、その位のふてぶてしさも時には必要だと思います。
とは言え、作者側がこの権利に依存してまでも、ランキングからの書籍化に邁進する行動力があるのならば、堅気の仕事で絶対先に成功しますよ。
Webの世界だけにとどまらない、本物のリスペクトを得て、承認欲求なんてちっぽけな言葉は軽々と満たす経験を手に入れられるはずですよ。
以前このエッセイで述べた様に、「なろう」に来た当時の私は、原因不明の体調不良による療養休職中でした。
私の職場は小さな介護施設でしたから、そんな理由で長期の休職が許されるはずも無く、失業の不安を抱えながら執筆に没頭し、ランキングや評価の仕組み、サイトの傾向も知らないまま、書籍化への糸口を探っていた様に思えますね。
体調が回復してからは、約1名からの壮絶な嫌味やパワハラに耐えてどうにか信頼を回復し、見かねた施設長の配慮によって異動、相性の悪い約1名と顔を合わせる事の無い仕事に大いにやりがいを感じて奮闘しています。
40歳をとうに過ぎ、転職にして8回目、ようやく今までで1番と言える仕事に巡り会えた私。
今の私の目標は、「なろう」の扉を開けた頃の「嫌な堅気の仕事から逃れて、好きな事を仕事にする」では無くなりました。
今の私の目標は、「今の仕事をやれるまでやり、創作活動は自分のやりたい様にやる。でも、それは暇潰しや趣味のレベルでは無く、自分に嘘が無い事をひと目で分からせる程に本気でやる」という事です。




