最悪の告白
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森で育った田舎娘へ
あんたのおかげで回復できちゃった
本当にありがと♡
あいつの顔を見たくないから出てくわね
昨日はあんたの反応が可愛くて
色々からかっちゃったけど
もう二度と会うことはないから安心して
最後にちゃんとサインしておくわ
そうそう、あたしの大事な髪!
野蛮なあいつがどこかに隠してると思うの
あれはすっごく貴重なの! わかるでしょ?
好きに使ってもいいから、その代わりあたしを探そうなんて思わないでって伝えといて!
マジであいつのこと思い出すだけで頭がおかしくなりそう
でもあんたはあんなのがいいんでしょ?
身分差とか考えてたら馬鹿らしいわよ
早くやることやっちゃいなさいな♡
一日早いけど素敵な誕生日を!
お幸せに♡
ロクセラーナ
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ラウラの顔は真っ赤になっていた。
読み上げると言った手前、途中でやめるわけにもいかず、かといって読み飛ばすわけにもいかないと思い、結局全部声に出して読んでしまった。
繊細で美しい文字で書かれた内容が、こんなことだなんて……。
しかも署名の横には、露骨なキスマークまでついてる!
ラウラは横目でフィデリオを見た。
最初こそ軽く相槌を打っていたフィデリオも、途中からは無言のままだ。
いたたまれない空気に、ラウラはテーブルから顔を上げられずにいた。
「……以上です」
「うん……ありがとう」
気まずい沈黙が二人の間に流れる。
ラウラはテーブルを見つめたまま、フィデリオも何を言えばいいのか分からない様子で、時折咳払いをしている。
この最悪な空気の中、ラウラはロクセラーナの最初の一文が気になっていた。
私のおかげで回復ってどういうことだろう……。
ロクセラーナと話した内容は、彼女の過去や魔力に関すること。
あとは、フィデリオ様のことを冷やかされただけ……。
「あれ?」
「どうしたんだい?」
ラウラはすぐに答えることができず、口元に手を当てて考え込む。
頭の中には、ロクセラーナとの面会で感じた微妙な違和感が甦っていた。
最初にロクセラーナと会った時、彼女の髪は肩くらいで揺れていたはず……。
その姿が、どんどんぼやけていく。
ロクセラーナは恋愛話が好きだと言い、私の狼狽える姿を見て楽しんでいた。
その後も、彼女のほうからフィデリオ様の話題を振ってきた。
悪態をついて、表情をころころと変えていた小さな女の子。
にやにや笑うロクセラーナが、長い髪をはらった瞬間を思い出すした。
「あっ!」
「ラウラ?」
フィデリオは不安そうに、魔女の手紙とラウラの顔を交互に見つめている。
ラウラは両手を握りしめた。
そうだわ、私は何かおかしいと感じてたのに、はっきりと掴めてなかった。
まさか、そういうことなの?
ロクセラーナの声の調子や体の大きさが、まるで何かを吸収するかのように変化してた……。
もしかすると、私のフィデリオ様への想いや、嫉妬や不安といった感情が、彼女の魔力回復を助けたのかもしれない……。
今になって考えれば、ロクセラーナの言動はあまりにも不自然すぎた。
フィデリオ様のことを「あいつ」と呼び、嫌悪感を見せながら私に婚約の話を教えてきた。
彼女の姿や行動に、もっと注意を払うべきだった。
ああ、私ったらなんてことを……最悪だーーー。
ラウラは唇をぎゅっと結んだ。
ロクセラーナがいなくなったのは、間違いなく私のせい。
そのことをフィデリオ様に言わなくてはいけない……。
魔女に流されてしまった自分が、嫌になってしまう。
さっきの魔女からの手紙で、私の想いには気付いたはず。
ううん、もうずっと前から私の気持ちなんてバレていた……。
フィデリオ様は大人だからこそ、今まで何も言わずに普通に接してくれてた。
それなのに、こんな形で告白することになるなんて……。
ラウラは握りしめた手をゆるめ、小さく息を吐いた。
「フィデリオ様、ロクセラーナの魔力は私のせいで回復したんだと思います!」
「んっ? どういうことだい?」
薄明りの中、フィデリオは眉をわずかに寄せた。
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