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81.日焼け止めクリームを塗るだけなのに……

「じゃあそろそろ行こうか」

「うん!」


 僕の言葉にサラが元気に返事した瞬間、サラが思い出したように口を開く。


「あ、その前に日焼け止め塗り直していい?」

「もちろんいいが、日焼け止めはロッカーの中じゃないのか?」

「それは大丈夫よ。サラお願いするわ」

「はいはい」


 サラは雑な返事を返し、いとも簡単に日焼け止めクリームを生成。

 リアはそれをすぐに受け取り、何故か僕に対して上目遣いをしながら口を開く。


「ねぇゼロ、日焼け止め塗ってほしいんだけどいい?」

「は? いつもサラに塗ってもらってるんじゃないのか?」

「実はサラって日焼け止め塗るの下手でねぇ~」


 リアはそう言いながら横目でサラに冷たい視線を向ける。

 それに気付いたサラは自然に目を逸らした。


「で、塗ってくれるよね?」

「嫌と言ったら?」

「拒否権はないわ」


 最初から答えは一つかよ。

 てか、答えが一つの問いなど、もうそれは問いではないぞ。

 というわけで、仕方なく重い口を開ける。


「はぁ……分かったよ」


 僕は重いため息をつき渋々そう言うと、リアは僕の手を掴んで芝生エリアのようなところへ連れて行く。

 芝生に到着すると、リアは手に持っていた日焼け止めクリームを僕に渡し、太陽の光を浴び黄金に輝くサラサラの長い髪をヘアゴムで二つに結ぶ。

 その後、「ふぅ~」と息を吐きながら芝生の上でうつ伏せに寝転び、慣れた手付きで自分のビキニの紐を外した。


「お、おい、こんなところで脱ぐなよ」

「な~に? 別にこの状態だと見えないでしょ?」


 煽る口調そう言ってくるリア。

 完全にからかっているという感じだ。


「まぁそうだが……」


 実際、仰向けなので見えてはいない。

 だがしかし、横乳がこんにちはしている。

 礼儀正しくお辞儀までして。

 普通に言うと、胸が地面にベチャってなっているのだ。

 水着耐性を手に入れた僕でも、流石にこの横乳に関してはまだ耐性がない。


 それにしても、胸とは体の部位の中で一番変形が得意だと思う。

 普段はスイカという感じなのに、今の角度からだと完全にお餅だ。

 それも上にミカンが乗っているお餅。

 変形する形によってまた新たなエロさを感じる。

 全く、女の胸とは男にとって厄介な敵だな。


 そんなことを考えていると、うつ伏せ状態のリアが話しかけてきた。


「何ダラダラしてるのよ。早く塗ってよね」

「あ、ああ」


 少し動揺しながらも、僕はそう返事を返して日焼け止めクリームを手に乗せる。

 そして横乳から視線を逸らし、綺麗な背中を改めて見て息を呑み、覚悟して手で一度広げた日焼け止めクリームを背中に塗り始める。


「きゃっ! ちょ、塗る時は一言ぐらい言ってよ!」

「悪い、悪い」


 頬を分かりやすく膨らますリアに軽く謝り、背中の中央から外側へ円を描くように塗っていく。

 触ってみて始めて知ったが、リアの背中は思っていた以上に柔らかくてプニプニ。

 手触りも良く心地良い体温を感じる。


「あぁっ、いいわよ。あっ、私、そこは……く、首は敏感で――」


 プニプニの背中を一通り塗り終わり、髪を手で少し横へ移動させて次は首を塗っていく。

 本当に首は敏感らしく、リアの口から出る吐息には色気を感じた。

 腕の方はさっと塗り終え、最後に脚へ。


「い、今お尻触ったでしょ!」

「違う違う、触ってはない。当たっただけだ」

「それは同じよ!」


 少し涙目でこちらを見ながらそう言ってくるリア。

 これではなんか僕が悪いことしたみたいじゃないか。

 もうそんな視線を向けないでくれ。


 と思いながら、僕は言い訳を始める。


「いやだって、水着からその……半分ぐらい出てるからさ。一応塗るべきかと思って……」

「なっ! それは言わなくていいの! もういいわ! 早く脚を塗って!」


 やっぱり怒られた。

 言い訳なんかするものじゃないな。


「きゃっ! だから、塗る時は言ってって言ったでしょ!」

「悪い、忘れてた」


 また怒られた。

 サラもこんな感じで怒られながら塗っていたのだろうか。

 そう考えるとなんか可哀想だ。

 怒られながら塗った上に、下手とまで言われて。

 さっきリアに下手と言われた時、サラが視線を逸らした理由が何となく分かった気がする。

 まぁ僕も怒られるのはもう懲り懲りなので、さっさと塗り終わらすとするか。


 数分後、日焼け止めクリームを塗る作業は終了。

 僕は「はぁ……」と大きく息を吐き、額の汗を手の甲で拭う。


「まだ終わってないわよ」

「まさか前もやらす気か? それはちょっと――」

「ち、違うから! その……ビキニの紐を結んでほしいの!」

「あー、分かった。分かったからさ、そんなに上体を起こすな」


 僕は目を逸らしながら、そう言うとリアは「はっ!?」と言い、頬を朱色に染めて静かに上体を芝生に付けた。

 それを確認してから僕はリアの水着の紐をしっかり結ぶ。

 今日はスライダーとかあるからな。


「よし、できたぞ!」

「あ、ありがとう」


 リアはまだ恥ずかしいようで、顔を下に向けたままそれだけ口にした。

 やっとリアに日焼け止めクリームを塗るという作業が終わってホッとしているのも束の間、背中をちょんちょんと突かれる。

 振り返るとそこには少し膨れたサラの姿があった。

 僕はその姿を見て首を傾けるとサラが口を開く。


「あたしも塗って」

「また僕が塗るのか?」

「今のリアの状態では無理。それにあたしも自分で塗れない」

「分かった分かった。僕が塗るよ」


 リアが平常心を取り戻す時間も稼げるし、サラの胸なら別にその「横乳が!?」とかならないと思うしな。

 いくらバストアップしたからと言っても、リアの胸とは比べものにならない。

 まだまだ可愛いものだ。


 僕は先ほどの失敗を踏まえて、塗る前に口を開く。


「じゃあ、今から塗るからな」

「うん」


 真っ白な背中に見惚れながら中央から外側へ円を描くように手を動かしていく。

 リアの背中とは違って少し筋肉質。だけど、女の子特有の柔らかさはちゃんとある。


「あぁっ! ああぁぁぁぁあ!」

「うるさいぞ。てか、棒読みで喘ぎ声を出すのは止めろ!」

「リアの真似をしてみたんだけどダメ?」

「いや、リアはそこまで棒読みでもないし、ずっと叫んでもいない」

「そっか。ならもう少し頑張る」

「いや、もう黙っておいてくれ。こっちが恥ずかしいから」


 恐らくサラは軽く喘ぎ声を出しているつもりだと思うが、僕の感想としてその喘ぎ声はただの狂った声である。

 いや、そう思っているのは僕だけではないだろう。

 周りの人たち全員が思っているに間違いない。

 それどころか狂ったヤバい奴と思われている可能性だってある。

 だから、とにかく黙っておいてほしい。

 普通に恥ずかしいから。

 周りから「クスクス」という笑い声が聞こえてくる気持ちが分かるか!


「あぁ!?」

「もう喧嘩売ってる感じになってるぞ。てか、止めてくれ」

「あ、あ、あ、あ、ああああ」

「それは昔のロボットだ。ツッコミ大会じゃないぞ!」

「あたしにはダメみたい」


 最初からそう言ってるだろ。

 サラが意図的に色気を出すなど想像も出来ないわ。

 そんな酷い喘ぎ声のような狂った声をツッコミながら、サラの方も無事に塗り終わった。

 ちゃんとビキニの方も直し完璧。


「はい、終わりだ」

「えっ、前は?」

「いや、それは自分でやれよ」


 そんな本気で驚かれても困る。

 どこの誰が前の方も日焼け止めクリームを塗るんだよ。

 しかも、こんな公共な場で。


「はぁ……分かった。あたしが自分で塗る」


 そんなあからさまに悲しんでも無駄だ。

 というか悲しむな。

 僕が悪いことをしているみたいになるだろ。

 全く、サラの常識外れは相変わらずだな。

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