68.夕食後の雑談
「さっきは悪かったな」
「別にいいですけど、ボクが一人でほとんどやっているので時間は守ってほしいです」
「本当にごめんね」
「ごめんなさい」
僕たちはしっかり反省し、ココに向かって謝った。
ココもあまり客である僕たちにごちゃごちゃ言う気はないようで、すぐに笑みを作って「では、料理を持ってきます」と言ってキッチンの方へ。
数秒後、すぐに出て来てトレイに前菜と思われる料理を乗せながらこちらに歩いてくる。
そして丁寧に僕たちの前にその料理を置いた。
「うわぁ~、何これ! 凄い! 凄いっ!」
サラのテンションがかなり上がっている。
飛び跳ねていないのに、飛び跳ねてるように見えるぐらいテンションが高い。
「喜んでもらえて良かったです。それではボクは他の料理の準備があるので」
それだけ言うと、速足でその場を後にした。
「ゼロ、他にも料理があるの?」
「ああ、コース料理ってやつで他にも料理たくさん出てくる」
「それは楽しみ。じゃあ、いただきます!」
もう我慢の限界だったのだろう。
サラはすぐにナイフとフォークで料理を食べ始める。
「ふわぁ~、美味しい!」
本当にサラの食事風景は見ていて飽きない。
何を食べても新たな驚きをあるみたいで、美味しいということを顔で表現するのがとても上手い。
いや、勝手にそんな顔になるのだと思うが、それでも凄く美味しそうに見える。
「じゃあ、私たちも食べましょうか」
「そうだな」
サラの幸せな表情を見たリアが幸せそうに僕に向かってそう言い、僕とリアも「いただきます」と一言呟いてから料理を食べ始める。
数分後、最後のデザートを残しコース料理を全て完食した僕たちは雑談をしながら、最後の皿を待っていた。
「今日最後の料理は抹茶ゼリーの黒蜜かけです」
ココは僕たちにそう料理名を言い、その料理を慣れた手付きで僕たちの前に置いて行く。
相変わらず最後までお洒落な料理だ。
抹茶ゼリーは深い緑色に計算されたような長方形。
その上から滝のように流れる黒蜜は光を反射させ輝きを放っている。
とても幻想的で食べのが惜しいぐらいだ。
そんな感想を抱きながら、抹茶ゼリーの黒蜜かけに見惚れいるとリアが口を開く。
「ココ、今日の仕事はこれで終わり?」
「そう、ですね。後は洗い物をするぐらいです」
「なら、一緒に話でもしない?」
「グループで仲良く話している場所にボクが入ってもいいんですか?」
「もちろん」
僕とサラはそのリアの言葉に続き、少し頬を緩めて頷く。
「じゃあ、ボクも色々聞きたいことがあるので、話に参加させてもらいます」
前と同じようにココは空いている椅子を持って来て腰を下ろす。
同時に自然と話を始めた。
「今朝は大丈夫でしたか?」
「まぁ一応ね」
リアが苦笑いしながらこちらに視線を送る。
その目は僕に「ココにグループ戦のこと話す?」と聞いているようだった。
正直、グループ戦というものはあまり他の人に対して話すことではないだろう。
だが、僕たちはまだGレイヤーに来て日が浅い。
少しでもGレイヤーの情報や普通というものを知るには、グループ戦の話を出すのもいいかもしれない。
そう思い、僕は口を開く。
「実はな……今朝、急いでいたのはグループ戦があったからなんだ」
その発言にリアとサラは少し驚いていたが、何も突っ込んではこなかった。
恐らく僕に何か考えがあるのだと察したのだろう。
これは二人が僕のことを理解し始めた証拠だな。
そう嬉しく思いながら、ココの言葉を待つ。
「ぐ、グループ戦ですか?」
「そう。Gレイヤーではグループ戦は日常茶飯事か?」
「いえ、このGレイヤーではあまりないですね。むしろ、珍しいぐらいです」
「珍しい?」
「はい。Gレイヤーにはたくさんの娯楽スポットがあるので、争いより皆さんそちらで遊ぶことを優先されていますから」
なるほど。
確かにGレイヤーにはIレイヤーとは比べ物にならないぐらい娯楽スポットが多い。
そう言えば、Iレイヤーに娯楽スポットなどなかったか。
まぁとにかくGレイヤーには娯楽スポットがゴロゴロある。
例えば、海、湖、プール、水族館、ショッピングモールなど。
本当に地球で言うリゾート地だ。
しかし、そうなるとやはり僕たちがいきなりグループ戦にあったのは不可解だ。
流石に『運が悪かった』という理由では片付けられないだろう。
「あっ、そうだ。サラ、何でダックスについて行ったんだ?」
ふとそう思い、僕はサラに問う。
すると、サラは抹茶ゼリーを美味しそうに呑み込んでこう言った。
「美味しいもの奢ってくれるって言ったから」
「「おい、それ子供の誘拐じゃん」」
思わずリアと言葉がハモってしまった。
それよりもまずは「流石サラ!」と言わせてほしい。
以前、サラならそんなことがあるかもしれないと思っていたが、まさか実際に起きることになるとはな。
子供から目を離せない親の気持ちが分かった気がする。
「いや、三人はナンパって言ってた」
「「それがナンパなら誘拐もナンパになるよ」」
またまたリアと言葉が重なり、加えて連続ということもあって思わず二人で笑みを浮かべる。
「まぁそれはいいとして何か言ってなかったか?」
「特にない。ただ最初はあたしを拘束する気はなかったって」
「なるほど」
その情報はあの寿司屋に行った時に予想していたので、まぁ予想通りという感じか。
しかし、情報が全然ないとは困ったな。
「ナンパしてきたグループってダックスですか?」
「そうだけど、やはり有名なんだな」
「ええ、この街で知らない人はいないですよ。ってことはダックスをグループ戦で倒したということですか?」
「まぁそういうことになるな」
「それは街の人が喜びますね」
ココは満面の笑みでそう言う。
まぁそらそうか。
ダックスというグループが本当は悪い奴らではないと知っているのはごく一部だからな。
でも、死んだのだから街の人の評価などもうどうでもいいだろう。
「ココ、ダックスがグループ戦を仕掛けて来た理由とか分かるか?」
「んー、Gポイント不足とかですかね?」
「確かにそれは考えられるな」
でも、本当に可能性の一部としか言いようがない。
そしてその可能性は低いだろう。
いくらナンパ好きだとしても、Gポイントのために命をかけるとは思えない。
それにイベント明けだ。
Gポイントが枯渇してるとは流石に思えないし、あり得ない。
「あの、ボクも質問とかしていいですか?」
「もちろんいいわよ!」
ココのいきなりの発言に、嬉しそうに食いつくリア。
そう言えば、色々聞きたいことがあるとか言っていたな。
一体、何だろうか?
「三人はHレイヤーのイベントでグループの関係性が難しくなりませんでしたか?」
「あー、実は私たち……Iレイヤーから飛び級でGレイヤーに来たの。だから、Hレイヤーのことはさっぱり分からないのよね」
「そ、そうなんですか! どんな裏技を使ってそんな飛び級なんて」
「このゼロがIレイヤー最強のグループと勝手にグループ戦をしてね。その内容がイベントの順位戦だったの。それでイベント順位も良くてグループ戦にも勝利した結果、Hレイヤーの目標Gスコアも達成したみたいで」
苦笑しながらそう言うリアに対し、ココはそれを聞いて目を丸くして固まってる。
「ココ、どうしたの?」
「あ、いや、凄すぎて驚いてしまいました。確かにHレイヤーの目標Gスコアは600スコアと比較的に低かったですからね」
「へー、そうだったのね」
確かに600スコアとは思っていた以上に低いな。
と言っても、僕たちラックがこのGレイヤーに来た時のGスコアは600スコア丁度。
ギリギリだったようだ。
だがしかし、Hレイヤーの目標Gスコアが低いことに変わりはない
じゃあ、一体どれぐらい低いのか。
ということで、IレイヤーからGレイヤーのスタート時点のスコアと目標Gスコアを簡単に表してみる。
Iレイヤーは30スコアから始まり、目標Gスコアが300スコア。
Hレイヤーは最低300スコアから始まり、目標Gスコアは600スコア。
Gレイヤーは最低600スコアから始まり、目標Gスコアは3000スコア。
次に今のを基にスコアの差を比較する。
Iレイヤーの差は270スコア。
Hレイヤーの差は最高でも300スコア。
Gレイヤーの差は最高でも2700スコア。
この差を見て分かることはHレイヤーだけがグループ戦を一回勝つだけで、次のランクに上がることができ、次のレイヤーに行けるということ。
Iレイヤーは最低でも九回、Gレイヤーは最低でも四回はグループ戦に勝たなければいけないのに、だ。
どう考えてもおかしいとしか言いようがない。
流石に僕はココに問う。
「ココ質問いいか?」
「はい、どうぞ」
「ここまでHレイヤーの目標Gスコアが低いと、HレイヤーのグループはすぐにGレイヤーに来るんじゃないか?」
「それはないですね」
「ない!? 何でだ?」
意味が分からない。
次のレイヤーに行く方が必ずいいはずだ。
というかIレイヤーからHレイヤーに上がったグループは、間違いなくBNWでトップを目指しているグループに違いない。
つまり、Hレイヤーは上に行きたくないほど素晴らしいレイヤーということなのか?
そんな考えをしていると、その答えは次のココの言葉ですぐに分かることになった。
「それはHレイヤーが超エロいレイヤーだからですよ」




