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彼は男爵家の後継者に成りたいだけだった  伯爵? 公爵? 無理無理無理!   続編も始まったよ  作者: お冨
第九章 未来都市へ

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ランドール伯爵領へ 出立

 久しぶりにオスカー君の一人称です。


 正月特番、ちょっといじって、短編にしてみました。シリーズから行けます。

 短編って難しいですね。長編になりそうで、こりゃ不味いと尻切れトンボで終わらせました(;^_^A

 王宮内の国軍総司令官室で正式な辞令を受け取り、王城の行政区域に建つ国軍総司令部に寄って報告と挨拶を済ませた。

 いきなり総司令部から転出することになって、何人かは驚いてくれた。だけど、マイヅルの国軍駐屯地へ出向すると言ったら、司令部の全員がまあそうなるなと納得してしまった。元々俺の担当だったしな。


 快く送り出していただけて、感謝してますよ。

 無任所参謀なんて役立たずが消えて清々(せいせい)するなんて、思われていないと信じてますから。

 適材適所だ頑張れって言葉、本心からですよね。

 寂しくなんか無いやい、グスン。


 現実逃避はここまでにして、実務に入らなければ。頼りにしているよ、グレーン・スミス代官。




 ランドール伯爵家の紋章入りの馬車で、貴族街の伯爵邸へ戻った。

 引っ越し祝いと言う名目で贈られてきた馬車は、兄貴の侯爵家の馬車と遜色ない乗り心地だ。お値段に関しては、怖くて聞いてない。

 贈り物だからね、お値段を詮索するなんて、不躾な真似は避けるべきだよね。ハハハ。


「お帰りなさいませ、旦那様」

 ずらりと並んで出迎えてくれた上級使用人は、恐ろしいことに全員が伯爵家出身。それも公爵家と侯爵家の従属爵位ばかり。

 普通は、新興の成り上がり伯爵家に来るような方々じゃありません。


 そもそも、公爵家や侯爵家に仕える上級使用人は、子爵、男爵の中位貴族出身。伯爵家出身者を家臣として召し抱えることはあっても、屋敷の使用人にしたりはしない。それができるのは、王家だけ。


 分かってますよ。王家より天津箱舟船長閣下がずっと上って(おっしゃ)るんでしょう。断れないのはいつものことだよ。

 だけどね、聖女様にお仕えするためって建前は、ちょっと苦しいと思うんだ。


「ただいま、ミリアはどうしている」

「お嬢様は、カース公爵邸でカンヅメでございます。締め切りが明日とのことでございました。本日はお戻りになられないでしょう」


 それじゃしょうがないか。

 カース公爵は、書店の全国チェーンを展開している方だ。なんでも天津箱舟の職責は情報通信システムだそうで、出版業界を含むとか。

 具体的な中身は、公爵閣下とミリアに聞いてくれ。俺に分かるのは、ミリアが漫画文化なるものの先頭を走っていることだけだ。


「キャサリン義姉さんは」

「奥様はテムニー侯爵邸へお出かけでございます。ニーナ様は、厨房にて旦那様の御夕飯のお支度をしておられます」

「分かった」


 我が家の家令は、俺よりよっぽど上位貴族の常識に詳しい。

 第一夫人のキャサリン義姉さんは奥様呼びで、第二夫人は名前に様付け。きちんと秩序を守って崩さない。

 内心、ニーナが厨房に入ることを面白く思って無いだろうに、おくびにも出さない。流石だ。当主の俺が許可した以上、差し出口をしないと言うことらしい。


 だからこそ、俺は当主としての自覚を持って、軽々しく指図してはいけない。

 そう教えてくれたのは、兄貴に貸してもらった教育係だった。





 キャサリン義姉さんは、王都に残ってもらうことにした。マークは学園の寮に入っているけど、休日には貴族街の屋敷へ帰ってこれる。引き離さない方が良いだろう。

 二人のことは、リアーチェ義姉様とテムニー侯爵夫人にしっかり頼んでおこう。


 ミリアは、聖女と言うか、天津箱舟船長の仕事が一段落するまでは身動き取れないらしい。ミリアも王都残留だな。国王陛下が大喜びで後ろ盾になって下さってるから、心配は要らない。多分。


 大丈夫だ、よ、な……。


 あー、やっぱりニーナに付いていてもらおう。ミリアも安心だろうし。






 よし、ツオーネ村へ寄って、カークを連れて伯爵領へ乗り込むか。

 しばらく会ってないから、背、伸びてるだろうなぁ。




 


 いよいよ未来都市の全貌が! ランドール伯爵領、どう魔改造されているかお楽しみに。


 お星さまとブックマーク、ありがとうございます。短編の方にもお星さまいただけて、びっくりしました。めっちゃ嬉しいです。

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