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彼は男爵家の後継者に成りたいだけだった  伯爵? 公爵? 無理無理無理!   続編も始まったよ  作者: お冨
第七章 オスカー・ランドール伯爵

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開拓村にて

 うーん、今回も説明になりました。ジャンさんの口調が安定しないよ~。

 俺たちが到着した村は、岩塩の採掘現場のすぐそばだった。もう一つの村は道の先、小さな湧水がある場所に作られていて、生活の基盤はそこだと言う。ちなみに村の名前はまだ無い。

 男たちは採掘の仕事があるので、ジャン一人が案内に立って、奥の村へと移動することになった。徒歩のジャンに合わせて、ゆっくりと馬を進める。


「なにしろ岩塩が採れるもんで、井戸を掘っても塩水しか出ねぇ。水がなきゃ暮らせねぇしよ。雨水ためて使ってるが、足りねぇ分は運んでくるしかねぇしよ」

 あっという間に言葉遣いが崩れたジャン。ちょっと訛りがあった挨拶は、あれでも彼の精一杯の敬語だったらしい。


 俺は伯爵と言っても新米だし、普段通りにしてくれと頼んだ。気を遣うのも遣われるのも窮屈で疲れるだけだ。自分の領地なら、これくらいの我儘は通したい。

 そう言ったら、みんなに突っ込まれた。


「領主なんだから、領民に気を使わなくて良いんじゃねぇですかい。それが貴族ってもんだろがよ」

「貴族の我儘って、それ、違うだろ」

「オスカー卿、卿は国軍中将、立派な高位軍人でいらっしゃる。何故それほどまでに卑屈なのです」


 えー、俺、昇進したのは成り行きだし、兵站で頑張ってただけで、部隊指揮したことないし。


「タムルク王国の侵攻を阻止しておいて、何を言ってるかな。救国の英雄呼ばわりは伊達じゃないっしょ」

 ん? テイラムこそ何言ってるのかな。


「ちょ、ちょっと待って下せえ。救国の英雄って、あの!?」

「そうだよ。タムルク王国軍の先遣隊(せんけんたい)と交戦して、国境から叩き出したんだ。あれが無かったら、今頃、西部諸侯の領地はタムルク王国に併合されてたかもだよ」


 そんな大袈裟な。確かに遭遇戦は有ったけど、俺は派遣先の騎士団にちょっと報告しただけだぞ。その後は騎士団が動くのを後方で見てただけだし。

 大袈裟に褒賞されて中将に昇進したのは、人心安定のための宣伝だったんだよ。部外者の俺が適任だっただけ。騎士団の全員を一度に昇進させるわけにはいかないしな。


「ああ言ってるけど、司令部で敵の動きを先読みしまくって助言してたんだよ。本人はただの思い付きのつもりらしいんだけどさ、これがまあ、的確だったんだよね。どこの騎士団だって、オスカーが所属したいって言ったら、諸手を挙げて大歓迎間違いなし」


 あー、テイラム、ジャンは俺の大事な領民なんだから、揶揄(からか)うのはそこまでにしといてくれ。




 道の先、奥の村は、そこそこ開けた平地だった。ジャンの言っていた湧水から流れる小川に沿って、ログハウスが点在している。何軒か作りかけの家もあった。


 家と家の間は畑になっていて、自給自足用と一目でわかる家庭菜園が並んでる。ツオーネ男爵領でよく見る光景だ。 

 遠巻きにこちらを見ている村人は、ボロとは言わないが年季の入った野良着姿で、生活の厳しさが(うかが)える。


 ジャンの家にお邪魔して、腰を据えて今後のことをテイラムが話した。

 いやいや、俺に統治能力を期待しないで欲しい。人には向き不向きが有るんだよ。


「今までは王領の未開地だったから、土地は誰の物でもなくて自由に使えていたけど、これからは伯爵領になる。土地の所有者をきちんと決めて登記簿に記載しなければ、追い出されても文句を言えなくなる。つまり君たちは、伯爵領の領民になって税を支払うか、この地を退去するしかない訳だ。どちらを選ぶ」

 ジャンの顔が強張(こわば)った。


「お勧めは領民になることだけどね。初期開拓の特典というものがあって、自力で開墾した土地はそのまま所有が認められる。それに、これからは最低限の生活基盤を伯爵家に整えてもらえる。子供の卒業試験を受けられる教会とか、医療施設、生活道路の整備だよ。教会は国の出先機関を兼ねるから、出来上がるまでは領主の責任を果たしていないことになる。その間は徴税できない決まりだ。つまり、まだしばらくは無税のままだ」

「じゃ、じゃあ、家は取り上げられなくて済むんですかい」

「当たり前さ。家の敷地ごと、私有財産として認められる。畑もね。ただし、杭を打っただけで私有地と主張しても認められない。あくまで開拓実績がある場所だけだ」


 へえ、そうなんだ。まあ妥当だよな。

 それにしても教会と医療施設か。


「今回は挨拶だけだ。次回の訪問までに住民の意思確認をしておいてくれ。領民になるかどうか、考える時間が必要だろう。来月、領民登録の手続きを始めるから。後は村長の人選だな。指名する権限は領主が持っているけれど、君たちが自分で選んで推薦するなら、尊重すると約束しよう」




 だんだん具体的になってきた。今になって実感してきたと言うか。俺、伯爵になるんだな。

 開発資金、どうしよう。




 行政手続きが始まります。人口少ないうちに始めないと、後が大変(笑)

 オスカー君、自分の功績に関しては安定の鈍感ぶりです。


 お星さまとブックマーク、ありがとうございます。感想、読ませていただいてます。ちょっくら、ネタに繋がりそうです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 井戸から塩水。かん水。ラーメン。
[一言] 騎士団で隊長以上の昇進条件に 王都など大きい街でも街門での 勤務経験が追加され兼ねんよねえ(目反らし 聖女の親の領地って事で領都を メッチャ大きく立派に作ろうと暴走しそうだねえ、教会(棒
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