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彼は男爵家の後継者に成りたいだけだった  伯爵? 公爵? 無理無理無理!   続編も始まったよ  作者: お冨
第十章 新しい生活

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エピローグ

 エピローグです。

 一応、タイトルは全て回収できましたので、ここで一区切りさせていただきます。


 続編や外伝をいろいろシリーズで書く予定です。そのために曖昧な部分を残したとも言います(笑)

 よろしければ、またお付き合いくださいませ。

 その日、学会での論議の一つに、一石が投じられた。


 千年前の激動期、その中心人物の一人に、オスカー・ランドール公爵の名がある。

 様々な逸話と創作物の影響で、その人物像は虚実入り混じり、両極端の評価がされてきた。


 曰く。

 伯爵家を継ぐために邪魔な長兄を暗殺し、次兄は侯爵家との政略結婚の駒にして追い出した。

 軍では他者の功績を横取りし、効率良く階級を駆け上がった。

 権謀術数を駆使して公爵に成り上がり、娘を聖女に祭り上げて、王家を超える権勢を誇った。

 長兄の未亡人と再婚したが、未亡人の実家が没落すると、情け容赦なく切り捨てた。


 これに対して、同時代人の残した手記や日記に描かれた人物像がある。


 曰く。

 真面目で謙虚で、軍人としては気弱だった。

 一開拓民の自分に、頭を下げて教えを乞うた。陳情すると、親身になって解決してくれた。

 義姉を再婚させて家から出すときに、相手にくれぐれも義姉を幸せにしてくれと頼み込んだ。

 王家の忠臣で、しょっちゅう無茶振りされては、何で俺がとぼやいていた。


 はたしてオスカー・ランドールは冷酷な策謀家だったのか、それとも状況に翻弄された庶民的な人物だったのか。



「これ、新発見ですよ。当時の公文書に書かれてたんですよ。間違いありませんって」 

「そうは言うがな、少し無理が無いか。オスカー・ランドール元帥が子爵家出身というのは」

 指導役の教授は慎重だった。

 仮説は大胆に、検証は緻密にが学者の鉄則だ。思い込みだけで暴走すれば、研究者失格の烙印を押されてしまう。


 元々若手研究員が専任していたのは、ツオーネ伯爵家だった。

 男爵位だったツオーネ家に王子が臣籍降下して興した家と言うのは、教科書にも載っている事実だが、通説では問題を起こした王子が王家から追放されたことになっている。


 では、どんな問題を起こしたのか。

 明らかになっていないのは王家が隠蔽したからだが、そこを解明するのが歴史学者だと、若手研究員は張り切った。張り切って、ツオーネ男爵家の契約結婚問題に行き着いてしまった。


 貴族院で埃をかぶっていた古文書から発掘してきた報告書は、問題の経緯と、契約結婚の条件に当てはまる男子が王子しか存在しなかった事実が記されていた。

 王子自身には何の瑕疵(かし)も無かったと証明できたのだ。


 思った以上の成果に大満足の若手研究員は、補足説明のために、契約結婚の詳細を付与することにした。


「まさか、ま、さ、か、契約結婚の当事者がオスカー・ランドールだったなんて。しかもですよ。この時点で子爵家三男の騎士爵、男爵家の婿養子予定だったんですよ。次兄はとっくにデイネルス侯爵家に婿入りした後です」


 少なくとも、オスカー・ランドールが『ランドール伯爵家』を継ぐために策謀したと言う前提は崩れる。ランドール家が子爵位だと証明できたのだから。


「だとすると、ますます無理がないか。当時は封建社会全盛期だというのが定説。オスカー・ランドールが成り上がる前だ。伯爵家から侯爵家へ婿入りするなら分かるが、子爵家からは無理だろう」

「そこなんですよね。もしかしたら、兄がいたってこと自体が虚構かもしれません。陰謀説をとるなら、兄を無理やり婿養子に押し込んで宰相にして、行政府を掌握したってなってますけどね」

「オスカー・ランドールとデイネルス侯爵に血縁が無いか。確かに、その方が自然か。君、裏付けはとれるかね」

「探してみます」


 やる気満々の若手研究員は、勇んで古文書庫へ突撃していった。





 はたして彼は新たな学説を打ち立てられたのだろうか。


 有名な歴史上の人物が、実はヘタレな小心者だったというコメディ小説が人気を博したのは、それから数年後のことである。









 いやー、長かった。十七ヶ月、週末更新を続けられました。エタらず完結まで持ってこれたのも、読んで下さった皆様のお陰です。本当にありがとうございました。


 実を言いますと、タイトルの彼って、次男のカーク君のことだったんです。宇宙船や聖女、近衛騎士などの設定は、全く予定にありませんでした。

 戦乱で跡継ぎが亡くなった家に引き取られて成り上がっていくだけの短い話だったんですけど。

 主人公の父親の話だけでこれだけ長編になるとは。


 天津箱舟ネタのお陰で高位貴族の血統主義に説得力が出て、ついでにあれもこれもと設定突っ込んでこうなりました。唯一の不満は、後半、テイラム君の影が薄くなってしまったことです。グレーン・スミス代官が代わりを務めてくれたのがハマり過ぎたとも言います。


 お隣の帝国の話とか、デパ地下ダンジョンの話とか、開拓村の村長さんの話とか。神の恩寵の運河の大航海時代ネタや、ランドール家の子供たち、デイネルス家の次世代。キャサリン義姉さんのお母さんの話。


 うん、この世界を舞台にしたネタには当分困りませんね(笑)


 お星さまとブックマーク、よろしくお願いします。感想、次の話のリクエスト等々、お待ちしております。


 では、次回作でお会いしましょう。


 季節外れの桜の満開の日に。 お冨


 

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― 新着の感想 ―
[一言] 半日強で読み切る殆ど引き込まれました 続編を楽しみにしてます
[気になる点] これは何年くらい後の話なんでしょうね 高層ビルが立ち並ぶ現代都市が当時からあったなら それなりに詳細な記録がちゃんと残っていてもおかしくないはず [一言] 完結おめでとうございます 関…
[一言] 完結お疲れ様でございます。が、唐突な感じが。ファウンデーションとは言いませんが、銀英伝程度の長編ではなかったのかなぁと。
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