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彼は男爵家の後継者に成りたいだけだった  伯爵? 公爵? 無理無理無理!   続編も始まったよ  作者: お冨
第十章 新しい生活

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ランドール公爵家 始動

 むむむ、また薀蓄回に。

 辻褄合わせ、頑張りました。デアモント公爵に「俺は鉄道王になる」と言わせたかったけど、鉄道が存在しないので無理でした(笑)

 建国以来、侯爵家と公爵家は断絶することなく続いてきた。その間、ざっと二千年以上。

 栄枯盛衰を繰り返す伯爵以下とは一線を(かく)し、途切れることなく権力と財力を維持し続けている。その権威は半端ない。


 (かたく)なに外部の血を受け入れず、十四の公爵家と百二十七の侯爵家、それに王家だけで婚姻を繰り返してきたせいで、全員が近い親戚状態になっている。

 はっきり言って、誰が王位を簒奪しても血統的には正当性が担保されてしまう。

 さすがに先祖が天津神だと言う系譜は神話扱いで、真面目に信じている者は誰もいない。その筈だったんだけどな。


「何しろ陞爵して公爵になるのはオスカーが初めてだからねー。前例なんて無いから、オスカーが前例になるし。つまり、好き勝手し放題だよー。王都の屋敷も、今の伯爵邸をそのまま公爵邸に名前だけ変えとけば良いからさ。新しい公爵邸の敷地確保するからって、王都の住宅街を更地にする訳にも行かないっしょ」


 ありがとう、テイラム。お前の変わらないおちゃらけ具合にホッとするよ。




 俺の公爵への陞爵は決定事項。公表まで半年と期限を切られて、慌ただしく準備が進められた。


 俺は何から手を付けて良いのかも分からないから、領地の代官を任せているグレーン卿と、公私ともに相棒のテイラムに丸投げするしかなかった。

 家の紋章なんかの各種手続きとか、貴族院関係はテイラムが。各家から出向してくる家臣団の調整はグレーン卿が担当してくれている。

 ちなみに、ランドール公爵家の従属爵位に付随する領地は、新たに公爵領となる未開地が()てられることになった。


 そうなんだ。今のランドール伯爵領から東、トマーニケ帝国との国境までが、そっくり王領から公爵領に移行したんだ。

 手に負えない伯爵領を分割して小さくするつもりだったんだけどな。ドーンと領地が追加されて、差し引き大幅プラスになっちゃったよ。

 どうすんだ、これ。


 どうしようもないから、代官のグレーン卿と出向してきた家臣団の皆さんに全部丸投げ。

 惑星開発プログラムは第二段階に入ったそうで、領地に戻るたびにどんどん変貌していく。いったいどこを目指しているのか、俺にはさっぱりだ。




 家臣団の皆さんは、半数が従属爵位の中位貴族出身で、一代限りの下級貴族の騎士爵や準男爵だ。

 残り半分は、天津箱舟の乗組員を先祖に持つ家系の平民。血が薄まり過ぎて血統を維持できず、貴族になれなかった家だとか。

 口伝として天津箱舟の知識を伝える家だから実力第一、有能なら養子も有りだそうな。


「乗員登録した遺伝子情報との一致率が基準を下回って、天津箱舟の搭載艇シミュレーション使用資格をもらえなかったんだよね。貴族制度で血統保持するのは、乗員候補を輩出して技術継承するためなんだから、天津箱舟に拒否されたら平民になるしかないっしょ」


 へらへらしているテイラムの家も、ずっと辿(たど)っていくと、天津箱舟の事務長になるんだそうだ。教えてもらったのは随分前だけど、いつだったっけ。

 もう昔の事過ぎて、覚えてない。思えば遠くへ来たもんだ。


「黄昏てないでサインしてねー。ほら、デアモント公爵からウォーター・リニア新幹線の延伸計画書が届いたから。ルートAとルートB、どちらを選ぶか決めてもらわないと、先に進まなくて困るからね」


 ウォーター・リニアか。ビートバンの正式名称だけど、どうもピンと来ない。ビートバン新幹線の方が馴染みがあって普及すると思うんだけどな。


「駄目に決まってるでしょ。新幹線と言ったらリニアなの。天津箱舟の伝統ある名称なんだから。変更は無しだよー」




 はいはい、もう好きにしてくれ。全部任せたから。

 俺、こんなんで公爵務まるんだろうか。









 家臣団の皆さんに従属爵位割り振る仕事、誰がしたんでしょう。最終決定権はオスカー君が持ってるけど、立案は誰に任せるのが正解かな。


 お星さまとブックマーク、ありがとうございます。もうすぐ桜が咲きそう。つぼみが大きく膨らんでました。今年は本当に早いです。

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