波乱は続くよどこまでも
ポーの一族の新刊が出てました。嬉しいです。初期からリアルタイムで読んでいたので、感慨深いです。
そうかぁ、ポーの一族にスマホや通販が登場する時代かぁ。小鳥の巣の伏線、読みたいな(笑)
王宮内の国王執務室。正直、この場所に良い思い出はない。
黒旗の軍使の代理として駆け込んだあの日、俺の平穏な人生がひっくり返ったんだ。
そりゃまあ、子爵家三男の騎士爵から男爵家へ婿養子に入ったのだって、十分、人生ひっくり返ったけどな。
デイネルス女侯爵がらみの契約結婚で男爵家を継げないって宣告された衝撃は、そうそう忘れられるもんじゃない。
「伯爵、オスカー・ランドール、御前に参じましてございます」
定型のご挨拶をして、陛下のお言葉を待つ。俺の斜め後ろに控えたグレーン卿も、一緒に頭を下げたままだ。
あれ、陛下のお言葉がない。
頭を上げられないまま待つことしばし。足音が近付いてきて、大勢が部屋へ入ってきた。
「面を上げよ」
ようやく掛かったお言葉に姿勢を正すと、びっくり。大臣方が全員顔をそろえておられる。それだけじゃない。えっと、あの方にあの方、それに……あれ、公爵家のご当主が全員集まってないか。
「ランドール伯爵、此度の領政報告、興味深く見させてもらった。大儀である」
「ははっ」
陛下のお言葉にもう一度頭を下げる。領主として国王陛下から直接お言葉を賜ったんだ、当然のこと。
だからさ、このまま退席させていただけないかな。無理だと分かってるけどさぁ。
「さて、ここからは舞台裏だ。皆、楽にしてくれ。今日の警備は高位貴族出身の近衛騎士で固めてある。事前の報告通り、天津箱舟惑星プログラムは順調に進んでいる。ランドール伯爵領の開発もまずまずだ。そこで例の話をしたい」
皆様方、何頷いてるんですか。俺にはさっぱりなんですが。
陛下の執務机の奥にある、休憩室という名の密談会場。上質だが装飾控えめのソファに、皆様腰を落ち着けていらっしゃる。なかなかの混み具合だ。
俺はというと、グレーン卿と二人並んで陛下の正面に座らされた。
王国宰相の資格で参加しているデイネルス侯爵、俺の兄貴だが、陛下の斜め後ろの位置取りだ。
「さて、ランドール伯爵領だが、現時点での領民数は、把握してるかな」
うっ。即答できない。助けて、グレーン卿。
「先週の時点で、千二百五万三千六百二十五人です、陛下。ほとんどが移民と移住者で、領地生まれは一パーセントに届きません。若年層が多めですので、今後、出生数の増加に伴い、増加傾向が続くでしょう」
いっせんにひゃく……なんだって。ちょっと待て、いつの間にそんなことになってるんだ。桁がおかしいぞ。
「その他に、一時滞在者として五百万ほど。これは日々変動しますので、概数となります。海軍所属の軍人、各商会の従業員、デパ地下ダンジョンの探索者協会職員など、年単位で居住する者を含みます」
「そうか、合わせて千七百万以上だな。オスカー卿、人口千五百万という基準が何か分かるかな」
分かりません。俺、剣を振り回すか、お飾りの司令官やるしか能が無いんです。
馬鹿正直に口にするわけにもいかなくて、陛下の後ろの兄貴に視線で助けを求めた。
「そんな顔するな、オスカー。貴族学園で習ってるはずだぞ」
いや、そんなこと言われたって。
俺、一代限りの騎士爵だったんだから。雲の上の領地経営なんて、真面目に勉強してないから。忘れたんじゃなくて、元々覚えてないんだよ。
「陞爵条件の基準というものがある。功績を挙げて評価されると陞爵されるのは知っているだろう。その功績の一つに、領民の人口規模があるんだ」
ああ、うん。
俺が婿入りしたツオーネ男爵家、人口一万人を超えたら子爵に陞爵できるんだ。現状では夢のまた夢だけどさ。
逆にいくら人口が減っても爵位返上はないから、そこは救いかな。領地なしの法衣貴族は、領民なんて関係ないし。
「法律で規定されている条件だからな、一応、侯爵、公爵の基準も定められている。有史以来、一度も満たされたことはなかったが」
なんだか、話の流れがヤバい気がする。
「ひょっとして、侯爵陞爵が千五百万人ですか」
「いや、違う。侯爵は一千万人だ。千五百万なら、公爵案件だな」
俺、気絶して良いですか。
五十階建てのビルが基準の未来都市、一か所だけとは誰も言っていない(笑)
領地は広大ですし、自重なしで開発すると、三年でこうなりました。いくら信頼していても、丸投げは危険ですよ、オスカー君。
お星さまとブックマーク、ありがとうございます。




