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彼は男爵家の後継者に成りたいだけだった  伯爵? 公爵? 無理無理無理!   続編も始まったよ  作者: お冨
第十章 新しい生活

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マーク君登場

 視線と目線、どっちを使うか迷いました。相手の目を見て自分より背が高いか低いか判断する場合、どちらが正解なんでしょう。

 俺の息子、マーク・ランドール伯爵令息。今年度の卒業生の中で身分の序列一位だそう。そこはちょーっとばかし異議有りだ。


 公爵、侯爵は家の数が少ないし少子化が深刻だから、同級生がいなくたって納得できる。だけど、伯爵家は二千以上だぞ。マークの学年だと、クラスに一人二人はいるんだ。

 (うち)は子爵から成りあがったばかり。一番の新参者なのに筆頭は無いだろ、筆頭は。


「はっはっはっ、オスカー卿、それは認識不足と言うものだぞ」

 デアモント公爵が、こちらに向かって来るマークを見ながら笑い飛ばして下さった。


「学園の身分序列は血統を重視する。マーク卿は伯爵家筆頭だったバルトコル家の直系よ。つまり、我がデアモント公爵家の血縁でもある。高位貴族に数えられる伯爵家だが、侯爵家以上と縁を結んだ家はほぼ皆無。バルトコル伯爵家が例外だったのよ」


 うわあ。また大きな声で。デアモント公爵家と血縁ってとこ、わざと強調しましたね。周りにしっかり聞かれているよ。


「その点でいえば、ランドール家は例外中の例外。なにしろ、中位貴族でありながら侯爵家と姻戚になったのだからな。伯爵に陞爵した時点で、バルトコル家に次いで序列二位。バルトコル家が断絶した今、序列一位はおかしくなかろう」

 エザール兄貴の婿入り、そこまで大事(おおごと)だとは知らなかったよ。すっごい逆玉の輿だとは思ってたけどさ。

 ため息つきそうになって、慌てて飲み込んだ。今日はマークのハレの日だ。笑顔で迎えてやらなきゃ。



 後からテイラムに解説されたんだけど、キャサリン義姉さんの姉上がバルトコル伯爵家からテムニー侯爵家へ嫁げたのは、かなりの特例だったそうだ。王弟殿下の姫君の降嫁がモノを言ったんだとか。

 俺には雲の上の話なんだが、一応、近い親戚なんだよなぁ。

 後、従属爵位の伯爵家は別扱いだと。本家と一緒くたになるから、個別の序列は付かないんだそうだ。





「父上、ここでしたか。ミリアも」

「マーク兄様、卒業、おめでとうございます」


 ミリアがマークに近寄って、両手で握手した。さすがに抱き着いたりはしなくなったか。成長を実感したよ。

 デアモント公爵は、ニコニコしたまま黙って立っている。今日のところは譲って下さったんだろう。


「おめでとう、マーク。立派になったな」

「はい、ありがとうございます。父上」


 ん? あれ。目線が……。


「マーク、背が伸びたな。俺より高いじゃないか」

 すっごく嬉しい。マークの成長を実感した。


「ごめんな、今まで気が付かなくて。もっと顔を会わせる機会を作るべきだったって痛感してるよ。俺、ちゃんと兄貴の代わり、務まったかな」

「代わりなんて言わないでください。父上は父上です。僕の自慢の父上ですから」


 ウルッと来た。本当にできた息子だ。





 ランドール伯爵邸で、久しぶりに家族全員が顔をそろえた。

 お祝いのご馳走を作って準備してくれたのは、俺の妻のニーナとキャサリン義姉さん。元々の子爵領から出て来てくれた両親。マークとミリアとカークの三人の子供たち。

 そして、デアモント公爵が同席している。


「この度は、マーク卿を我がデアモント公爵家へ迎えること、皆様方にお礼申し上げる。お約束通り、二年後にはマーク卿自身に将来を選んでいただこう。どのような選択にも反対せぬし、無理強いはしないと公爵家の名誉にかけて誓わせていただく」


 明日から、マークはデアモントの家名を名乗ることになる。これでバルトコル伯爵家の契約結婚の条件が満たされて、円満終了だ。

 そのまま次代のデアモント公爵になるか、ランドール伯爵家に戻るか、それとも別の道を選ぶか。選択権はマークにある。それが王家を交えて協議した結論だ。


 周囲から余計な雑音が入らないようにと、ミリアの要請で王命という形になった。そこまでは納得している。残る問題は、キャサリン義姉さんの再婚話だ。


「デアモント公爵閣下。わたくしに求婚いただいたこと、嬉しく思います。お受けするには条件がございます。ご了承いただけなければ、このお話は無かったことに」





 えっと、条件ってなんですか、キャサリン義姉さん。







 

 ううう、またもや蘊蓄好きの血が騒いじゃいました。テイラム君は便利です。うまく要約してくれるから(笑)

 マーク君十八歳、ミリアちゃん十六歳、カーク君十一歳です。成長したなぁ。


 お星さまとブックマーク、ありがとうございます。

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