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彼は男爵家の後継者に成りたいだけだった  伯爵? 公爵? 無理無理無理!   続編も始まったよ  作者: お冨
第九章 未来都市へ

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ランドール伯爵領へ 大歓迎

 ランドール伯爵領、少しずつ形になって来ています。名ばかり領主のオスカー君だけど、歓迎されました。

 屋台、客層からして、肉体労働者向けのガッツリ系だと思います。どんなメニューなのかな。


 前話で百話目でした。感想で気が付きました。ここまで続けてこれたのは、皆様のお陰です。ありがとうございました。

 山道を下りた広場は、単純に駐馬車場と呼ばれているらしい。この辺りにはまだ一つしかないから、それで不便は無いそうだ。

「番号を振るか、地名を付ける所ですが、まだ地名が有りませんので。土地の名付けは初代領主の仕事です。頑張って下さい」

 我がランドール伯爵領の全てを取り仕切っている代官、グレーン・スミス騎士爵がにっこりと言った。


 そうは行くか。俺のネーミングセンスの無さを舐めるなよ。絶対に拒否してやる。俺だって学習してるんだ、ここで一発かましとかないと。

「スミス代官。当主として命ずる。妥当な地名候補リストを提示せよ」

 ドヤァ。当主命令だぞ。

 リストはそのまま承認するから、グレーン卿、全部考えてくれないか。


「そうですね、オスカー地区とか、大将通りとか、ああ、愛しのニーナ街などいかがでしょう」

「止めて下さい、お願いします。俺が悪かったです。調子に乗りました」


「やっぱり父上とスミスさんは仲良しです。面白ーい」

 キャッキャと笑う息子のカークと、クスクス笑うグレーン卿。

 はぁ、俺に伯爵の威厳とかオーラは、無理だよなぁ。




 駐馬車場の中央部にランドール伯爵家の紋章付きの馬車が停まると、ざわめきが起きた。まあ、一目で貴族仕様って分かるからな。周りは実用一点張りの荷馬車ばっかりだから、そりゃ目立つわ。

 御者台から降りた使用人が、外から扉を開けて踏み台を用意してくれる。

 先に降りたグレーン卿が、大声を張り上げた。


「オスカー・ランドール伯爵閣下である。領地へ視察にいらっしゃった。平伏は無用。皆、その場でお迎えするように」

 さすが元近衛騎士。戦場でも良く通る、指揮に慣れた声だ。


 ちょっと緊張しながら馬車から降りたら、歓声が起きた。人数に見合わない大歓声だ。


「伯爵様、伯爵様」

「ありがとうございます」

「ありがてぇこって、伯爵様ぁ」


 いやあの、両手挙げてぴょこぴょこ飛び上がるって、どうした、何でそんなに興奮するんだ。

 俺の後から馬車を下りたカークが目を丸くしてる。


「閣下、手を振ってやってください。彼らはタムルク王国からの移民です。正式に荷運び人として雇用していますから、閣下が雇用主です。宿舎と食堂完備の職場ですからね、彼らにしたら、有り得ない高待遇です。閣下は人気の的ですよ」

 おいおいおい、それ全部、グレーン卿の差配だろ。俺は何もしてないぞ。


 歓迎の中、グレーン卿の先導で敷地の端の屋台に向かった。かなりガッツリ系の軽食が並んでいる。ちょっとカーク向きじゃないかな。




 馬車に戻って、どうぞどうぞと屋台で献上された料理の数々をつまみながら、先を進んだ。


「屋台は王都直通の街道が整備されるまでの仮設ですから。ここで腕を磨いて、将来街道沿いに飲食店を出してもらおうと計画しています。普通は既存の店で見習いとして修業するものですが、あいにく、まだ何も無いので」

 そりゃそうだ。無人地帯だったんだから、店なんてある筈ないか。


「移民の中に経験者がいるかと当てにしていたんですが、思ったほど数がそろいませんでした。店を持っていたり手に職の有る者は国に残ったようです。こちらに来たほとんどが農民ですね。と言うか、タムルク王国は国民の九割以上が農民だったようで、二次、三次産業に従事している者は富裕層扱いですよ」


 富裕層、ね。あの国じゃ、我がデルスパニア王国基準の生活必需品が、贅沢品扱いされたなぁ。

 あれ、じゃあ、さっきの大歓迎って。

「厳しい開拓生活を覚悟して来たのに、故郷の富裕層並みの生活が保障されたってことになるのか」


「その通りです。まあ、次の世代になれば当たり前になるでしょうけどね。移民一世の感謝は本物ですよ。おかげでやり易い。我が国の生活水準と比べたら数段落ちますが、知らなければ不満は出ません。出たところで、開拓地だから仕方がないと納得させますよ」


 グレーン卿、笑顔が怖いよ。




 カーク、それも美味しそうだな。父さんにも一口おくれ。










 ジャンル、ヒューマンドラマに戻しました。転生物だけど、遠い未来だから現実世界とは地続きだなと。やっぱり異世界は違いますよね。

 小さな拘りですが、こっちの方がしっくりきます。



お星さまとブックマーク、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 確かにジャンルがなぞですもんね。 SFちっくでもあるしね・・・
[一言] 労働者向けの屋台のメニューが重いのは仕方ないかな ジャンルはいっそSF(空想科学)とかはいかがですかふ
[良い点] 更新お疲れ様です。 [一言] いわゆるジャンクフードは当分先でしょうね。 もしかすると息子や娘が過去の記憶から開発するかも。
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