ありえない旅
翌日、店は休みで、いつもの休日通り朝からみんなは銘々自由に食事をする。
レイは朝食に、リュウが作ってくれたフレンチトーストを食べた。
これが少々効いた。
リュウのフレンチトーストは、厚めにカットしたバケットをアパレイユに浸けオーブンで焼き、メープルシロップをかけ、さらに上からシャンティーをかけ、オレンジ、ミントで飾り粉糖をかける。
アパレイユにはグランマニエ、シャンティーにはラム酒が少し、最高に美味しいが少々大人の味。
レイは、ゆうにふたり分はペロリと食べていた、リュウに罪はない。
朝食を食べ終えた時チーがやって来て、
「レイ、ちょっと来て。」
レイを引っ張っていった。
何か悪巧みをする時のチーの顔だ、リュウには分かった。
チーはレイの部屋に着物一式を持ってきて、さっさと手早く着付けていく、もちろんレイの黒髪も綺麗にセットして髪飾りを挿した。
若干ぼ〜っとしていたレイはチーのなすがままだ。
「出来上がりぃ! お振袖ではないけど、とっても似合ってるわ! みんなにお披露目ぇ。」
今度はリビングに引っ張っていく。
「あらっ、誰もいないじゃない。もぉ、集合かけちゃお! ソファーに座って待っててねレイ。」
「ふぁ〜い。」
「レイ! あくびしないの!」
ほどなく全員がリビングにやって来た。
「なんだよ、チー、見せたいものって?」
サンは強制集合で不満げで、イーも、
「私とウーとリュウは、旅行の段取りで忙しいのですよ。」
「何も無いじゃないか。」
スウの声に、皆の後ろにいたチーも中を見た。
「もしかして見せたかったのは、この、着物着た眠り姫?」
アールがソファーの正面に立ち真下を指差し、全員がソファーの前に回りこみ下を見た。
そこには、淡い藤色に桜の花と花びらが舞う古風な着物を着て、床に横たわりスヤスヤ眠るレイの姿が・・挿していた髪飾りも頭の横に落ちている。
「誰だ? 飲ませたのは!」
スウが言うとリュウが、
「えぇ! まさかあれで? フレンチトーストだよ、いくらなんでも効きすぎだよ。」
「おまえのフレンチトーストには、酒が入ってたよな。」
「ごめんなさい! スウ。」
「レイのことだから、どうせふたり分以上食べたのでしょう。」
イーの言葉にリュウは頷いた。
全員が呆れ、でも、淡い藤色に包まれたレイを綺麗だと思っていた。
やはり女性なんだ。
「起こすわ今、せっかくのお着物、ちゃんとみんなに見せなきゃ。」
揺り起こそうとしたチーの手をイーが止め、
「スウ、部屋に運んであげなさい。」
「なんで俺が。」
「君の愛弟子でしょ。」
微笑むイーに、ため息をつき、
「しょうがないな。」
スウは着物姿のレイを、そっと抱き上げた。
「あぁ、もったいない、せっかく頑張って着せたのに。スウ、帯はほどいてあげてね、苦しくなるから。」
残念そうにチーが言うと、
「な、なんで俺が。」
「あなた着物よく知ってるでしょ。」
「馬鹿か、男の俺ができるか!」
「あら、京では着付けは男衆さんでしょ。」
「あれは舞妓や芸妓だ。」
「詳しいね、よく分かんないけど、帯ほどくくらいなら僕がしてもいいけど。」
チーとスウの会話に、アールが言うと、
「ダメ! アールは全部脱がせそうだから。」
「失敬な!」
チーは、さらにつけ加えるように、
「それに着物は難しいわよ、着せるのも脱がすのも、ねっ、スウ。」
「知らん!」
「あらっ。」
「とにかく早く部屋に連れていってあげなさい、私達は準備の続きに戻ります。」
イーに言われ、スウは抱き上げたレイを部屋のベッドまで運び寝かせた。
(帯をほどけって・・)
仕方なくスウは、帯締め帯揚げの結び目をほどくと、背中に手をやり少し体を浮かせスッと抜いた、そのまま帯の後ろをほどき体に巻かれた帯も抜く、乾いた絹の擦れる音が静かにした。
(俺はこの前、次は襲うと言っただろ、その俺に帯をほどかせるか・・また無防備に寝やがって・・・)
ベッドの脇に腰掛け、優しい顔でじっと寝顔を見つめたスウは、眠るレイの体の向こうに片腕をつき顔を近づけると、そっと口づけた。
レイの柔らかい唇からは、ほのかにラム酒の香りがした。
「嘘っ!・・ス、スウが・・・」
なんで扉を開けているスウ! 目撃者となってしまったリュウは固まっていた。
スウは一気に走ってきて扉を後ろ手で閉めるとリュウの口を塞ぎ、
「ちゅ、忠告を実行に移しただけだ! いいかリュウ、このことは誰にも・・。」
口を塞がれながらブンブンと首を縦に振るリュウは、間の悪さナンバーワン。
解放されると、
「お願いだからスウ、次は扉を閉めてしてくれる。」
「馬鹿野郎、次なんか・・」
(僕は必ずあると思うけど。)
心の中でリュウは思った。
夕方近く、状況把握できていないレイの叫び声が聞こえたのは言うまでもない。
新年最初の営業日は大盛況。
周りにとりたてて何もないこんな郊外のカフェ、しかもいわゆる執事喫茶がだ。
お正月の飾りもなく、ただお帰りになるお嬢様方の晴れ着が、それを感じさせる不思議な空間。
「お帰りなさいませ、お嬢様。」
迎える執事達は、今日は全員真っ白の執事服を着ている以外は普段通り、お料理だけはチーとリュウがいつもよりお正月の雰囲気を加えていた。
「スウ、お嬢様のお着物が少し着崩れされたので、直してさしあげて下さい。」
イーが言った。
(なんで俺が!)
しかしイーの指示は絶対だ。
「お嬢様、どうなさいました? わたくしがお手伝いさせて頂きます、失礼致します。」
そう言ってスウは正面に立ち、帯揚げを手早く整え、おはしょりをぴしっとし、屈んで片膝をつき着物の裾を直して立ち上がり、
「とてもよくお似合いでございます、お嬢様。」
と、言うと、目の前のお嬢様はうっとりとトロけそうだ。
「僕は着付けを学ぶ!」
アールが宣言すると、
「もういいじゃん、アールの武器は笑顔で。」
サンは呆れ顔だ。お嬢様の中のひとりが、
「イー達も着物着たらいいのに。レイやスウはすごく似合うと思うけど。」
「ホント、いっそ全員で平安絵巻とか新選組とかいいよねぇ。」
(アホ、誰が着るか!)
レイは横目で見て思うと、すぐにイーに、
「レイ! お嬢様にアホはやめなさい。」
「ごめんなさい、イー、でも思っただけ。」
「思いは態度に出てしまいます。安心して、ここはそういう店ではありません。」
お嬢様方には聞こえないようにふたりは話す。
忙しい初日が終わっても彼らの忙しい日々は終わらない。でもみんなの気持ちはすっかりしっかり連休の旅行に向けられ、気の早いチーは荷造りをしていたりする。
死神が連れ立って旅などありえないのだ。
出発の前日、十五日は大変だった。
チーとサンのはしゃぎぶりが凄く、ふたりして持ち物から始まり二日間の行程を考え終始盛り上がり、イーの注意などには完全に空返事だ。
「私は今、このふたりをおいていきたい気持ちでいっぱいです。」
イーは大きなため息をついた。
十六日の朝、7人と1人は新幹線で一路西の地へ、駅でも新幹線の中でも、この8人は当然目立ちに目立っていた。女性達だけでなく男性でさえ振り返る。
新幹線では、誰がどこに座るかでサンがひと騒ぎし、怒ったイーが強制決定で皆を座らせた。
車内で少し早めの昼食は、チーの手作りお弁当、これひとつでもはしゃぎぶりが分かる。
リュウがおやつにクッキーと焼き菓子を作り持参、どれだけ楽しみだったかも伺える。もちろんリュウのおやつを一番喜んだのはレイだ、新幹線の中で新幹線なみに暴走する。
アールがトイレに立つと、歩く通路の両サイドからため息がもれ、やたら車内販売がやって来てはウーとイーに声をかける。スウはほとんど寝ていたが、横を通る女性が皆じっと見つめていた。
新神戸に着くと予約していたレンタカーに乗り目的地へ向かう。
「小さいバスみたいだね。」
サンが言うのも分かる、借りたのは10人乗りのワンボックスカー。
レイの案内で向かう場所には『希望の灯り』が灯る。
その灯りの揺らめきは、悲しくも犠牲となられた方々の魂と、命をつなげた人々の心をつなぐ。優しさ、思いやり、消えることのない絆、愛する人、温もりで包む仲間・・。
ここを訪れる人々は灯りに何を想い何を祈る。
レイは地下に下りていき、皆も後に続いた。
壁にはびっしりと犠牲になられた方々の名前が刻まれ、レイは静かに立ち止まると壁の名前をゆっくり指先でなぞり両手で包んだ。おそらく両親の名が刻まれているのだろう。
7人はレイの後ろで静かに祈る。
振り返ったレイはその姿に、こんなに優しく美しい光景を見たことがないと心から思った。
(ありがとう。あなた方がきっと優しく宝箱に、抱きあげ納めて下さったんだよね。)
誰にも見送られず、自分が見送ることもできなかったと思い続けた年月が、ゆっくりゆっくり溶けていく。
8人はその場所を後にした。
明日はレイが両親と暮らしていた場所へ行く。今日はホテルにチェックインして夕食までゆっくりしようと考えていたイーに、チーとサンが、
「さっ、これから中華街よ! みんなさっさと車に乗って!」
「歩きでも大丈夫だろ、チー。」
「まぁね。」
「君らは何を勝手に計画しているのです。」
イーは言ったが、もう誰もチーとサンを止められない。
「車です! 車で移動! 君らを引き連れて歩いたら、私の神経がもちません!」
仕方なくイーは言い、
「せっかくおしゃれな街、歩きたかったのに・・残念。」
チーの言葉は無視した。
中華街を、この8人が歩いても同じこととウーは思ったが、イーは到着すると、
「いいですか、ここを向こうまでぬけたらその後は即ホテルです。勝手に脇道には入らない!」
厳しく言ったが、
(聞いていない、私の指示を。)
とうとうイーは名指しで言った。
「チー、サン! 今すぐ強制帰宅で送り飛ばしますよ!」
「いやん! 酷い。ちゃんと聞いてるわよ。」
「マジ、横暴!」
ふたりの返事にフラッとするイーを見て、
「おまえらたいがいにしとけ。」
とうとうスウが睨んだ。
中華街、蒸篭から立ち昇る湯気、美味しい匂い、暴走者が増える。
「あそこの豚まん美味しいの! でも並んでるね。」
レイが言うと・・んっ、アールがいない、列の先頭の女性に得意の笑顔で話しかけている。
「誰か止めに行く!」
イーの声にウーが走る。
戻ってきたアールの手には、しっかり豚まん、ため息をつく間もなく今度はレイがいない、少し先、シュークリームの店に並ぶ女性の横に、
「スウ、行って!」
またイーの声に、レイを連れ戻しに走る。
「おまえ、向こうで待つイーを見ろ!」
「怒ってるね。」
「あたり前だ!」
「じゃ、スウも手伝って。」
ちゃっかりもらっていたシュークリームを半分、スウの口にくわえさせた。
「見つからない内に早く食べないと。」
ふたり向き合い一気食い。
「美味しいね。」
「あぁ・・」
戻ったふたりの口元を見てイーは、
「匂うまでもありません! ふたりして! もうホテルに向かいます!」
目が青くなりそうですイー、まだ旅は始まったばかり。
ホテルへ向かう車の中は静かだった、はしゃぎ過ぎたことを反省する神妙な顔の皆に、おもむろにイーが口を開き、
「部屋割りを言います。レイは当然ひとり、ウーとアール、スウとリュウ、チーとサンと私です。」
「ええぇ〜。」
「文句は言わせません! 私だって君達と同じ部屋はうるさくて嫌ですが、目を離すわけにはいきません!」
リーダーの心、子知らずならぬ、チー、サン知らずだ。
「私がイーと替わりましょうか。」
レイが言うと、イーは、
「レイ、一応、チーもサンも男で君は女だということを忘れないよう。」
「アハハ、大丈夫ですよふたりなら。」
笑うレイにサンが、
「あっ、今、軽〜くバカにしてない? チーはともかく、俺はレイよりずっと歳上の健康男子だけど!」
「サンは健康男児でしょ。」
「よし! 笑うなら今夜、レイの部屋に夜這いに行ってやる!」
「いいわよ、成敗してやる!」
「大丈夫です、私が部屋の外には一歩も出しません。」
イーが断言し、ええぇ〜と言うサンの声に、車内はみんなの笑い声で揺れる。
海に面し港のすぐ横に建つホテルに着くと、8人は吹き抜けの広いロビーに立った。
フロントでイーとウーが手続きをする間も、スウ以外はじっとしていない。その5人の動向をソファーに座りながらスウはしっかり監視していた。
さすが神戸、外国人女性に声をかけられているアール、あちこち動くチーとサン、リュウとレイは・・? スウは背もたれから体を起こし周りを探すと、ティールームの隣り、ホテルベーカリーの店の前にいた。
(あいつら中に入る。)
すぐに走った。
「おまえら待て!」
店の入口前で、普通の顔で振り返るふたりに、
「一歩でも入ったら強制帰宅!」
「入んないよ、見てるだけ。それよりチーとサンが出てくよ。」
レイの言葉にふたりの姿を探すと、正面玄関に向かっている、また走った。
「待て! どこへ行くつもりだ!」
「どこも行かないよ。」
サンが答えチーも、
「そうよ、ドアマンのコートをよく見ようと思って、ああいうのみんなに作ろうかしら、なんてね。」
スウはイーの気持ちがよく分かった。
部屋には広いバルコニーがあり海が見渡せる、並んだ部屋から皆が海を見ていた。
沈む夕陽が冬の海を暖かい色に染め、皆の顔も温かい茜色に染まる。
チーがまたイーの部屋で、
「ねっ、イー、いいでしょ。」
「誰かに会うこともないでしょうから、夕食の時だけなら許可しましょう。」
「ありがとう、イー。」
チーはそう言うと隣りのレイの部屋へ走る、レイがドアを開けると、
「もうすぐ夕食、さっ、早くお着替え。」
勝手にさっさと入ると、持参したスーツケースを開け中から衣装を出した。
やや長めの淡い淡いピンクのワンピース、裾には小さな花が布地柄で全体を覆う。
レイは驚き、
「誰が着るの?」
「あなたに決まってるでしょ。」
「ムリムリ、こんなの恥ずかしくって・・」
「ムリじゃない! いつも男の格好で頑張ってるレイに、今日夕食の時だけでも女性でいてほしいの、綺麗なレイをご両親に見て頂くの!」
チーの目に涙が光る。
「チー・・ありがとう。」
レイは小さく言った。
夕食は最上階のステーキハウスを予約していた。
皆はすっきりとした格好で鉄板をコの字に囲んでいる。
「神戸ステーキ! ステーキ! チーとレイ遅せぇな。」
「静かに待ちなさい、サン!」
注意するイーに店のソムリエがワインリストを持ってきて、
「お薦めのワインは・・」
と、説明を始めた。それを見てサンは、
「あのソムリエ、誰にお薦めの・・なんて言ってんだろ、天下のイーだよ! ソムリエ資格はもとよりマスターオブワインにだって・・」
「しっ! そういうことは言わない。」
ウーにたしなめられたサンが、入口の方を見たまま驚きの顔になり、先に席についていた6人全員が驚き、他の客も店の人も、チーと共に入って来たレイに見入っていた。
恥ずかしそうなレイの横で、なぜかチーは誇らしげだ。
「ここにいるみんながレイを見てる、私嬉しい! レイのお母さんの気持ちってこんなのかしら?」
「お父さんじゃなくて?」
「まっ! 憎たらしい子。」
チーとレイが笑うと、その笑顔にまたみんなは見入っている。
「お待たせしました。」
返事しない皆の顔近くで、パチンとチーは手を叩き、
「みなさん、目醒めましたか?」
まるで催眠術から解かれたような顔のみんなが訳もなく照れ笑いし、レイが、
「えっと、馬子にも衣装って、またスウに言われるね。」
「そんなこと言ったのか!」
アールはスウを睨んだ。
「それは去年、あいつの元彼とかが店に来た時の・・」
「あの時も綺麗でしたが、今日はさらに綺麗ですよ、レイ。」
ウーが優しい声で言った。
「あ、ありがとうウー。」
「うん! 大食いにも衣装だな。」
サンが言いリュウも頷く、アールは、
「チーのコーディネートも素晴らしい。その裾の花、霞草だね。花言葉は清い心、レイにピッタリだ。」
と、言った。
「やだ、アール、私ちっとも清くないよ。」
そう言って照れるレイの髪には、あの日の揃いのピンが挿されていた。
「今スウ、レイの髪見て、こないだのピンブローチ持ってきてたら良かったって思った?」
「何言ってんだ!」
チーの言葉に慌てるスウを見て、
「分っかりやすいねぇスウも。」
サンはアールを盾にしながら言う。
「でも、あのピンブローチ私が預かってるから、帰ったら返すね。」
「いや、いい、持っとけ。」
「そお? ちゃんと鈴蘭の箱にしまってあるから。」
レイとスウの会話に、
「へぇ〜、なんか深いねぇ、思わないリュウ。」
サンにいきなり振られて慌てるリュウは、チラッとスウの顔を見た。
(そら深いさ。)
と、思う。
「似合っていますよ、レイ、さっ、座って食事にしましょう。」
イーの言葉に、前で立っていたシェフも我にかえったようにステーキを焼き始めた。
ガーリックの香ばしい匂い、スープやサラダが運ばれる前に、ソムリエがワインを開ける。
「その女性にはソフトドリンクを。」
正面に座るスウが言うと、
「一杯位いいでしょう。軽めのボルドーにしましたから。」
イーの言葉に驚き、
「軽めって・・味の問題じゃないだろ。」
そう言うスウにリュウが、
「寝たらスウが運べばいいんじゃない。」
スウは詰まり、こいつ棘を出したな、と思った。侮れませんリュウ。
8人の席は明るく華やかで、周りの人達を魅了した。
食事を終え部屋へ戻るエレベーターの中で、レイの瞼はやや閉じかけだったが、テンションの高いふたりが常に話しかけ閉じるには至らず、
「残念? スウ。」
リュウがこっそり言う、
「口塞ぎきるぞ!」
スウは呟くように言った。
やはり眠いのか、レイの頭がカクンと何度も揺れ、挿していたピンが滑り落ちた、スウは落ちるピンを手に掴み挿そうとすると、チーが、
「挿しても落としそうだから持ってて。ホント、よく食べるのにアルコールはダメなのね。」
スウはジャケットの内ポケットにピンをしまった。




