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3 氷の洞窟


 雪山の頂上にたどり着く頃には、太陽が傾いていた。金色の斜陽が雪を輝かせる。


 岩壁に、ぽっかりと洞窟が口を開けていた。

 イリスが覗き込む。奥には、黒々とした闇が広がっていた。氷の竜がいるのか、わからない。


 耳を澄ます。

 鼓膜を突き刺す静寂。


「いない、みたい?」

 イリスは背負い袋から、油紙に包んだスギの枯葉と火打石を取り出した。小さな角灯を用意する。火打石を打ち付けて、火種を杉の葉に作る。油紙が燃え出す。角灯の脂蝋燭に火を点けた。


 角灯を持って洞窟に入る。脂蝋燭の灯りを受けて、滑らかな岩肌がぬらりと光った。ゆっくりと、転ばないようにイリスは歩を進める。

 カサカサと、音がした。


「きゃっ」

 白い雪蝙蝠が十匹ほど飛んできた。思わず、イリスはしゃがみ込む。 


 雪蝙蝠たちは洞窟を出て、夕暮れの空へと消えていった。

 ほっと、イリスは胸を撫で下ろす。立ち上がり、洞窟の奥へと進む。

 角灯の灯りを頼りに、奥まで来た。きらりと地面が光る。


 手の平より大きい氷の皿――否。青白色(せいはくしょく)の透き通った鱗が落ちていた。


「やった。あった」

 吐く息が白い。やはり洞窟の中は外より寒い。


「よいしょ」

 角灯を地面に置く。手袋をした手でイリスが鱗を掴む。両手を使わなければ持ち上げられない重さ。見た目のわりに重い。


 もぞり、と闇が動いた。


 地面に置いた角灯の光に、赤色が反射する。

 二つの大きな眼。


「ひっ!」

 イリスの悲鳴は喉元で凍った。

 巨大な氷の竜が首を持ち上げた。









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