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2 北の雪山
雪が積もった山道を、イリスは行く。
途中で、狼の牙が刺さったトナカイの死骸を見つけた。背負い袋からナイフを取り出し、狼の牙を削り取る。苦労して、トナカイの骨から凍った肉をそぎ落とす。
モミの葉とユグシルの青い花は、村の麓の森にある。年老いた薬師を訪ねる前に摘めば良いだろう。
問題は、氷の竜の鱗だった。
長靴の脛まで雪に埋まりながら、一歩一歩イリスは進む。寒い。ざくざくと雪を踏む音以外、何も聞こえない。雪が音を吸うからだろうか、山は静寂に満ちていた。吐く息が白く凍る。
イリスは空を見上げた。木々の枝の間から見える、澄んだ青空。氷の竜が飛んでいる気配はない。
「ルーク……」
大切な弟の名を呟く。
今も熱に苦しんでいるはず。想像すると、腹の底が冷たくなる。早く楽に、元気にしてあげたいとイリスは思う。
一歩。進む足に力が入る。
「わ!」
雪の下の岩に足を取られ、イリスは尻もちをついた。痛い。冷たい。
見上げた空は、憎たらしいほどの青空。しん、と静まる山で聞こえるのは、自分の呼吸のみ。
息を整えて、イリスは立ち上がった。体に着いた雪を払う。
「……よし」
怪我はない。
行ける。
歩ける。
進もう。




