ドサリ
「いやぁ、それにしても柏木さんにはびっくり仰天だね! まさかおにぃの女装に気付いてたなんて……メイドをする前は絶対なんか凄い事やってたよね、スパイとか!」
月を見上げる僕の横に藍が並び立つ。こんな冗談みたいな事を言いながらもこの子は僕の事を心配してくれているんだ。僕はおにぃだから、藍の優しさを知っている。
「ねぇ藍、花音さんに僕の女装の事話したらどう思うかな?」
「えぇ!? そんな事したら花音ちゃんもっと不機嫌になっちゃうかもだよ!? いやなっちゃうよ、間違いなしに確実に!」
――ドサリ。
近くから何かが倒れるような音がしたけど、多分猫か何かだろう。余りにも藍のリアクションに合った音で可笑しかった。
「はは、そうだよねぇ……やっぱり怒るよね」
「うんうん! やめた方がいいよ!」
「でも、言わなくちゃ駄目なんだ」
花音さんが辛い思いをするのが嫌で、花音さんの嘘をバラしてしまった僕が、自分が辛い思いをしながら花音さんに嘘をついていて言いわけが無い。人を救うには、まずは自分が救われないと……ね。
「おにぃ……」
僕の意思の強さが伝わったのか藍は何も言わなかった。
「さぁ、もう家に入ろう」
振り返り家のドアを開ける。
明日は花音さんに謝って僕の秘密を告白する。あぁ、大変な一日になりそうだ。
まだ完結ではないですが評価、お気に入りをお願いします(´;ω;`)
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