雑談って難しい
僕の女装は自分で見ても完璧だと思う、可愛さだけを追求したパーフェクトボディだ! 元々身長が低いこともあって女子の制服も違和感なく着れていた。
でも、この姿で女の子と一対一で話すのは初めてだ。どこからボロが出てしまうかも分からない。
仲の良い会話までは行かなくても、とりあえず無難な会話をっ!
「きょ、今日はいい天気だねー」
こ、こんな話題しかなくてごめんなさい! 心の中で土下座する。
「うむ、そうだな」
竜宮寺さんは空を見上げながら返事をした。
見上げた空には二羽の鳥が楽しそうに連れあって飛んでいる。……今のちぐはぐな僕達とは対極の存在かも。
モグモグ。
モキュモキュ。
会話のネタも尽き、無言のまま弁当を食べるだけの時間が流れる。
気まずさは増すばかりで、なぜ彼女は僕を誘ったのだろうとさえ思えてくる。
「私は――」
僕の思考に答えるかのように竜宮寺さんが話し始めた。
「――可愛くなりたいんだ! 君のように、可愛らしい女の子に私はなりたい!」
堰を切った様に彼女は勢いよく話し始めた。乱暴に置かれたからの弁当箱がカランと音を立てる。
「へ?」
僕は彼女の言った言葉の意味がうまく飲み込めないでいた。彼女は今なんて言ったんだ? 僕の耳がおかしく無ければ、可愛くなりたいって聞こえたんだけど……。
「可愛くなりたいんだ!」
真剣な竜宮寺さんには悪いけど、僕は心のどこかで女装がバレていなかったことに胸を撫で下ろしていた。
でもそれよりも、今は目の前に迫っている彼女に返事をしないと。
「竜宮寺さんは充分、び、美人だよ!」
あぁ、答えになっていないのが自分でも分かる。
「そう! 美人ではある。しかし、美人ではだめなんだ!」
あっさり肯定した上に否定した!?
「頼む夕貴! 私に、可愛くなるコツを教えてくれーッ!」
肩を掴まれて前後にブンブンと揺すられる。
あぁ竜宮寺さん君は力でも僕を軽く超えているよ。脳のお味噌がシェイクされて目の前が真っ暗になっていく。
あぁそう言えば昨日は女装して登校する緊張で一睡もできなかったっけ、意識が――飛ぶ……。
「夕貴!? 夕貴ーーーッ!」
薄れる意識の中で最後に聞こえたのは僕の異変に気付いた竜宮寺さんの心配そうな声だった。
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