決戦の朝
「決戦の朝、来たり!!」
大きな声に寝ぼけ眼を擦り、起きる。
「おはよう、花音さん」
「おはよう夕貴!」
花音さんの表情は晴れやかで悩みなんてもう一つも無い、そんな風に見えた。しかしその瞬間、僕の胸の奥がツクンと痛んだ。
「あーっ! やっぱりここにいた! おに、おねぇ! 花音ちゃんと一緒に寝たの!?」
扉が凄い勢いで開かれ、これまた凄い勢いで藍が部屋に飛び込んできた。そして僕の存在に気付くや否や、頬を抓ってくる。
「いたたた! 藍落ち着いて! か、花音さんが頼むから仕方なくなんだよ!」
「おや、夕貴その言い方はちょっと酷いんじゃないか? 私と寝るのが嫌だったのか? ん?」
反対側の頬を花音さんが抓る。えぇ、どう答えたらいいのよこれ。
「な、なんか二人とも仲良くなってる!? おねぇが花音ちゃんのこと名前で呼ぶようになってるし!」
「ふふ、一線を越えたとだけ言っておこうか」
花音さん、確かに僕達の関係性はある一定線を越えたのかもしれないけど、そんな意味深な言い方をしたら藍の指先に込められる力が尋常じゃ無くなって行くんだよ?
「い、一線!? わ、私だってまだ超えて無いのに! おねぇのバカッ! 浮気者!」
そう言って藍は走り去ってしまった。あの子は実の兄とどんな一線を越える気なのだろうか。
「あー、あぁなると機嫌を取り戻すの大変なんだよ?」
「アッハッハ! お姉ちゃんは大変だなぁ」
花音さんは相変わらずの高笑いだ。とりあえずあの状況でもおねぇと呼び続けてくれた藍には感謝することしよう。
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