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女装男子とお見合い前のお嬢様とブラコンの妹。  作者: 岬ツカサ
一、女装男子と嘘と彼女
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ジェントルメンな竜宮寺さん

 ――昼休み。

 前の方の席から竜宮寺さんが歩いてくる。歩き姿さえもどこか凛としていて格好良い。

 つい目で追っていると、彼女は僕の前で立ち止まった。

「夕貴、昼食を一緒に食べないか?」

 ニッコリと笑顔を作った彼女はまるで女優が演技をするように大袈裟に手を差し出してきた。

 僕は僕で自分の名前が彼女に覚えられていた事といきなり下の名前で呼ばれた事に二重で驚いてしまう。彼女から見たら僕の反応も演技がかってしまっているのでは?

「う、うん。一緒に食べようか!」

 しかし良く考えてみたら普通の事を言われただけだった。特に断る理由も無く、むしろ入学初日に友達ができそうで嬉しい。それもこんな美人さんだ。

 立ち上がり彼女の横にいるとスルーツ系の良い匂いがした。さっぱりとしてて彼女のイメージに合っていると思う。

「こっちだ」

 腕を引っ張られる、少し痛いくらい力が強い。そのまま引っ張られて、着いた所は。

「裏庭?」

「うむ」

 連れてこられた場所は誰もいない学校の裏庭だった。これが西部劇だったら枯葉の一つでも飛んできそうなくらい寂しい雰囲気だ。

「……えーと、なんでここなのかな?」

「誰もいないからな」

 さっくりとそんなことを言う。

 これがもしも男女逆の立場だったら竜宮寺さんは変質者決定である。でも竜宮寺さんは女の子だしギリギリセーフ。いや、今は女の子同士だから何でもないのか。

「そ、そっか、じゃあここで食べようか」

「うむ」

 そうは言っても、どこで食べればいいんだろう。どこか座れる場所は……あった。一つだけベンチが無造作に放置されている。

 僕が座ろうとすると竜宮寺さんがハンカチをベンチの上に敷いてくれる。

「座ってくれ」

「ご、ごめんね? ありがとう。竜宮寺さんも座って」

 何気ない所作がとてもジェントルメンな竜宮寺さん。ここは僕もなけなしの紳士力を発揮しなくては。

 というわけで僕も自分のハンカチをベンチに敷いて彼女の座る場所を作った。

 二人並んで弁当を食べる。誰かが僕達をみたらどう思うのかな? 仲の良い友達とか?

 こんな時に仲の良い女の子同士はどんな会話をするのだろうか。



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