藍の勘違い
夕食後、僕の部屋。
目の前にはベッドの上でなぜか正座している藍。
「お、おにぃ、ついにこの日が来たんだね。私、嬉しい!」
なぜか藍は涙をいっぱいにして笑顔を浮かべていた。
この日ってなんのことかな?
あ、日曜の話かな? 今まで藍も竜宮寺さんのために色々知恵を振り絞ってくれたんだから、藍なりに思う所があるんだろう。優しい妹に目頭が熱くなる。
「うん、僕も嬉しいよ」
「えーとそれで、具体的にはなんの話をするの? 私はおにぃのためなら何でもするけど……」
そう、明日一緒に竜宮寺さんの家に泊りに行って欲しいってことだ。もしも竜宮寺さんに女装がバレそうになった時に、誰か頼れる人がいてくれたら心強い。
「僕と一緒に来て欲しいんだ!」
「――ッ!? (や、やっぱり駆け落ち!?)」
「藍が不安なのは分かってる。でも僕一人では無理だと思うんだ」
女装したままで他人の家に泊るなんて考えられない!
「お、おにぃそれはちょっと急すぎるんじゃないかな……」
「確かに急な頼みかも知れないけど、藍じゃないとだめなんだ!」
「で、でもでも。やっぱり準備だってあるし」
「そんなのは着替え一式、いや、下着一式あれば充分じゃないか!」
「し、下着だけで!? でも……お母さんに悪いし」
「母さんなら笑って許してくれると思うんだ」
基本放任主義だから、一泊友達の家に行くくらいなら許してくれるだろう。
「笑っては許してくれないと思うよ!? でも、おにぃがそこまで言ってくれるなら、私おにぃについて行くよ!」
「あ、ありがとう!」
僕はいい妹を持った。
「じゃあ早速準備をしておいて、出発は明日のお昼くらいだから」
「お昼に出るの!? いやでも移動のことを考えたらそっか、じゃあ私準備してくるね。……おにぃ、大好きだよ!」
藍は僕の知る限り人生最高の笑顔で僕の部屋を後にした。友達の家に行くのは普通昼間だろうに、変な奴だなぁ。
こうして藍の協力を得た僕はなんの心配も無く眠りにつくことができた。
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