お泊りのお誘い
――十日後。
「ふふふ、私ほどロリの素晴らしさを理解した女子高生がかつて存在しただろうか」
竜宮寺さんも今では立派なロリになった。
幼女の可愛さを完璧に把握した彼女は、人生でピークの可愛らしさを発揮できると思う。まぁお見合いの席なのでやたら露骨なしゃべり方とかは無理だろうけど、可愛いとは何かを理解しただけで大きな進歩と言えると思う。
「これで日曜のお見合いもバッチリだね」
今日は金曜日。僕が竜宮寺さんに指導できる最後の日だった。
「あぁ、これも君のおかげだ。ありがとう夕貴」
竜宮寺さんが僕の手を強く握る。藍がいるから女の子には慣れているけど、やっぱり触られると少し緊張してしまう。
「うん、じゃあがんばって」
これで僕の仕事はお終いだ。
思い返してみれば女装がバレないか不安だったりなかなかうまくいかなかったりで大変だったけど、うん、楽しかった。
これで後は竜宮寺さんのお見合いがうまくいけばいいな。
「いやそれがな、もう一つ頼みがあるんだ。身勝手だとは思っているのだが、しかしどうしても頼みたいんだ」
感慨にふける僕をよそに竜宮寺さんが話し始める。
「明日、私の家に来てくれないか?」
「え、えぇ? なんで?」
「ここまで世話になったからな。明日は泊ってもらって、特訓の成果を見て欲しいんだ。それと、君が近くにいてくれた方が安心できる」
竜宮寺さんは握った手にさらに力を込める。後近づきすぎてモチモチの唇が目の前だ。女装の役得というか、僕と竜宮寺さんの距離感は女友達のそれとまったく変わらないものになっている。
彼女は身勝手と言ったけど、そんな事は無い。僕は嬉しかった。
「わ、わかった! 是非泊らせてもらうよ!」
ふと不安になる。
僕はこの先、彼女ができるのだろうか。
だって彼女になるってことはもちろん女装のことを話さなきゃいけない。一番仲の良い竜宮寺さんにだって、まだまだ秘密は打ち明けられない。
というか。
仲良くなればなるほど言えなくなるんだ。友情が壊れるのが怖いから……。
「うむ! 良い返事が聞けて良かった! では明日の昼迎えに行くから家にいてくれ」
「う、うん」
でも、彼女の笑顔は僕の不安なんかちっぽけに見えるくらい輝いていた。だから今は考えるのをやめておこう。
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