お嬢様の義務
「夕貴、あの茜ちゃんには気を付けた方がいいかも知れないぞ」
竜宮寺さんと二人になるとすぐに彼女はそう言った。
「うん、僕もちょっと思ったけど、でもあれが女の子同士だと普通なんじゃ無いの?」
街で女の子同士で腕を組んでることとかあるし、もしかしたら普通なのかもと考え始めた僕には竜宮寺さんの言葉は思考を振り出しに戻すものだった。
「いや、あれは獲物を狙う物の目だった」
「え、えもの?」
「そう、あれは狩人の目だ。間違い無い!」
「根拠は?」
「無い!」
相変わらずの断言っぷりだった。
「まぁ、色んな子がいるってことでしょう」
「む、信じていないな? 食べられちゃっても知らんぞ! そして夕貴!」
「何? もう暗いから帰らないと危ないよ?」
「明日からの作戦を立てておいてくれ! 今日が不毛だったとは言わないが、私はもっと可愛くならなくていけないんだ!」
自分で頼んでおいて人任せなのはどうかと思うけど、彼女の必死な態度を見ると断れない。
「……明日の放課後、特訓しようか」
「特訓! 何て甘美な響きなんだ。ふふふ、血湧き肉躍るとはこのことか」
「言っておくけど、山籠りをするような特訓では無いからね? 女子力アップのための特訓だよ?」
「なんだ、熊は倒さないのか……」
「うん、残念そうな顔しないでくれるかな」
「アッハッハ、冗談だ! 分かった、女子力アップの特訓だな」
「うん、えーと……じゃあとりあえず竜宮寺さんが可愛いと思う服を持ってきてね」
「わかった! ではまた明日!」
竜宮寺さんは夜の街に消えて行った。
それにしても。
なんで竜宮寺さんはあそこまで頑張るのかな?
僕は彼女の余りにも義務感めいた発言が少し気になっていた。
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