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29/82

29・通報したのは


「ぴんぽーん」とチャイムが鳴った。

 テレビを付けたまま眠っていた彼女は、その音で目を覚ました。

 居留守を使おうかと思ったが、チャイムは、ぴんぽーん、ぴんぽーん、ぴんぽーん、と立て続けに鳴っている。

 うるさいなあと不機嫌になりながら、再放送のドラマを映していたテレビを消して、どっこいしょ、と声をだして起き上がり、インターホンの前にやってくる。

「はい?」

「警察の者です。ちょっといいですか?」

 その証拠であると、インターホンの画面は警察手帳を映していた。

 警察の人がなんで?と不思議に思いながら、彼女は自分の服の乱れを確かめてから、玄関のドアを開けた。

 ドアの前には、警官の制服を着た男が立っていた。顔は緊迫としていた。

「通報があったので駆けつけたのですが、奥さん大丈夫でしたか?」

 彼は警察手帳をしまって、家の中に入ってくる。

「通報って、なんの事でしょうか?」

「あなたの家に強盗が入り、部屋を荒らされたと110番通報があったんですよ。お金やら、宝石やら、大事なものを盗まれてしまったようですね」

「ええっ、そんなことありません」

 彼女はびっくりする。あまりの事に、眠気なんかふっとんでしまった。

「本当ですか?」

「はい。だって私、さっきまでテレビを見てましたし」

 不安そうに家の周りをきょろきょろする。眠っている間に泥棒が入ったのかと驚いたけど、家の中は、普段通りのままで、荒らされた様子はなかった。

「おかしいですね。電話ではたしかに強盗に入ったと、仰っていたんですよ」

「でも、何もなかったですよ」

「金目のある物は取られたし、あなたはロープで縛られて、抜け出すのが大変だったって、聞いたんですけどねぇ」

「ロープなんか縛られてないです。通報だってしてません」

「でも、確かに通報はありました」

「それって、イタズラではないですか?」

「いやいや、強盗が入ったのは本当のことです」

「家を間違えたんじゃないですか?」

「いえ、この家です。間違いありません」

「でも、家にいた私が何もなかったって言っているんですよ。嘘なんか付いていません。本当に強盗なんて入ってませんし、通報もしていません」

「それでも起きたんですよ。この家に強盗が入ったのです」

「そんなの、嘘です」

「事実ですよ。だって、たったいま強盗が入っているじゃないですか。尤も、通報するのはもう少し先ですけどね。さあ、お金を出しなさい」

 警察官になりすました男は、ナイフを突き出した。



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