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転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界を制覇する!  作者: なつのさんち
第八章:事業拡大

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増員と増資

「よくもまぁ全世界へ向けてあんな事を言えるねぇ、感心するよ全く」


 ハム子との対談において、万が一の事態になった際に宮坂家(みやさかけ)としてすぐに対処出来るようにと、福乃(ふくの)が配信部屋で待機していた。

 つまり、伊吹(いぶき)の「藍子(あいこ)は俺の女」宣言を間近で聞いていたのだ。


「あれ? 問題ありましたか?」


「いいや、ないよ」


 今回のハム子との共同生配信をする前に、マスコミ各社への対応も必要であった為、目に見えて伊吹と宮坂家が連携を取っているという形が必要であった。


 一つは資本提携。

 宮坂家がVividColorsヴィヴィッドカラーズの新規発行株式を六十万株三億円分取得。


 これだけでは宮坂家がVividColorsの筆頭株主になってしまうので、宮坂家から伊吹と藍子へそれぞれ一億円の融資が実行され、その資金を元に新規発行株式を取得。


 その結果が以下の通り。


 藍子の持ち株数が三億二千五百万円分で六十五万株。

 持ち株比率が32.5パーセント。

 肩書は代表取締役社長。


 伊吹の持ち株数が同じく三億二千五百万円分で六十五万株。

 持ち株比率が32.5パーセント。

 肩書は代表取締役副社長。


 燈子の持ち株数は変わらず五千万円分で十万株。

 持ち株比率が5パーセント。

 肩書は平の取締役。


 残りとして宮坂家の持ち株数が三億円分で六十万株。

 持ち株比率が30パーセント。


 VividColorsの資本金は十億円となった。

 宮坂家から伊吹と藍子へ融資された一億円については、YourTunes(ユアチューンズ)からの収益が入金されればすぐに返済可能な金額である。


 藍子も燈子も宮坂家の人間なので、大きな視点で見ると、宮坂家の持ち株比率は67.5パーセントであり、支配権を有していると言っても良い。

 が、仮に伊吹がVividColorsから排除されたとして、今後のVividColorsとしての活動が出来ないので、排除する事は不可能だ。

 合わせて、伊吹と藍子と燈子との婚約の話もある事から、三ノ宮家が支配権を有しているという見方も可能だ。

 しかしそれらは、伊吹と宮坂家の信頼関係が盤石である為、何の不安もない。


 その証拠として、VividColorsの監査役として福乃が就任した。

 宮坂家の家中において中心人物に極めて近い福乃が関わっている事が、とても重要な意味を持つ。


 さらに一つ。宮坂家から三人の秘書が派遣された。


 宮坂(みやさか)紫乃(しの)。福乃の娘、二十六歳。

 宮坂(みやさか)(みどり)。福乃の娘、二十四歳。

 宮坂(みやさか)琥珀(こはく)。二十五歳。藍子、燈子、紫乃、翠の腹違いの姉妹。


 三人とも宮坂家当主の実の娘であり、藍子と燈子の腹違いの姉達だ。

 この三人はVividColorsの事務所に常駐する秘書だが、その他に必要に応じて別の秘書が出入りする事になっている。


 そして最後の一つ。先に述べた通り、伊吹と藍子、燈子との婚約だ。

 この世界において、男性側が申し出ればほぼ婚約成立となる。親の意見は聞く必要がない。

 というより、ほとんどの親が泣いて喜ぶようなおめでたい出来事だ。


 神社で結婚式を挙げる、という儀式的な行事は残っているが、お祝いをする意味での披露宴は行われていない。

 男性を衆目に晒す事が好まれないからだ。


 三ノ宮家(さんのみやけ)と宮坂家の婚姻の許可が下りるまでは婚約に留め、その後神社にて神前式を挙げる段取りとなっている。

 この許可申請については形式的なもので、すぐに許可が下りるだろうと聞いているので、伊吹は深く追求しない事にした。


 伊吹としては、取り急ぎご両親にご挨拶せねばと思っていたのだが、神社での挙式の際に顔を合わすから、とやんわりと断られている。

 その際に婚前交渉は遠慮せずガンガンやっちゃって、と福乃からはっきりと言われており、その方が気になっている伊吹であった。



「お館様」

「旦那様」

「副社長」


「どれもしっくり来ない」


 ハム子との対談生配信を問題なく終えて、現在は事務所へと場所を移して反省会をしているところだ。


 宮坂家から新しく派遣されて来た秘書達が、伊吹をどのような敬称で呼ぶべきかという話し合いの最中で、紫乃(しの)がお館様、(みどり)が旦那様、琥珀が副社長呼びを推している。


 三人ともスーツ姿で、いかにも仕事が出来そうな立ち振る舞いを見せている。

 伊吹は誰にも言っていないが、スーツ姿の女性という見た目が好みどストライクで、そんな好みの女性達にお館様や旦那様と呼ばれる事に内心興奮している。


「やはりご主人様が一番良いかと」


 そんな伊吹は現在、ソファーに腰掛けた智枝(ともえ)の膝の上に座らされ、抱き着かれている。

 伊吹の方が背丈が大きいので、見た目があまりよろしくない。


 智枝曰く、美哉(みや)橘香(きっか)、そして藍子と燈子とのイチャイチャが解禁されたのなら、私も福利厚生の一環としてご主人様を可愛がらせてほしい、との事だった。


 休みもなく有給休暇もなく残業代も出ない職場である事がおかしいと言い出したのは自分なので、甘んじて智枝に抱き着かれているという経緯がある。


「一気に人口密度が上がったね」


「良いのか悪いのか……。

 お兄さんと結婚出来るのは良いけど、もれなくうるさい身内がおまけでついてくるなんてねぇ」


「「「奥様」」」


「止めてよその何かを訴え掛けてくるかのような目は」


 藍子と燈子、そして秘書の紫乃と翠と琥珀は姉妹というよりも、どちらかと言うと従姉妹といった関係であり、元から親戚付き合いを通して交流があった。

 年上の従姉妹に奥様として敬われる立場となる藍子と燈子は、その状況になれるまでもうしばらく時間が掛かりそうだ。


(何とか抜け出せないものか……)


 伊吹は早く美哉と橘香との初めてを行いたいとうずうずしている。

 そう、ハム子のせいでまだ致せていないのだ。


 福乃から、先に美哉と橘香との間に子供が出来ても宮坂家としては問題としないと聞いていたが、せめて婚約が成立するまでは、と当の二人に止められていた。


 昨日正式に婚約が成立したが、ハム子との生配信での対談前日という事で自粛した。

 昨日婚約が成立した相手二人と、新しく派遣されて来た婚約者の従姉妹にあたる三人。

 そんな女性達に対し、今からセックスしてくるからじゃあの、と事務所を出て行けるほどの勇気を伊吹は持っていなかった。


「ご主人様、お察し致します」


「……何が?」


 智枝にこの童貞の(はや)る気持ちが伝わってしまったか、と焦った伊吹だったが、単なる思い違いであった。


「人数に対してこの事務所も最早手狭になってしまいました。

 ビル内のもっと広いフロアへ事務所を移動させるか、そもそもビルを別で用意するか考えるべきかと思います」


「えー?

 せっかくあーちゃんが発注した改装工事終わったとこなのに?」


 金銭的な問題ではなく、こうしよう、ああしようとウキウキしながら改装計画を立て、ようやく形になったものをすぐに手放すというのは抵抗を感じるものだ。

 しかし、藍子はまた改装計画を立てられるのかと喜べる性格の持ち主だったようだ。


「もう一度、一から計画を練れるっていうのも楽しそうだよ?

 伊吹さんがどんなお部屋を必要とするか、試しに聞かせてもらえるかな?」

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