今後の予定
翌朝、伊吹は前日と同じように美哉と橘香の手と口、身体全体によって朝からたっぷりと搾り取られた。
採取された精液は、二人の母親の手によって保健所に届けられる事となる。
「何で挿れさせてくれないんだよ……」
「ダメ」
「まだ」
などという一幕があった後、三人は事務所へと向かった。
「おはようございます!」
「おはよう……」
すでに藍子と燈子がソファーに座って、伊吹を待っていた。
「おはようございます。お二人とも早いですね」
「はい! 今日は河本さん達が引っ越しされて来ますし、男性に聞く百の質問も決めてしまわないといけませんので!」
藍子はやる気満々のように見えるが、燈子は顔色が悪く、頭を押さえている。
「燈子さんはどうしたの?」
「帰ってからずっとイラスト描いてた。朝まで」
燈子はアバターの元となるイラストを徹夜で仕上げていたようだ。
3Dに起こす事を前提としているので、前から見た立ち絵だけでなく、後ろや左右の側面、場合によっては上から見た構図も必要となる。
伊吹は普段着として着物を着ているので、燈子はアバターも同じように着物姿にしようと思い、資料を漁りながら描いていた為、非常に時間が掛かってしまったと話す。
「うん、良いんじゃないかな。男の僕から見ても良いイラストだと思う」
燈子が差し出したイラストを見て、伊吹は美哉と橘香に顔を向けて感想を聞く。
「とても良いと思います」
「でも本物の方が良いと思います」
一見失礼に聞こえる橘香の言葉だが、その言葉に燈子が同意した。
「そこなのよ! どうしても格好良く描こうとするとお兄さんに近付いてしまうの。
だからなかなか納得の行くイラストに出来なくって。難しいのよ……」
はぁ、とため息を吐く燈子。そしてスケッチブックをめくり、他のイラストを出していく。
「十キャラ以上あるじゃないですか。これだけ描いてもらってるのに一キャラしか選べないなんて申し訳ないなぁ」
「いやいや、あたしが勝手にした事だから気にしないで。
どうせやるならとことんやる。
せっかく世界初の男性Vtunerがデビューするんだから、納得出来るものを作りたいもの」
そう言って、また燈子は伊吹を見ながらイラストを描き始める。
「無理しないで下さいね。
で、百の質問は出来上がったんですか?」
「はい、燈子がイラストを描いている横で私も質問を二百個考えました!」
藍子が自分も頑張った事を伊吹に報告し、メモ帳をテーブルの上に出した。
「見させてもらいますね」
伊吹がメモ帳を手に取ると、後ろから美哉と橘香が乗り出して来て一緒に内容を読み始める。
「これはダメです」
「これもダメです」
「こっちはもっとダメです」
「これは聞き方を変えるべきです」
「伊吹様はついつい答えてしまわれるので」
「世の女性を狂わせてしまう」
伊吹の侍女としての目線から、二人の監査が入った結果、二百あった質問は百近くまで減らされた。
「すみません、考えてもらった質問を……」
「いえいえいえ、お二人に質問の可否を判断してもらって助かりました。
私ではどこまで質問して良いのか分からなかったので、とりあえず思い付くままに書いただけなので、伊吹様に直接質問する前で良かったです」
伊吹と藍子がぺこぺこと頭を下げ合っているのを見て、燈子が口を開く。
「質問内容が出来たって事は、もう男性に聞く百の質問を撮影出来るって事で良い?」
撮影する場所とカメラなどの機材、そして伊吹さえいれば、動画として成り立つ。
「そうだね。僕はただ答えるだけだから、お二人の都合さえ良ければ今からでも大丈夫」
「えっと、河本さん達がこのビルに来られるのは午後の予定なので、私としても今からでも大丈夫です。
撮影機材は伊吹様がおられるのとは別の配信部屋に揃っていますし」
伊吹が藍子の返事を受けて、京香へと質問する。
「新しい執事さんが来られるのって、何時頃か聞いてます?」
「そちらも午後一にと伺っております」
伊吹は今から撮影を始めれば、どんなに時間が掛かったとしても午後を跨ぐ事はないだろうと判断した。
「じゃあ今から撮影してしまった方が良さそうですね。
うわ、自分で言っておいて緊張して来た……」
「またまたー」
今日、男性に聞く百の質問を撮影。
動画内で世界初の男性Vtunerとしてデビュー予定である事を宣言。
撮影終了後、必要に応じて編集した後、YourTunesにてチャンネルを作成、投稿する。
その後の一ヶ月の間に、燈子がイラストを完成させ、それを元に多恵子達が3Dのアバターを作成する。
そして全ての準備が整った後、伊吹のVtunerデビューとなる。




