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転生したら男性が希少な世界だった:オタク文化で並行世界を制覇する!  作者: なつのさんち
第九章:イチャイチャな日常

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乾橘香

 伊吹(いぶき)はボイストレーニングをする事を決めたので、屋敷にいた際の日課であった武術の稽古を再開する事にした。

 声を出すのも筋肉の作用だと聞いた事があるので、体幹を鍛えておくのに越した事はないだろうと考えたからだ。

 伊吹はこのビルに来てから、一度も運動らしい運動をしていない。

 ただし、夜の大運動会は除く。



 このビルの屋上はそれなりの広さがあり、エアコンの室外機やその他設備がゴチャゴチャしているので、周りから見えにくくなっている。

 屋上の端まで行くとさすがに誰かに見られる可能性があるので、中心部分だけを使って稽古をする事にした。

 屋敷から母親と祖母の遺影などと一緒に、普段使っていた胴着も届けられた。


橘香(きっか)と稽古するのは久し振りだね」


「私も稽古自体が久しぶり。

 学校の時は毎朝美哉(みや)と身体を動かしてたけど、男性保護省での研修に入ってからは出来てなかったから」


 用意してもらったござの上で丁寧に柔軟体操をする二人。

 美哉は体調の関係で、今日は参加していない。


「久し振りにこんなに広い空を見るなぁ」


「窮屈?」


「いや、好き放題させてもらってるし、橘香も美哉も一緒だし、仲良くさせてもらえる人も増えたし、滅茶苦茶充実してるよ」


 本当に満足そうな表情をしている伊吹を見て、橘香は愛おしそうに笑顔を浮かべる。

 橘香にとって、三ノ宮家(さんのみやけ)の繁栄よりも、伊吹個人の方が大切だ。


 いくら心乃春(このは)に三ノ宮家の事を教わっても、母親達がそれを如何に守るかを考えていても、橘香と美哉にとっては些細な事。

 伊吹がどうするかの方がよほど重要なのだ。



 柔軟を終えて、空手の型の稽古をする。

 下がコンクリートなので、軽く確認する程度でしか出来ないが、身体を動かす事を重視する。

 橘香と向かい合わせでいる事で、どうしても伊吹は胸に視線が行ってしまう。

 改めて日の光の下で見る橘香の姿は、とても美しく、より魅力的に見えた。


「集中して」


「おっと、ごめん」


 目の前に正拳を突き付けられた伊吹が謝る。

 稽古中は別の事に気を取られていると、怪我の元になる。

 集中しなければならない。


 そのまま三十分ほど続け、伊吹の息が上がってきたので休憩する事になった。

 伊吹は橘香に言われるがまま、橘香の膝を枕にして空を見上げている。


 秋になったがまだまだ気温が高い。

 汗が噴き出てくる伊吹の顔を、橘香がタオルで丁寧に拭き取ってやる。


「やわい」


 橘香の膝に頭を置いて見上げると、伊吹の頭に橘香の胸が乗っかる。

 伊吹は小さく頭を動かして、その柔らかさと絶妙に揺れる重みを堪能する。


 橘香は特別胸が大きいという訳ではなく、伊吹の顔の汗を拭く為に前傾姿勢にしている為に触れてしまうのである。

 あと伊吹へのサービスでもある。


 伊吹は橘香の帯をすすっと外し、胴着の胸元をはだけさせる。

 ブラジャーが直接顔に触れるようにして、また柔らかさと重みを堪能する。


「こんな事、学校で習ってないんだけど」


 橘香は学校で男性についての授業を受けるたび、伊吹には当てはまらないなぁと思う事が何度もあった。

 美哉も同じ事を思っていたのを確認している。


 基本的に男性は受け身であり、女性が性的に導かなければならないと教わった。

 しかし伊吹は一人で風呂に入りたがるし、着替えも自分でしようとする。

 靴下は母親か侍女が履かせてくれるものだとは思っていないように見える。


「学校で習ったような男でいてほしい?」


「ダメ、いっちゃんは今のままが良い」


「でしょう?」


 伊吹は笑いながら、ゆっくりと橘香を押し倒す。

 二人隣り合って寝転びながら、キスをする。


 ちゅっ、れろっ、はむっ、と貪るのではなく優しい愛撫のようなキス。

 お互いの気持ちを確かめ合うような触れ合いだ。


「橘香、好きだ。愛してる。ずっと一緒にいてほしい」


「私もいっちゃんが一番大事。愛してる。大好き。ずっとそばにいる」


「他に大切な人が出来て、もしかしたらこれからも増えるかも知れないけど、怒らないでね?」


「怒らない。いっちゃんにとって私と美哉が一番だって知ってる。

 それが変わらないように、いっちゃんにもっと好きになってもらえるように二人で頑張るから」


 愛おしくて、切なくて、伊吹はこのまま橘香を抱きたいと思ったが、ござを敷いているとはいえさすがにコンクリートの上ではお互いに辛いだろうと、我慢する事にした。

 朝に三回分の精液採取をされていなかったら、どうなっていたかは分からない。


 その後二人は、京香(きょうか)が心配して様子を見に来るまで口付けあっていた。

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