第五章 最後の試練 8
ルークス・グラディウスを光粒子銃代わりに連射し、発注管理ルームで特化型AIの作業を監督していた社員十二名をスタンモードで無力化したヴァレリーは、他のメンバーと共有する架空頭脳空間上のマップにクリアのチェックを入れ一息吐こうとしたのも束の間、突如背後に感じた気配に前へ跳躍し振り向いた。
視界に収めたその正体に、ヴァレリーはほっとすると同時に抗議の声を上げる。
「零! 驚かせないでよ」
「悪い。俺も上から制圧してきて、次は丁度この部屋だったんだ」
右手にルークス・グラディウスを左手に軍用ナイフを握る零は、別段悪びれるふうもなくヴァレリーに歩み寄り続ける。
「順調みたいだな」
「ま、それなりに広い施設とはいえ襲撃サイドのこちらは、第一、第二エクエスクラスを中核とした三十名のキャバリアーが居るんですもの。警備とさっき遣り合ったけど、障害になるような戦力ではなかったわ」
「なら、セカンドフェイズ――計画通り作戦の要に問題なく移れるな」
「寧ろ、そっちが問題ね。成功したら成功したでその後も問題だけど」
恐らく生きては帰れないだろう自分達の境遇に、ヴァレリーの胸がチクリと痛んだ。
ヴァレリーは零の表情を観察するがポーカーフェイスを決め込む中性的な麗貌からはどう思っているのか分からず、言葉を継ごうとした矢先情報感覚共有リンクシステムで連絡が入る。
【こちら、サブリナ。当該施設の制圧完了】




