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第3章 犠牲の軍隊後編 4

をフルオートに変更。照準補正は受け持つわ。わたしの誘導で、トリガ。一撃で仕留めて。狩猟者(ハンター)を呼んでしまうから】

【おお。任せとけ。って、五体を連射で一撃って、相変わらずスパルタだな 脳裏を強敵に》蹂躙された記憶が掠め、光学クスコープを覘くブレイズは苛立たしげな舌打ちと共に振り払った。切り替えなければ。この絶望的な状況下、生き残れない。


 騎士甲冑(ナイトアーマー)も構える電磁誘導(EI)ライフルのセンサも、全てパッシブ。アクティブにしては、敵に気づかれ先に発見した敵を密かに狙い撃てない。メッケンドルファー社製の四十センチ強のライフルは、狙撃ライフルとして定評がありブレイズが長年愛用する獲物だ。射出される実体弾の弾速そのものはビームの類いより遅いが、フィールドの干渉を受けづらく特にこのように一撃で敵を沈めたいときには有利だ。


 スコープに捉えた風景はリンクした汎用コミュニケーター・オルタナを通し騎士甲冑(ナイトアーマー)のモニタに映し出され、そこには横にずらりと並ぶハッチを開け即応体制を整えた五機のミラト王国輸送型機械兵(マキナミレス)ユニット群が、岩が転がる荒涼とした地表近くを突っ切る姿があった。開いたハッチから覘くのは、見慣れない外骨格(Eスケルトン)スーツを装着した戦闘人員。徒人では物の役に立たぬ戦場で、恐らくキャバリアーだろう。敵方――ミラトは、残敵を狩り出すつもりか

 無事であるらしい決死隊を探すブレイズは、キャバリアー以外の人員も抱える零の脅威となり得る存在を排除しようとしていた。


 情報感覚共有(iss)リンクシステムを介したマーキュリーのシャープな鈴のように涼やかな合成音声が、ブレイズの意識を醒まさせる。

【ブレイズの架空頭脳空間(オルタナ・スペース)と同調完了。射撃モードぁ。普段から、グラディアート戦の指示は鬼だし】


 マーキュリーの指示に従いブレイズは、僅かに銃身を動かし微調整した。スコープ越しのモニタに映し出された五機の輸送型機械兵(マキナミレス)ユニット群に、マーカーが出現し撃破順を示す。レティクルが狙うのは機械兵(マキナミレス)ユニットの頭脳――自律特化型AI(ANI)。ブレイズは、架空頭脳空間(オルタナ・スペース)のトリガへと意識を伸ばした。







琥珀色の騎士(アンバーナイト)か。難問だな。先ほどは、本格的な戦いになる前に退いたが」


 隣のエレノアが向けてきた艶美な美貌を見返しながら、零は追いついてしまった過去の亡霊への恐怖をこの窮地を脱するまではと押さえ込む。この戦場を生き延びるまでは、忘れることは許されない。

「ああ。あんなものじゃない。気が重いけど、奴を封じなければどうしようもない」

「やるしかないか。ん? あの光は?」


 深みのある赤い双眸が自分ではなく外の一点を見詰めているのを怪訝に思いつつ、零はユニット外へと麗貌を向ける。

「エレノア? あれは……あの大きな岩の切れ目に誰か居る。ちっ、狙ってる」

 言うや零はアームを外すのとバイザーをスライドさせるのとを同時に行い、鳥の翼のように上に開いたハッチから飛び出した。


 閃光が瞬く。

 ――間に合わせる――零の意識が灼熱した。


 既に手に握った玉鋼の太刀に秘超理力(スーパーフォース)を伝わせパワー・ブレードを発動。アジリティによって、スピードをグレードアップ。ムーブを併用し、神速へ加速。


 連射される一弾一弾の弾道が異なる五発の成形炸薬(HEAT)弾を、零は蜃気楼がその場に出現しかのような、先ほどマークが見せたが如き空中での機動を性能で劣る外骨格(Eスケルトン)スーツで行い、強い光を放つ太刀で一発でも輸送型機械兵(マキナミレス)ユニットが喰らえば致命傷となりかねないそれを切り裂いた。


 データリンクでエレノアの艶のあるメゾソプラノが、スピーカー越しに響く。

「よく防いだ、零。ミラトの虎を気取ったコヨーテ共に見付かったか?」


 同時、赤く優美に洗練された騎士甲冑(ナイトアーマー)が飛来し傍で滞空すると、零は顔を巨岩へと向けたまま応じる。

「いい腕だった。襲ってくる。警戒を」

「ああ。さっきの攻撃で仕留められれば良かったが、敵が可哀想だ」

 不敵なエレノアの応えに、零はバイザーに隠れた麗貌を笑ませた

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