第2章 犠牲の軍隊前編 13
段を重ねるほど小さくなる楕円形を上下に積み上げた形状をした飛行型機械兵ユニット群へ零は迫った。敵性個体接近に重イオン砲を連続して放つが、口径が小さく零は軌道を変えることなく硬化型ヒーターシールドのフィールドで拡散し長方形型の胴体にハッチがずらりと並ぶ輸送型機械兵ユニットに取り付いた。外骨格《Eスケルトン》スーツのマルチスペクトルセンサと基技空間把握でユニットを探り、外部接続モジュールを見付けた。敵機に密着したまま滑るように移動し、零はモジュールと外骨格《Eスケルトン》スーツの手の甲にある接続ポートをリンクさせる。
クリエイトルとして零が有する演算能力を用い、外骨格《Eスケルトン》スーツ搭載の人工知能《AI》のサポートも得て、ハッキングを開始しほどなく所属を書き換えた。
後方か実体弾射出機から高速の弾丸がヴァレリーの指示のようで健在な機械兵ユニット群へ撃ち出され、だが、高度な戦闘用自律特化型AI《ANI》の攻撃予測と演算速度は凄まじく、未来予知を有さない徒人の攻撃は殆どが回避された。けれど足止めには十分で、その間にキャバリアー達が光粒子エッジやプラズマ砲で人型機械兵ユニット群を屠っていった。
全ての輸送型機械兵ユニット群の所属を書き換えを終えると、残る人型機械兵ユニット群も幾十を数えるだけに減っていた。
その様子に、零は急がなければと呟きを落とす。
「もう一体。これで、決死隊を十分収容できる。元々敵の機体で電子的にもカモフラージュすれば移動に使用しても疑われることはない」
ヒーターシールドで重イオン砲を拡散させつつ、真っ直ぐ最後の獲物へと零は向かう。これまでの戦闘で零の行動を学習した輸送型機械兵ユニットは、取り付かれまいと機体を俊敏に揺り動かし上昇した。とはいえ、いかに鋭く動こうとも三十メートルの巨体でグラディアートのような推進力と強力な機動スタビライザー制御がない機体では、外骨格《Eスケルトン》スーツの機敏さに敵うわけもなかった。零は外骨格《Eスケルトン》スーツの手足の特殊素材の摩擦係数を変化させ粘着力を生み出すと、暴れ馬のような機械兵ユニットにピタリと張り付いた。直近の外部接続モジュールと接続ポートのリンクを確立。慣れも手伝って僅かな時間で、所属を書き換えた。
急に安定した飛行に移った輸送型機械兵ユニットの上で、零は味方に呼ばわる。
【敵機械兵ユニットの確保が完了した。敵識別の機体は、撃墜して構わない。こちらも攻撃に参加する】
暫くして、掃討戦が完了した。非キャバリアー部隊の被害は、皆無。が、キャバリアー側には、二名の死者を出した。とはいえ、被害は軽微だった。
架空頭脳空間で空間認識戦術マップにマーキングすると、零は疲れが見て取れる決死隊へ次なる行動を高速情報伝達で指示する。
【十分後、基地近傍へ向かう。マップにマーキングした崖が、ちょうど死角になる。囮の囮は十分に果たしただろう。そこで、体力の回復をはかりつつ状況を見極める】




